ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第898話 魔導具完成!

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「水上の動力は完成したけど、水中の動力はどうしようか?」

 想定した出力は出せたのだが、それはあくまで水上の出力の予定値であって、水中の出力はまだできてなかったのだ。

「そうでござった。水中の出力はまだ通常動力のスクリューだけでござったな。スクリューを複数に増やすではだめでござるな?」

 スクリューを複数に増やす事もできるが、今回のコンセプトとして微妙だったので、却下していた内容だ。

「そうは言うけど、水中の動力は目途も立っていないよね。面倒だからその魔導具水に沈めちゃう? 水も送り出してくれるかもよ?」

「まさかな……」

「まさかでござる……」

「自分で言ってみたけど……そんな事ないわよね?」

 3人は、綾乃の言った事を考えて、もしかしたらと考えていたのだ。魔導具の解析は終わっていたが、模様の解析はまだ終わっていなかったため、まさか! と考えていたのだ。

 そして実験するために、湖に出て風を送り出す魔導具を湖に沈めてみた。

「本当にまさかだな。この魔導具って風を送り出すんじゃなくて、筒の中の物を後ろに送り出す魔導具なのか? どれだけ模様をいじっても、風を定義する模様が分からなかったのはそういう事だったのか」

「本当に動いてしまったでござるな……と言っても、風に比べると反動が強いでござる。動かしている物質の質量の所為でござるか?」

「確かに動かす物質の質量で反動は変わるわよね。という事は、400層の水上で使う予定のあれと同じものを水中で使うわけにはいかないわね。50層位の魔導具にして、複数設置してみる?」

「それしかないよな。この魔導具の欠点は、オンとオフしかないから出力を調整できない所だもんな。水上の動力は、正直高速移動時にしか使わないから、あの出力でもいいけど水の中なら出力を下げた物を複数つけて、オンにする個数で出力を調整するのがいいかもな」

 ボタンでオンオフできるように操舵室に設置しよう。

 後は、水中の取り込み口に細工をしておかないとな~取り込み口は少し大きめにして、アダマンタイト製の細い網でもつけておくか?そうすれば、取り込んだものを全部ズタズタに引き裂いてくれるだろうし、詰まる事もないだろうしな。普段は蓋でもしておけば問題ないだろう。

 実験した所、50層でも予想以上の出力があったので、30層にして、船体の水に沈む場所に10機装備している。これで、風と水を送り出す反動を使ってかなりの速度で水上を走る事が出来そうだ。

 船首に積む武器以外は完成した。船体も見た目は木造船に見える。というか外装は木で作っているから当たり前か。武器の方は後でどうにでもなるので、船を浮かべてみたのだが……思ったより軽かったようで、想定した深さまで船体が沈まなかった。

「これって、船首のあれを積んでも想定してるより、かなり軽いって事だよな? 何でだ?」

「某に聞いても分からないでござるよ。船はロマンがあるでござるが、造形や構造に詳しいわけじゃないでござる」

「それもそっか、俺だって同じだしな。まぁ軽いなら重くすればいいだけの話だよな? 魔導具の強化も兼ねて、外装の下のアダマンタイトの層を分厚くして重くするか。そうすれば、船体の耐久力も上がるしいい事尽くめだな!」

 そう言って水に浮かべていた船を回収して、アダマンタイトの層を強化した。

「うっぷ……さすがにアダマンタイトの加工は魔力の消費が半端ないな」

「そうでござるな。今回は、元あった物にくっつける形だったでござるから、さすがに魔力の消費がきつかったでござる」

「あんたたち、だらしないわね! そのくらいでへばってるんじゃないわよ!」

「綾乃はなんであんなに元気なのでござろう? 某と変わらない範囲を担当していたでござるのに、某は魔力の多いノーライフキングで、シュウ殿は体を作り変えて魔力も増えたはずでござるのに、なんで綾乃だけ元気なのでござるか?」

「俺に聞かれても分からん。俺たちと綾乃の違いは、ダンマスか勇者か位の違いだけだろ? それだけでこんなに変わるもんかね? つい最近までは、俺たちと同じだったはずなんだけどな」

 1人だけ元気な綾乃をみて、男2人は魔力を使いすぎた反動にこらえている。

「そういえば、最近は魔力の消費量が減ってきている気がするのよね! 普通に魔法を使おうとしたら、たいして変わってなくてがっかりしたけど、クリエイトゴーレムや素材の召喚は魔力の消費が少ないのよ! きっとシュウが意地悪して私にあんなことばっかりさせるからね!」

「まてまて、お前の仕事量は言うほど多くないだろ! 今だってほとんどが自分の趣味で、時間を潰してるじゃねえか! 俺の所為にすんなし!」

 くだらない事を言い合いながら、俺達の魔力の回復を待った。

 隊長が戻ってきたので船を海に浮かべると、予定していた通りの深さまで沈んだ。船内に入って水漏れがないか調べようとした所、

「あいたっ! 何よこれ! 甲板にまで摩擦力低下の魔石組み込んだの誰!」

 一番初めに乗り込むのを頑として譲らなかった綾乃が、ジャンプして甲板に着地すると、バラエティー番組のローション地獄のワンシーンみたいに綺麗に転んだのだ。そして、起き上がろうとして更に転ぶ無限ループをしていたのだ。

「危なかったな。一番を綾乃に譲って正解だったぜ……」

「そんな、こと、言って、無いで、助け、なさいよね!」

 何度も転びながら、俺らに助けを求めている。

「無理に起きようとしないで、クリエイトゴーレムで魔核に干渉すればいいだろ? わざわざ転ばなくてもいいじゃん」

 外から見ているのと実際苦労してい人間では、気付ける場所が違うんだろうな。そうやって助言をすると、綾乃がクリエイトゴーレムを発動して魔核に干渉を始めた。

「でさ、バザールは甲板に摩擦軽減かけた?」

「まさかでござる! 人の乗る場所にあんなものかけたら、大参事でござるよ!」

「だよな~って事は、綾乃が自分でやった事を自分で受けてるって事だよな」

 しばらく様子を見ていると、

「何よこれ! 何で私が自分で摩擦軽減を甲板にかけてるの? 信じられない!」

 やっぱり予想が的中していた。クリエイトゴーレムは、素材加工では分からないが、魔核の加工には独特な癖があり、理由は不明だが魔核を作った本人の名前が、情報として書き込まれているのだ。誰がやったのか犯人捜しをしようとして、自分だった事に綾乃は怒っているようだ。

「綾乃、落ち着け! とりあえず、船の様子を確認しよう」

 そう言って船体の中に入っていくと、またしても綾乃が綺麗に転んで、階段の下まで滑り落ちていった。大丈夫かな?
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