ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第986話 2つ目の襲撃

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 2つ目の野営地に到着。

 1つ目の野営地の事など伝わっている訳もなく、兵士たちは暇そうな様子だ。

 既に日をまたいているので、前の野営地に比べれば警戒が拙い。

「今回は、斥候組以外も荷物の奪取に動くって言ってたけど、実際にはどうするんだ?」

「今回は、こっそり忍び込んで、盗賊軍隊の荷馬車を使って強行突破で物資をいただこうと思います。そうすれば、食べる物もなくなるので、最低限の人員だけを残して追ってくるはずです。そこを狙って落とし穴に落とそうと思います」

 なる程、俺たちの目的が連れ去った人間ではないと思わせるのと、追ってこざるを得ない状況を作り出すという事か。

「逃げるコースは、こんな感じを予定しています」

 出された地図を見ると、なる程! と思うような逃走ルートだった。そして、どこに落とし穴を作るかも記入されており納得した。

 落とし穴の準備も出来たようなので、ピーチから作戦行動開始の合図がでた。

 1日限りの野営地に柵などあるわけもないので、手薄な所から侵入していく。

 皆もマップ先生を見ているので、敵の位置は光点で分かる。どっちを向いているかわからないのが困る所だが、どこにいるか分かるだけでも侵入のしやすさはかなり楽になる。

 まるで、潜入ミッションをしているダンボールマニアのような気分だ。

 今回の野営地の食糧保管場所は、4ヶ所。俺たちも4組に別れて行動している。

 俺が担当する場所は、逃げる方向の食糧保管場所だ。

 逃げるのは簡単な位置だが、逃げるのは俺だけではない。他のチームも逃げるので、一番早く逃げられる俺たちがサポートをしなければならないのだ。

「やっぱり、食糧保管場所というだけあって、監視してる人員が多いな。でも、サポートをしなければならない俺たちが、時間をかける事はできない。外れにいる2人から捕らえる!」

 魔導無線で総指揮官のピーチと連絡をとっているが、この分隊は俺の指揮で動くことになっている。

 他のチームも俺たちと同様に食糧保管場所の襲撃を始めている。襲撃とは言っても、音のない静かな襲撃だ。

 行動を開始する。

 さすがに2人を同時に音もなく無効化できないので、一緒のチームのマリアをバディとして襲撃する。

 ハンドサインを使って

『3・2・1・GO!』

 近くのテントの上から見張りをしている盗賊軍隊の兵士の背後をとり、口を押さえ胸に軽い浸透経を叩き込む。

 それで俺の方の盗賊は、昏倒した。マリアの方を向くと……それ、大丈夫なのか?

 マリアは俺みたいにこいつに触れるのがいやだったのか、手袋をしている手で口を押さえて首をねじっていた。

 呼吸しているのは分かるから、死んではいないだろうけど見るからにぐったりしている。

 とりあえず見つからないように、テントの余っている布の部分に隠しておく。

 残り8人。

 端から音もなく……

「あ~あ、あいつ等って邪教何だろ?なら、何人か犯しても殺しても問題ないだろ? なのに何で手を出しちゃいけないんだよ!」

「おい! 落ち着け! お前が、信者以外を毛嫌いしているのは知っているけど、その発言は拙いぞ。上に知られたら小言じゃ済まされないぞ」

 周りに誰かいないか確認するように辺りを見回している。いないことに安堵したのかこっちを振り返る。

 そして、目があった。盗賊は叫ぼうとしたが、頭を強打されて気絶した。

 死んでもかまわないんだけど、さすがにその倒し方はどうなのだろうか? それなら、ひと思いに殺してやった方がそいつの為だと思うけどな。

 前に同じ様に倒された人を見たことあるけど、10人中6人は体の一部もしくは全体がまひしていたのだ。

 確率を考えれば60%だからな。

 まぁいい、つかえなければ処分されるだけだか。

 残り6人? 既に2人になっていた。

 普通に歩いて残りの2人に近付くと、気付いたと同時に上から降りてきたマリアとサーシャが殴りつけて気絶した。

 何年も苦しい修行をした人みたいに見事だな。改めて思うが、スキルって本当に意味が分からん。

「皆、隣の馬車の方には誰もいないから、収納の腕輪で持ってきてくれ。ん? 他のチームも、今襲撃が終わったみたいだ。急ぐよ」

 ピーチからの連絡を聞きながら、他のチームの動きを頭で思い描きながら行動する。

 馬車を運んできてもらう前に、俺たちは一仕事する。

 箱に詰められた食糧や物資を収納の鞄に納めていく。


 馬車を持ってきてもらったが、馬がいなかった。それは問題ないから、空になった箱を馬車に詰め込んでいく。

 途中で俺は、馬の準備をすることにした。

 今までは、クリエイトゴーレムが優秀すぎて使うことの無かった、各属性魔法に存在している、属性ゴーレムの魔法を使用する。

 イメージして魔力を込めた分だけ性能がよくなるゴーレムだが、外から魔力補給は始め一回だけしかできないので、それなりに丁寧に作らないといけない。

 イメージするのは、ウォーホース。それを馬車の数だけ……7匹生み出す。

 馬車に繋げて、タイミングを計る。

「みんな、ピーチから合図が来たよ。俺は逃走ルートに向かって道を作る。こっちに向かって魔法が飛んでくるから、キリエは結界を張って目印に!」

 俺は逃走ルートを向き土魔法を使う。

 魔法名は無いけど、イメージは地面の扉を開くように道と壁を同時に作る。馬車一台分が通れる道が完成した。

 進路上のテントを押しどかすように作られた道を、土魔法で作られたゴーレムが馬車を引いて走っていく。

 それを簡易的な矢倉の上から発見した弓兵が、止めようと弓を放つが、石の体で作られたゴーレムに弓は意味をなさなかった。

 出来たことと言えば、体の表面に傷を付けただけだった。

 そんな様子を見ていると、後ろから魔法の発動兆候を感知した。振り返ると、キリエの張った結界に向かって目に見えない固まりが飛んできた。

 結界に着弾すると周りの物を押し退けるように、暴風が吹き荒れた。

 圧縮された空気の球を打ち出して、なぎ払って馬車の通れる道を確保したようだ。

「さぁみんな、他のチームもくるから、ここを守るよ」

 壁と道をセットで作ったので、ここからの離脱ルートは確保しているので、援軍に来れないように空気の球で作られた道に外側にだけ壁を作る。

 俺らが襲った食糧保管場所を頂点に三角形の底辺が無い形で壁が完成する。

 どうやら、馬車がこちらに走ってきたようだ。

 壁の向こうからは、壁を壊せ! 追跡部隊を出せ! 馬の準備だ! 等々かなり騒いでいるのが分かる。

 厚さ1メートル程で作った石壁だから、攻城兵器を使ってもなかなか壊せる物じゃないからな。

 よし、他の所に荷物を取りに行っていたチームも戻ってきたな。

 俺以外のメンバーは、馬車に乗り込んで、既にここから避難している。

 俺の体はドッペルだから、殿担当だ! ダマは俺の近くにいるけどな。

「ダマ、通路に入れ」

 そう指示をして俺も中に入る。視界には、武器を持ってこっちに襲いかかろうとしているのが見えたが、

【アースウォール】

 入り口に蓋をして、ダマに乗りみんなを追いかける。
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