ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1007話 状況報告

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 昨日、今日も来てほしいと言われていたのでグリエルの執務室へ来ている。でも、時間は夕方に差し掛かる時間だ。これも、昨日帰る前にお願いされた事なので、その時間に合わせて来ている。

「今日の報告といきましょうか」

 そう言ってグリエルは、昨日の今日の報告を始めていく。

「トルメキアの冒険者ギルドは、移動を開始しました。ジェノサイドキャラバンのおかげで、荷物の制限がなくなったためか、職員と関係者がほぼ全員移動する事にしたそうです。

 残ったのは、状況判断のできなかったお金に目のくらんだ冒険者だけだそうです。もちろん、略奪に参加した冒険者は全員、聖国の街にまた行くそうです」

 そうだよな。あいつらは、聖国から神殿騎士団が来てる事も、捕らえていた兵士達が解放された事も、クダスンデス改で苦しんでいた兵士達が復活した事も何も知らないんだからな・・・

 Sランクの冒険者リリスたち、Aランクの冒険者全員、Bランクの冒険者の一部は、トルメキアから撤退する様だ。中にはトルメキア出身の冒険者もいたはずなのだが、冒険者ギルドからもたらされた情報を元に国から出る覚悟をして、家族と一緒に引っ越す者もいたとか。

 総勢で、2000人を超える大移動になるらしい。だが、全員分の馬車を近隣の国からも集めたようで、途中で合流するらしい。最終的には馬車200台程で移動するらしい。

 ジェノサイドキャラバンの馬車には、子供や老人を中心に乗せる事になったらしい。あれだけ揺れない馬車なら快適に移動できるだろう。

 あ、ジェノサイドキャラバンに関しては、軍の人間と商談をして、食料を多少とヴローツマインとディストピアの鍛冶見習い達の失敗作の粗悪品を売りつけてきたそうだ。武器防具は戦闘をするにあたって必要になり、戦時は消耗品となるので数を集めておきたかったトルメキアには渡り船だったらしい。

 それにしても、ジェノサイドキャラバンも粗悪品を良くもあんなに高値で処分したものだ。ディストピアであのレベルの武器を買おうとすれば、10本は買えるくらいの値段をとったらしい。

 始めは軍が徴発しようと、数の暴力で実力行使に出ようとした指揮官が、ものの数秒で身ぐるみを剥がされて剣を首筋に当てられて『死ぬのと金払うのとどっちがいいですか?』と笑顔で言ったらしい。そりゃ、金があれば払うよな……あれば。

 その後に、功績が欲しいためか先走って前線に来ていた貴族が、タダ同然のような値段で買い取ってやると、上から目線で言ってきたらしいが、全員鬼人に返り討ちに合っている。

 最後には、今は金がないから聖国から奪った物で支払うからと言われたらしいが、貴族たちはしっかりと金目の物を持ってきていたので、物々交換と言う形で交渉物理的解決を行ったようだ。貴族共は半泣きになっていたが、聖国の街から奪えばいいと開き直っていたとか。

 どうやら、俺たちのした事が大した事ないと判断されて、自分たちでも聖国をどうにかできると考えた上層部は、聖国に軍隊を派遣する事を視野に入れているらしい。頭がお花畑のような奴らだ。

 まぁ、冒険者ギルドも撤退して、残った冒険者は調子に乗ってるやつらばかり、戦力は人数だけで見ても2倍以上は確実にいる聖国からの侵略者に、どうやって勝つつもりなのだろうか? しかも、質まで向こうの方が高いとなれば、火を見るよりも明らかだ。

「報告はこんな感じですね。冒険者ギルド一行がトルメキアを脱出するのに、およそ1週間ですかね? 4日後に全馬車と合流できるようで、そこからスピードが上がるので、その位かと。

 冒険者ギルドの職員は王国に入ってから、目的地に向けて離れるそうですが、冒険者とその家族の大半は中立地域に来るそうです。冒険者の聖地と今は呼ばれているらしく、お金がかからないから行ってみようという事らしいです」

 自分の金じゃないから、どうせなら中立地域まで来るって事か。分からなくもないけど、そんな気持ちで大丈夫か?

「あれ? そういえば、聖国から連れてきた兵士と家族たちってどうなったの?」

「もう到着しています。フェピーさんにも手伝ってもらって、ジャルジャン、ゴーストタウン、グレッグ、ミューズ、ヴローツマインに分かれて住居も手配してあります。

 必要最低限の援助しかしてませんが戦闘能力は低くないので、冒険者として活動すれば問題ないと思います。家族の方にも、日雇いのような形にはなりますが仕事があるので問題ないでしょう。後は、あの人たち次第でしょう」

 そうだな。今の中立都市であれば、仕事を選ばなければ問題なく食べていけるだけの仕事はあるからな。むしろ、家族4人なら2人働けば貯えられるくらいは稼げるはずだ。そんな状況で落ちぶれるなら手を差し伸べる必要はないだろう。

「次は、3日後に来てもらっていいですかね? 今日と同じ時間で」

「オーケー、3日後ね。一応理由聞いていいか?」

「そうですね、早ければ3日後に冒険者……あれは冒険者と言っていいのですかね? 盗賊と変わらないですかね? そいつらが、解放した盗賊軍隊と遭遇すると思いますので、念のためにって事ですね。

 後は、トルメキア王都に潜入している鬼人からの報告もしっかりと聞いておかないと、ガッカリされちゃいますからね」

 なるほど。3日後に戦端がひらかれるかもしれないのか。武器を持っていないけど、10倍近い戦力差があるから、よくて逃走できる、悪くて捕まる、最悪奴隷って所か? どうなるんだろうな?

「グリエル、その戦闘が起きるなら気になるから、鬼人のチーム派遣できないかな?」

「それは問題ないです。ある程度把握するために開放した盗賊軍隊には、1チームを張り付けていますので、映像もとる事が出来ます」

 戦闘中の映像はともかく、どういった結果になったかマップ先生じゃなくて、実際に見た人からの報告が欲しかったところなので、ちょうどいい。さすがグリエル! 有能だな!

「助かるよ。じゃぁ次は3日後ね。まぁ何かあったら連絡くれ。ちょっと街を散歩してから家に帰るわ」

 そう言って執務室を後にした。

 何故散歩をするかと言えば、久々のスライム行進を見てあれだけの騒ぎになったのだ、見れなかった人達もいるだろうから、見せてあげようという魂胆だ。

 こいつらが列になってウニョウニョ付いてくるのは、見慣れると可愛いからな。ディストピアでは人気のイベントみたいなものなのだ。

 みんなもスライムたちを見て楽しんでくれ!

 あっ! おばちゃん、その串焼き3つくれ!

 美味しそうな串焼きがあったので、ダマとグレンの分も購入して食べさせてやる。ちなみに、スライムたちは、住人から色々もらっているので買っていない。
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