ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
927 / 2,518

第927話 襲撃

しおりを挟む
 島を探し始めて3時間。直線で南に向かって進むと視界の外には気付けないので、今日は漏れがないように、九十九折のように船の進路を変えながら進んでいるのだ。

「ん~本当に何もないね。俺のイメージ……日本だと、大陸というか、本島の近くにいっぱい島があるイメージがあるから、ここまで島が無いと不思議な感じがするかな?」

 そもそも妻たちは大陸の外を知らないので、理解が追いついていない様子だ。アニメとかマンガ、小説で得た知識はあっても、実感が無いため正確には理解できていなかったようだ。

「2~3週間で見つかればいい方だろう。時々ハクやバッハに飛んでもらってるから、そんなにかからないと思うよ。だからのんびりと楽しみながら探そう……という事で、海鮮も使ったバーベキューをするぞー!」

 船の上だとバーベキューをしている事が多いけど、いいよね? 今日は、召喚リストを見てて、サバが美味しそうだったので食べたくなったため、一夜干しの魚をいくつか召喚しているのと、湖でとれた魚介類も使ってのバーベキューだ。

 途中で、シエルから念話が入った。

『気を付けてください! 何やら大きな魔物が接近してきています! 亀たちで対応は可能だと思われますが、相手が大きいので、余波がどの位あるか分からりません。なので、気を付けてください!』

 亀たちって……シエルも亀だけどな! ってそんな事思っている場合じゃないな!

「みんな、バーベキューはいったん中止だ。できるならいったん仕舞ってくれ。無理ならセットから離れてくれ。海から大きな魔物が迫っているらしい。亀たちで問題ないと思うけど、相手が大きいから余波に気を付けてほしいって」

 俺の指示に従って妻たちが片付けを始める。魔法組とヒーラー組は、シエルと連絡を取って魔物がくる方向を聞いていた。

 少し落ち着いて海を見ていると、距離はどれくらい離れているかいまいち分からないが、水の小山が動いているような感じに見える。

「おぉ~アニメとかゲームで見るあれか! 本当にこんな風になるものなのか?」

 そんな風に疑問に思っていたら、小山から魔物が顔を出した。うぇ……似たような魔物を知っているが、海の魔物ってこんなにグロテスクになるものなのか?

 そこに現れたのは、シーワーム、口の場所は分かるのだが、そこに顔があるのか分からないようなフォルムなのだ。バイオ〇ザード2の最後の方に出てくる、電車を食いながら主人公たちに迫ってくる、気持ち悪いあいつみたいだ。

 畑で活動しているワームたちと同じような見た目なはずなのに、ここまで気持ち悪く感じるのは、なんでだろう? 愛着の問題かな?

 口のサイズからすると、アーマータートルでも一口で食べてしまえる程大きい。あいつら大丈夫か?

 そんな事を思っていると、アーマータートルが果敢にシーワームの前に出て行った!

 食べられる前に、アーマータートルの前に光の壁が現れた。それは俺も良く使っているスキル【フォートレス】の光の壁だ。シーワームはこの光の壁にぶつかって受け止められた。

「おぉ~あのサイズを踏ん張りのきかない海の中でよく受け止めたな~お? 他の4匹も行くのか?」

 正面で受け止めていたアーマータートル以外の4匹が頭の周囲を囲むようにフォートレスを展開していた。唯一の出口にある体には、ニンジャタートルとデッドリータートルが全員集まっていた。

 斥候キャラ、斥候亀のはずだったニンジャタートルが、存在感をむき出しにして高速で動きながら攻撃を仕掛けていた。

 体の3分の1程しかフォートレスで囲めていないので、そこに体当たりをしているニンジャタートルたちは、手足の部分の甲羅が尖っているのだ。その部分で突き刺したり切り裂いたりしているのだ。

 5分過ぎた頃には、海は血の色に染まっていた。

 デッドリータートルたちの毒をくらっているのに、なかなか死なないのだ。海の魔物って毒に弱かったんじゃないのか? 体がデカすぎて毒の効き目が悪いとか?

 アーマータートルたちが上手くシーワームの攻撃を防ぎ、その隙をついてニンジャタートルとデッドリータートルたちの攻撃が撃ち込まれている。他にもシーワームの攻撃を防ぎ切れなそうな時には、ジェットタートルが横から水魔法を使って、機動力をあげて攻撃をかわさせていた。

「陸上ではできない援護の仕方だな。水魔法で水流を作って速度を上げるのか、何かに応用できれば面白い事が出来そうだけど、今すぐには思いつかないな」

 戦闘開始から7分。シーワームの姿が突然消えた。どうやらやっとシーワームは死んだようだ。Lv的には亀たちと同じ、150ちょっとと大して変わらなかったのにな。ドラゴンみたいに同じLvでも他とは隔絶した強さがあるのかな?

『シュウ様、どうやら亀たちがドロップ品を拾ってきたようです』

 5匹の亀たちが各自何やら咥えていた。アーマータートル2匹が自分の体より大きい肉塊を1個ずつ咥えており、ニンジャタートルが魔石のような物を咥えていた。他にヒールタートルがよくわからない、ブヨブヨした袋のような物を咥えている……なんだそれ?

 どうだ! と言わんばかりの顔をして俺の前に置いていくので、頭を撫でてやることにした。っと思ったら、スッとかわされてしまいシルキーの元にすぐに言ってしまった。

「あなたたち! ご主人様に失礼でしょ! マナーの悪い子に出す食事はありませんよ?」

 スカーレットに怒られると、仕方が無いと言わんばかりに俺に撫でられていた。そんなに嫌々撫でられなくても、俺のガラスの心が砕けるじゃないか!

 撫でた後に亀達の態度に俺は打ちのめされ、膝をついて両手をついた。そうしていると、ダマと近くにいた三幼女に励まされた。ダマを抱っこして腹に顔をうずめ癒される。その間も三幼女は俺の近くで寄り添っていてくれた。

 でもさ、他のメンバー、特に年長組の皆は「何でそんな事でいちいちへこむのかね?」みたいな事を言ってきたため更に傷付いてしまった。

 しばらく立ち直れないと思った俺はすぐさま、ダマを連れて自分の部屋に戻った。今まで使っていなかった幻の部屋だ。4畳半しかないが、俺の心を癒してくれる素敵空間だ。ゲームやアニメを1人で見れるようにした空間なのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...