ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
959 / 2,518

第959話 41階は……

しおりを挟む
 順調に進み次の1日で41階まで到達する事が出来た。39階まではあまり時間がかからなかったのだが、40階にいた魔物、溶岩ナマズとタコ、そして新種の魔物、巨大なザリガニが出てきた。

 39階より上では襲ってこなかった溶岩ナマズが、この階では積極的に襲ってきたのでかなり面倒だったのだ。グレンの話では飛んで移動ができるから、いつも無視していたとの事だ。

 何か特殊な理由でもあるのだろう。襲ってくるからには撃退しないわけにはいかなかったので、手加減無しで攻撃したのだが、溶岩ナマズとタコのコンビは厄介だった。だけど、それ以上にザリガニは厄介だった。

 このザリガニ、どういう訳か自分の殻の上に溶岩の膜を、何層も作っていたのだ。そのせいで氷魔法を叩き込んでも、溶岩の膜を剥がす事でダメージを軽減してきた。その膜も溶岩に潜るとまた復活して、初めから削りなおし。

 時は少しさかのぼり40階。

 これだけレベル差があるのに、決定打を与えられないのだから、このダンジョンの魔物は厄介この上ないな。弱点があるのに有利に戦えないのは腹立たしい。このザリガニにも弱点がないかな?

 1匹のザリガニを倒すのに10分程かかっており、ダメージを与えても膜を崩して軽減してしまうためイライラしている。

 マグマに逃げられる前に波状攻撃で何とか倒している感じだ。ザリガニは溶岩ナマズみたいに釣り上げようにも、針が刺さると膜を崩してするりと逃げてしまうのだ。

「あ~イライラする奴だな。対等にやりあえて時間がかかるならわかるけど、足止めに近い方法で時間がかかるとこうもイライラするんだろうな」

 ザリガニが余りにも面倒なので、俺がついそんな事を口に出してしまう。

「ご主人様、対等にやりあえる魔物は、それはそれで危険な相手ですから、こちらも相応のリスクがありますよ」

 ピーチにそう言われる。確かに対等な相手だったらこっちがケガする。いや、下手したら死んでしまうかもしれないわけで、そう考えたらただの時間稼ぎをする相手はまだましか?

 意識を切り替えて俺は、どうやって倒すかを模索する。

 マグマごと冷やした所で、まとっている固まった溶岩を器用に使ってマグマの中に潜っちまうからな。出来れば溶岩ナマズみたいに釣り上げられれば完璧だったんだけど、固まったマグマの所為で釣り上げられないし……

 色々試しながら戦闘はしているが、今の所……飽和攻撃以外に有効な手段が見つかっていない。向こうはマグマを上手く利用して攻撃までしてくるし、溶岩ナマズみたいにヒレを打ち付けて起こすマグマの津波とは違い、魔法のように正確に誘導されたマグマの塊を飛ばしてくるのだ。

 魔法のように? 魔法でマグマをどうにかしてるのか? 魔法はイメージ、マグマの成分は……そんな細かい事覚えてねえよ! 鉱石やらその他もろもろが溶けてるんじゃなかったか?

 水魔法は液体に作用するんだったよな。あれ? 氷は同じ属性だけど氷魔法で、だー!! こんがらかってきた!

 もう何でもいいじゃねえか! 魔法で何とかなるならイメージで補完すれば問題ないだろ!

【エラプション】

 本来は噴火という意味だが、俺がイメージしたのはザリガニの下からマグマの流れを作り、噴火とは似ても似つかない様な、透明なチューブの中をマグマが流れるイメージをして地面の上に引きずり上げた感じだ。

 その状況に皆は目を丸くしていたが、ライムはチャンスを見逃さず、打ち上げられたザリガニに向かって冷却魔法を使って、体の周りの溶岩と一緒に固めてしまった。

 上半身というかマグマから出ていた部分はザリガニみたいだったのだが、全身を打ち上げて確認できたのはザリガニの胸から上、その下にエビのような下半身? とでも呼べばいいのだろうか? ザリガニとエビの合いの子と言ってもいいような見た目の魔物だった。

 ザリガニだったら地上でも動けたのだろうが、エビの体ではうまく動けまい。体に対して小さすぎる脚。その上、マグマの固まった装甲までつけているのだ。足もうまく動かせずに、打ち上げられた魚より弱弱しく抵抗していた。

 そこに、今まで攻撃に参加できていなくてイラついていたエレノアが、自分の身の丈の倍以上ある斧槍を取り出して、ザリガニの魔物に打ち付けていた。

 斧槍とはそもそも、斧と槍の両方を1つの武器に収めた物だ。その斧槍の斧の部分を使って叩きつけたはずのエレノアの攻撃は本来、切り裂くではなく押し切る形になる。

 なので普通なら攻撃を受けた部分は、押しつぶされて切られた感じになるはずなのだが、あまりにも勢いがよかったのか斧槍ではありえない、そのほかにダメージを与えずに切り裂いていたのだ。

 まぁドロップ品になるので、どんな倒し方をしても本来関係ないのだが、この倒し方は少し異常だった。

 倒すための方法は確立できた。弱点では無いが、溶岩ナマズみたいに陸地へ撃ちあげてしまえば、どうという事はない。そして俺の魔法を見て、ライムはすぐに応用を利かせた。

 俺はチューブを流れるイメージで打ち上げたが、ライムはマグマの球を作りその中にザリガニを閉じ込めて地面に運んだのだ。こっちの方が動かす質量が圧倒的に少ないので、魔力の消費が少なくて済んだ。

 ライムは持ち上げて移動させている間に、他の魔法組のメンバーに指示してマグマの球を冷やして固めさせていた。その後は貫通力の高い槍、斧槍使いのクシュリナに止めを刺すように指示していた。

 う~ん。これって普通の冒険者じゃ倒せないけど、どうするんだろうな? おそらく、溶岩ナマズとタコのコンビまでなら倒せるだろうけど、ザリガニに関しては無理じゃないか? まぁ、倒し方は教える必要はないわけで、模索してもらおう。死なないように注意はしてもらわないとな。

 っと、まぁこんな感じで40階を通り過ぎてきた。

 そして今は41階、チビ神が火山ダンジョンとか言ってたから、50階まで続くのかと思ってたら今度は、雪山……氷山のような場所に変わっていた。

 おかしいな、グレンからはそんな情報を聞いていなかったのだが、ダマに話を聞いてみると「こいつは、水の中以外の場所では、暑くても寒くても全く関係ないので、そういった情報が欠けていると思う」と言われた。

 炎に包まれた体を持ってたら、火山も氷山も一緒になるのか? 視覚情報で分かる気がするんだけど、体感が伴わなければ、興味を持たなくなるもんかな?

 41階は魔物が出てこなかったので、この環境自体が試練とでもいうのかな? ここまで来てまさか氷山とはな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...