ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第847話 悪魔の魔法薬……

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 日が明けて太陽が昇る時間帯……俺たちの野営地の外では、人造ゴーレムに押さえつけられているクズが11人いた。

 いた、というのは変だな。俺がそのまま放置しただけだしな。外が寒くないとはいえ、水を飲ますのにも近付きたくなかったのか、喉が渇いたと言った奴に水魔法の威力を落としてぶつけていたらしい。全身ビショビショだ。

 死んでいないのは確認できているが、体調を観察するために近付くと、11人中9人の近くに排泄物があった。これがあったから近付きたくなかったのか。そして臭い、あいつらの居場所が昨日より野営地から遠くなっているのは、臭いの所為なのかな?

 それにしても、たかが半日で11人中9人も、う〇こを漏らす者なのだろうか? 寒くなって腹を下した? そうすると順番がおかしいな……臭いから遠くから魔法を撃っていたという事は、魔法を撃つ前にはもらしていたわけだから……ん? 背中に視線を感じて振り返ると、

 やべぇ! 見つかった! みたいなリアクションをとって、テントの影から逃げていくツィード君がいた。

「逃がすか! 【チェイン】」

 なんとなく、とっさにスキルを使ってツィード君を捕まえてしまった。

「兄貴……いくら何でも、そうやって捕まえるのは、あいだっ!」

「だから、兄貴じゃないって言ってるだろ! それにツィード君が逃げるから、とっさにスキルを使ってしまったんだよ。で、何か言う事は?」

「えっと、綾乃のねーちゃんと一緒に作った薬を実験しただけだよ! 綾乃のねーちゃんが、心を折るなら羞恥心から! って言ってて、超強力下剤を作ったんだよ! よくわからないこと言ってたけど、『これなら便秘に悩んでるあなたでもビックリするほど快便に!』とか言ってた!」

 なんていう迷惑な理由で作られた下剤だ……どっかの商品のキャッチフレーズじゃあるまいし。

「で、実験のために使ったら、見事に大惨事? って事か、それって毒か?」

「そだ! 聞いて驚け! なんと超強力下剤は、毒じゃなくて魔法薬なのだ! だから、毒に耐性のある人間でもあら不思議! 下剤の効果が完璧に出ちゃうんです! そこの奥さん! 1本どうですか? いってーなっ!」

「誰が奥さんだ! 誰が! でも、そんな強力な魔法薬なのに、もらしてないのが2人いるぞ」

「聞いた話だからよく分からないけど、もらしてない2人は怪我してた人たちらしいよ。もらすほど体に何も入ってなかったんじゃないかな?」

 納得してしまった。下剤の魔法薬は個人で持ち歩く事は禁止にして、近くにいたスカーレットに回収してもらった。綾乃の奴からも回収しておかないとな。それにしても、魔法薬ってことは……この世界に存在している物か。

 その後は、特に何もなく街に連れて行った。たれ流しのままだけどな。冒険者ギルドにそのまま向かうと、昨日のうちに話を通しておいてくれたみたいで、スムーズに事が運んだが……

「ギルドマスター、どうする? 奴隷の首輪をつけてるから大丈夫だと思うけど、ここの地下牢じゃ心許ないか?」

「どうしようかね」

 カレリアの冒険者ギルドのマスターも、自分の施設の設備だと不安らしい。もし逃げられても止める方法がな、いくらこの人が強いと言っても、シングル以上になる人間の実力は桁が違うからな。しょうがないか、

「じゃぁ、この地下牢に俺が使っていた檻を持ってきましょうか? 特注品の檻だからそう簡単には壊れませんよ。魔法の方も怖いだろうから、ツィード君、例の試作品って持ってきてる?」

「どれの事?」

「闇魔法で魔力を吸収する奴を魔導具化したあれだよ」

「あ~あれなら調整中だけど持ってきてるよ、確か……ここだったと思うんだけどな……どこいったんだ?」

 3分位自分の収納の鞄をいじって、マナドレインの魔導具を取り出した。収納の鞄って指輪で取り出すはずなんだけど、何で直接漁って取り出せるんだろ?

「ちなみに調整中って、なにを調整している所なの?」

「えっとね、いい魔石を使ったせいか吸収量が多くて、すぐに対象の魔力が枯渇しちゃうの」

「そんな恐ろしい物に仕上がってたのか。一度、作ってる物の再確認をしないと、とんでもない事件が起こりそうだな。吸収量が多い分には問題ないか? 枯渇しても意識が無くなるだけだしな。女たちの方は大した事ないから、男たち5人を押さえておければ問題ないし、どうかな?」

 カレリアの冒険者ギルドマスターは、何度も感謝を述べて、戦争が終わるまではしっかり面倒を見てくれるとの事だった。もう4日後には戦争だし、水分さえあれば問題ないだろ。でも、ツィード君の下剤を飲まされてるから、脱水症状も出るか? そこらへんは上手くやってくれるだろう。

 屑共の事は任せて、商会の支店へ向かう。プライベートエリアに向かうとすぐに、カエデとリンドを発見した。意識をうつして綾乃と話していたようだ。女が3人揃っていたので結構騒がしくてすぐにいる場所が分かったのだ。

 怪我をしていて治療院に連れてきた女性たちは、昨日は苦しみから解放されたためか、治療院についてすぐに眠りに落ちてしまったそうだ。薬で寝てたのは無効なのだろうか?

 そして、今朝起きるとお礼を言っていなかったことに気付いて、慌てて俺たちの事を探して治療院の職員に、カエデの場所を教えてもらいお礼に来たのだとか。その時はまだ、ドッペルに意識をうつしていなかったので慌てて意識をうつしたと言っていた。

 女性たちには、しばらく休養が必要なので、身も心も休ませてほしい所だ。アニマルセラピーでもするか? 実験的にここで行ってみようと思い立ち、カエデに相談して治療院の職員に話を通す。

「体はそこまで大きくない方がいいし、街中にいても不思議じゃない動物か……俺の趣向的に猫にするか?」

「シュウ、どうせならフェイクキャットとかどう?」

「フェイクキャット? 偽物の猫?」

「魔物の生態までは詳しく分からないけど、見た目は猫なのに魔物なんだよね。強さは……ゴブリンの強化種とか上位種と同じくらいかな? ランクで言うとEとかだったかな?

 でも、争いは得意じゃない性格なためか、街の中でこっそりと猫に紛れて生活しているのが見つかる事から、猫に似た魔物、フェイクキャットって呼ばれるようになったのよ」

「面白そうだな。レベルも上げておけば番猫? としても使えるな。問題は召喚ができるか……っと、召喚できるから問題ないな。5匹くらい召喚してみようか」

 召喚してみると、猫の種類はランダムみたいで召喚されたのは、白、黒、白黒の3匹は毛の短いタイプの美猫だった。残りの2匹は、見た目はまんまマンチカンと、おっさん座りの代名詞のスコティッシュフォールドが召喚された。

「うむ、可愛いな。Lvは100位でいいか? お前たち! お前たちの仕事は、ここの治療院の癒しのマスコットと外敵の排除だ! 自分で出来ないと思ったら、近くにいるリビングアーマーに助けを求めろ! いいな! 初めのミッションは、昨日運び込まれた女性たちの心を癒してくるんだ!」

 さすがおれが召喚した魔物。俺の言っている事をしっかり理解して、ニャーと返事をしてから治療院に向かって行った。しばらくして、女性の黄色い悲鳴が治療院から聞こえたので、自分たちの役目をしっかり果たしてくれているのだと思う。
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