ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第854話 日常に戻る

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 俺たちの体は今、ディストピアへ帰るために馬車に乗っている。

 体と言ったが、意識を移すためのドッペルの事である。

 戦争も終わり、帰路についた俺たちは数人の意識だけ残して、ディストピアに戻ってきているのだ。馬車は、ダンジョンで作った地下通路を走っており、地下では景色も微妙なので特にする事もないので、一足先に意識を戻している。

「あー、なんか疲れたな。特に何か、いや、一応戦争はしたな。色々考えて動いていたのに、気付いたら俺の考えを置き去りにして、状況が流れていったんだよな」

 今回の戦争について、思い出している。トリプルの冒険者が戦争に参加したりするイレギュラーがあったので、無駄に警戒してしまっただけだろうか?

 トリプルの冒険者も、実力だけで言えば問題なく俺たちで制圧できる相手ではあった。実際に戦ってみるまで、本当の実力はわからなかったけど、聖国の非常識なやつとは違い、問題なく倒せるレベルだった。

 もし何かあった時のために、保険をかけて危険を先につぶしておいたが、やりすぎだったという事はないよな。土木組や年少組の埋め合わせが大変だけど、しょうがない事だよな。

 意識を戻す前にお願いされていた事を実行しますか。

 ディストピアに戻ってきて、俺が初めにとった行動は、年少組と土木組を連れてスーパー銭湯に行くことだ。意識を戻す前に、今回の埋め合わせの一部と言わんばかりに、みんなにせがまれたので連れていくことになったのだ。

 あの施設の名前はスーパー銭湯って名前だが、実際は拡張を続けておりディストピアの住民が自由に利用できる、温泉付きの温水プールや、ちょっとしたスポーツができるようになっている。温泉を作ったなら卓球もできるようにしないと! って思い考え付くままに拡張している施設だ。

 地球の年齢で言えば、小学校高学年~中学生の付き添いの先生の気分だ。地球とこの世界では、成人年齢が違うため考え方やあり方が地球に比べ早熟しているので、実際には違うのだが、今の様子を見ているとあまり違わない気もする。

「ほら、楽しみなのはわかるけど、あんまり広がって歩くなよ!」

 特に土木組の子たちはすでに働いており、ディストピアにいる時間も少なかったりするため、あまり遊びに行けていない事もあって、結構はしゃいでいる様子だ。

 到着して、まずは着替える事に。

 今日来ているスーパー銭湯は、水着を着用してはいるのがルールで決まっており、住人たちの交流の場の一つでもある。このスーパー銭湯で出会って、結婚した住人もいるくらいだ。

 この街の住人の半分以上は、奴隷になったり貧しくて生きていくのすら大変で、結婚なんて考える余裕のなかった人たちである。だけど仕事に就いて、自分で稼げるようになった今、思い思いに恋愛や結婚をしている。

 中には、どうしようもない人間もいるが、度が過ぎる人間はグリエルたちに対処されているようだ。大半はそれで問題がなくなるのだが、1万人も超える人間がいれば、それでも本当にどうしようもない人間もいる。そういう人間は、ディストピアから追放している。

 初めは奴隷に落として売ればいいのでは?と言った反応が多かったが、自分を奴隷から解放するために頑張って働いてきた人間を犯罪を犯したわけでもないのに、奴隷にするのはどうなのだろうと思い、ゴーストタウンに追放する事に決まったのだ。

 報告によると今までに5人程、追放された人間がいるようだった。男4人女1人の合計5人だ。まぁ理由を聞いて、追放はどうなのだろうという内容だったけどな。

 何度も男女関係でトラブルの原因になった事が原因で追放されるとか。と思っていたが、この世界の街は一般人が外に出る事が少ない、という意味で閉鎖的であり、男女間のトラブルはかなり問題視されているのだ。

 だから、注意をしてもどうにもならない人間は、街から追放することも多いらしい。そこまでしてやっと自分のしてきた事が、どれだけ重大な事だったのかを理解するそうだ。

 っと、話がそれてるな。みんなと別れて更衣室へ向かい、トランクスタイプの水着を着用してプールサイドで軽くストレッチをしていると、年少組と土木組の子たちが到着した。

 ディストピアでは、俺もこの子たちも有名人であり、珍しくこの施設に来ていると話題になるくらいには、プールに来ている人が騒いでいる。特に年頃の男の子たちは、土木組を見て目の色を変えているきがする……そんなにガン見するなよ!

 年少組の妻たちを、そういった目で見る男がいないのは喜ばしいことだな。

 シュウは知らないが、追放された4人の男のうち2人が、何度もシュウの妻に言い寄って追放されている。他にも迷惑だという理由で、ボコボコにされて改心した住人もいる。

「みんな、泳ぐ前に軽くストレッチしてからだぞ!」

 ストレッチをする前に、泳ぎに行こうとする子たちを止めて、一緒にストレッチを始めると……どこから現れたのか、戦争に行ったニコたち以外のスライムが、体を伸ばしたりプルプル震えていた。一緒にストレッチでもしているのだろうか?

 ストレッチが終わりプールに入ろうとしたら、俺はスライムたちに運ばれて流れるプールに連れていかれる。

 いくつもプールはあるのだが、ここのプールは結構特殊な形をしていると言っていいだろう。

 中心に50×25メートル程の巨大プールがあり、その周りに休憩するスペースがあって、その更に外側にだいたい250メートル程の流れるプールがある。巨大プールに行くための橋がかかっている。

 流れるプールに隣接する形で、ウォータースライダーを滑ったあとに到着するプールも、2つ用意されている。他にもこことは違うタイプのプールもあるが、今回は一番広いエリアに来ている。

 ここの監視員は目のいい近所のおばちゃんたちがしてくれており、助けに行くのは魚人がしてくれている。魚人の水の中における危機管理能力が高く、溺れる人はそれなりにいるが今まで溺死する人は出ていない。

 このプールで起きた事故といえば、女性の刺激的な格好を見て鼻血を出してしまい倒れたというものと、女性の姿に見惚れた者同士がぶつかって怪我をした……という、笑い話になるような話がほとんどである。

 俺は、スライムまみれになりながら、来ていた子どもたちや年少組や土木組に笑われながら、存分に楽しんでから帰路についた。

 温泉にも入っていこうとしたのだが、お風呂は家で入る! と強くごねられたので、シャワーだけ浴びて帰るところだ。

 そして夕飯を食べた後に年少組と一緒にお風呂に入る。もちろん水着を着用してなのだが、どうせ水着を着てるんだから、スーパー銭湯で入ればいいのに……と、ボソッと言ったら、女心をわかってないんだから! とすごく怒られてしまった。
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