ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第827話 建物の視察

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 扉を開けて唖然としている綾乃の肩をポンポンと叩き、現実へ意識を戻させる。

「綾乃、大丈夫か? 多分想像してたのと違うから、混乱しているかもしれないけど、綾乃の期待に応えられる出来だと思うけど……どうだ?」

「はっ! ナニコレ! 本当に部屋の中なの? 何で木や岩や滝に川が存在するの?」

 どうやら、混乱してしまったようだ。しばらくあれこれ見回り、落ち着くのにたっぷり1時間かかった。

「ふぅ……シュウ、これは何? 私の希望以上の物がここにはあるんだけど、まったくよくわかんないんだけど! 何で、部屋の中に自然そのものが存在してるの?

 私はてっきり、壁に映像を流すだけで終わると思ってたのに、手入れが必要って聞いた時から意味が分からなかったけど、これが理由なら納得したくないけど出来るわね」

「落ち着いたみたいだな。初めは、映像を流すその線で考えてたんだけど、予想してたより微妙だったから、色々試してみて地球にいた頃の友達の親が、アクアリウムをしているのを見せてもらったことがあったんだ。

 部屋の中に小さな自然を作ってそれを楽しむ、変わった趣味だなって思ってたけど、実際やってみるとはまりそうだね! 友達の親はアクアリウム……水が中心だったけど、これは本当に小さな自然を作り出した、テラリウムというわけだ」

「あんたね。これってテラリウムって言っていうの? アクアリウムって、魚とかを観賞用の飾り付けた水槽なんかで行うやつだったわよね?」

「確かそうだな。友達の親は水槽の中で、生態系が完結できるのが最高だけど、さすがに無理があるからねって言ってたっけ? まぁどうでもいいだろ?

 要は、ダンジョンの機能を取り込んで、除染機能もばっちり! なんだけど、やっぱり、人の手が加わってるせいか、やっぱり手入れが必要なんだよね。そのために呼んだのが木霊っていう精霊なんだけどね」

 そういって、川の側にある木の根元に、柔らかそうな草をいっぱいはやして、座り心地がいいように整えている小さな精霊を指さす。そうすると、こちらに手を振ってくれた。

「小さな妖精がいると思ったけど、あれって木霊だったのね。それにしてもすごいわね。こんなにすごい物を準備してくれるだなんて。これ気に入ったわ! 帰ったら私の部屋にもほしい!」

「お気に召したようで。このサイズのやつがほしいのか? 大きくても小さくても、手入れが面倒だと思うけど……」

「ご主人様! 綾乃様にも専属の木霊と、屋敷からブラウニーを派遣すれば問題ないです。なので綾乃様、手入れの件は、気にせずに問題ありません!」

 ビビった! ちょっと心臓が口から飛び出るかと思う位ビビった。あれ? それってちょっとなのか? 建物の調整を行っていると思っていたミドリが、急に後ろから声をかけてくるんだから、ビビってもしょうがないよな?

「ミドリちゃん、ほんと? ここまで大きいと部屋の使い道に困るから、向こうに帰ったら大きさを決めるね! 私もいる時は一緒に手入れしてもいいよね? これって何か楽しそうだし!」

 どうやら俺の関係するところには、これからアクアリウムが増えていくようだ。大きいのから小さいものまで色々増えそうだな。応対室とか廊下とか、気付いたら全部入れ替わってたりしないよな? やる気をみなぎらせているミドリを見ながら、そんな風に感じてしまった。

 夕食までもう少し時間があるので、建物の中を見て回る事にした。思ったより大きな建物だ。

 そして、元々大商店だったのか、4階建てで1階の半分と3階までが、お店として使える感じだった。そして不思議なのが、1階、2階、3階、4階は、別々で独立していたのだ。途中で支店をまかせるメンバーを見つけて話を聞いてみた。

 1階は、近くの住民向けの食品を扱うエリアになっているようだ。イメージするなら、八百屋とか肉屋が合わさったような感じだろうか? 1階の半分は作業スペースになっているらしい。肉を切り分けたり、野菜の在庫を置いておいたりするようだ。

 2階は、武器防具等を販売するらしい。3階は、買取りと、宝石類等高級品を取り扱うためのエリアにするようだ。特に高級品を取り扱うエリアは、廊下を進んだ先にあり、出入り口も一つしかない。

 これは、盗難防止のため、個々に対応する予定だとの事だ。普段は入れないように鍵をかけて置くとの事。自由に入ってみる事はできないんだな。

 最後に4階は、店の従業員の居住スペースだ。雇いの者は、自宅から通う者もいるだろうが、住み込みで働きたいと考えている者のために用意されている。支店を任されるメンバーも、家族と一緒に住む事になるらしい。

 そうすると居住スペースが足りなくなるので、5階を増築するように指示をしておいた。ここが落ち着いたら、家族を呼んで一緒に暮らすらしいから、きちんとプライベートエリアが無いとね! 寮母さんみたいな人がいるといいかな?

 建物から出て敷地内を見て回ると、何やら壁が取り壊されている場所を発見した。

「これって不用心じゃないか?」

 隣を歩いていたピーチにそう尋ねる。

「この建物とあちら側の建物は、商会所有の土地ですので、ここに扉を作るために一部取り壊していると先ほど聞きました」

 おっと、どうやらこの先も所有地だったのか。あっちの方に、孤児院や治療院を作るのだろうか? そういえば聞いた話なのだが、この世界では孤児はとても危険で、攫われて売られる事も多いそうだ。

 なので、孤児院への出入り口は、外に直接つなげないようにしているらしい。商会の支店に併設されているので、基本的には支店と敷地を通るか、治療院の敷地を通らないと、外にはいけないようになっている。

 1人で勝手に外に出ないようにするためだろうか? だからといって、閉じ込めておくわけでもない。幼い子たちは、危なくないように目の届く範囲で遊ばせ、ある程度大きくなると、治療院の手伝いやお店の手伝い、街の技術者に弟子入り等をさせているようだ。

 もちろん、最低限の勉強はしてもらう事になるけどね。その点、通信システムを取り入れ、通信教育みたいな事が出来るので、各地に教師を派遣しなくても問題はなかった。

 教育の場所となるのは、支店のお店の裏に新しく家を建て、会議室やその他の用途として使えるように作る予定らしい。思った以上に急ピッチで準備が整えられているようだ。
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