ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
992 / 2,518

第992話 野営地にて

しおりを挟む
 義勇軍の冒険者達と一緒に出発した。分かっていたが、歩いての移動なので移動速度が遅かった。

 ただ、軍だけの行軍よりずっと早いようだけどね。

 出発した時は、先頭を移動しているリリスたちの馬車の近くにいたが、今は隊列の中間あたりにいるジェノサイドキャラバンの近くにいる。

 リリスたちの近くだと色々面倒が多かったので、身内のジェノサイドキャラバンの近くにいる方が気が楽だった。

 その道中に話を聞くと、義勇軍の食糧も運んでいるらしい。リリスに収納の箱についても教えたので、強く参加してもらいたいとお願いされたらしい。

 確かに収納の箱は便利だからな、でもそのせいでトラブルにも巻き込まれたようだった。

 リリスから持ち掛けられた内緒話を誰かが聞いていて、収納の箱を奪おうとして襲ってきた冒険者がいたらしい。

 ジェノサイドキャラバンのメンバーに勝てるのは、Sランク冒険者か物量の差で何とかするしかなかったが、アホな事を考えるマナーの悪い冒険者はそう多くなかった。

 数は、37人だったらしい。勿論この犯罪者は奴隷落ちになっていた。

 事情聴取の際に、ジェノサイドキャラバンなんて物騒な名前は、どうせハッタリだろうと高をくくって襲ってきたみたいだ。

 盗んだ後どうする予定だったのか謎だけどな。盗んだって分かれば、どのみち捕まるのにな。

 こういった行為を行うような輩は、街に連れて行けば認められていない行為まで行うだろうから、早めに排除できて良かったとリリスが言っていた。

 それに、これを教訓として、犯罪行為をすれば厳罰があると通達したらしい。とばっちりを受けた形になったジェノサイドキャラバンの皆には、シルキーの料理を差し入れをしている。

 順調に行程をこなし、目標にしていた場所に到着できた。

 野営地の設営に関しては、慣れている冒険者ということもあり、すぐに設営が終わった。

「さすが冒険者、どこにあんな荷物を持ってたんだ?」

 冒険者たちは、大きめのバックパックを背負ってるだけだったのに、4・5人が寝れるテントが普通に建っていたのだ。

 俺たちとリリスたち、後はAランク冒険者でも稼ぎの良いパーティーは、収納系のアイテムを持っているのと馬車を持っているパーティーは別だが、普通の冒険者はテント用の装備以外にも、野営の道具だったり食糧だったり、色々をバックパックに入れているのは凄いな。

 ちなみに野営地の位置は、少し進路からずれている。理由は簡単、少しずれれば川があるので水がたくさん使えるからだ。

 冒険者は、数日水浴びしないのも普通にあったりするのだが、水浴びを出来るならやはりしたいようだ。

 洗濯だったり、装備の手入れにも水を使うので、いくらあっても困らないのだ。

 そんな中、ちょっとしたトラブルが発生する。

 ジェノサイドキャラバンを襲った奴らに比べれば、まだマシというレベルだが、傲慢な態度をとる冒険者パーティーが複数いたのだ。

 今回この作戦に参加している冒険者は、約4000人。中には国のために、ランクが低くても危険を承知で参加している冒険者もいるのだ。

 傲慢なパーティーが、そんな新人パーティーに装備の手入れや飯の準備等をさせており、それに俺の妻たちも巻き込まれたのだ。

 女だから飯の準備は得意だろ? じゃあ、俺たちの分もよろしくな! と言って、食材すら渡さずに飯を作れとか言い出したやつがいたのだ。

 妻たちは、そんなマナー知らずな奴等に食事を作る程お人好しでは無いので、放置していたら、俺たちの野営地に乗り込んできて、

「おぉ、これが俺たちの飯か? 野営でこんな飯が食えるなんてラッキーだな! ん、ここは女しかいねえのか? よく見りゃ別嬪ばかりじゃねえか、夜も楽しませてくれそうだ」

 等と言い出したので、食わせる飯も相手をする人間もいないと言い、人様の野営地に無断で入ってきたことを非難した。

 俺らに逆らうとどうなるか分かってるのか? と、古臭い脅し文句を言って、近くを歩いていたダマを蹴飛ばそうとして、反対に体当たりで吹っ飛ばされていた。

 ダマも虫の居所が悪かったのか、8人組の傲慢なパーティーは、ダマの追撃を受け瀕死の重体になっていた。

 騒ぎを聞きつけたリリスに説明すると、瀕死の冒険者にトドメをさした。

 その様子に俺は開いた口が塞がらなかった。

 作戦行動中にこういった行動は、看過できない! と言い、初心者パーティーに装備の手入れや食事の準備等をさせていた奴等は、罰金を払わされていた。

 フェンリルの時と状況が似ている気がするな。実際にこういった国からの依頼で軍事行動をすると、規律を乱す奴等を処刑する権限が与えられるらしい。依頼の内容がそもそも違うとリリスが教えてくれた。

 リリスたちSランク冒険者以外は、冒険者ギルドの依頼票で依頼を受けているが、リリスたちは国からの指名依頼によって今回参加しているので、付与されている権限があるのだとか。

 色々考えると怖いな。なんて考えていたら、

「シュウは理解していないようだけど、権限の強さで言えば、私たちより上位の権限を持っているはずよ?」

 何その話……とか思っていたら、

「そういえば、シュウ様がリリスさんと話をしているときに、軍の偉い人が『今回の作戦で問題になる者がいれば殺しても構わない』と言っていましたが、それは敵味方問わずと言うことだったのでしょうか?」

 ピーチが軍のお偉方に聞いた、物騒な話を思いだしたように話してくれた……俺、その話聞いてないよ?

 ピーチはどうやら、盗賊を殺しても問題ないというお墨付きと勘違いして、俺も知っていることだからあえて言う必要はないかな? と思っていたらしい。

 確かにその内容なら、わざわざ説明必要は感じないよな。勘違いがない限りは。

 俺の妻たちにバカを言ってきた連中ほどのバカは他にいなかったが、新人パーティーや女性パーティーに理不尽に作業させている奴等は他にもいたので、新人や女性パーティーとそれ以外の野営地を別にした。

 俺とリリスたちを中心に、新人エリア・女性エリア・それ以外のエリアに分けるように土壁を作って侵入禁止にした。

 理不尽な指示をしない事、されたら報告する事を全体に伝え、命令違反があった際には厳罰に処すと周知させた。実際に8人が処刑されているので、誰も脅しだと勘違いする者はいなかった。

 冒険者の割合だが、新人が約500人、女性が約300人、それ以外が3200人といった感じだ。

 戦争にしては新人が多い気がするが、愛国心がそうさせるのだろうか?

 女に飢えてる男が多いと、女性も水浴びをしにくいだろうと妻たちが言い出したので、近くにある川から水をひいてきて、土を硬め簡易的な浴槽を作っていた。

 勿論、土壁で囲み、大量の水を魔法で温め温度調節出来るように、熱いお湯と湯船を分けていた。

 土魔法で湯船を作れれば、風呂に入れると知った女性パーティーの土魔法習得がブームになっていた。

 商会で水を温める魔導具なんか売り出したら儲けそうだな。小さくて多少燃費が悪くても、前衛とか魔力をほとんど使わないメンバーで動かせば良いだけだしな。そう考えると魔導コンロも便利か?

 等と、どうでもいい事を考えながら、俺は従魔たちと馬車風呂に入っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...