ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第817話 『魔熱病』のルーツ

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 俺たちは並んで、タブレットに表示された『魔熱病』の感染エリアの状況を確認している。もちろん、カメラに収めた動画を早送りにしてだ。

「この結果って何なんだろうな。次亜塩素酸水や劇毒で濃度が下がった時とは、明らかに違うよな。それにしてもこの感じだと、万能薬以外では濃度が下がっているけど、根本的に対処出来てなかったって事かな?

 初めに実験した時は、まさか濃度が戻ると思わなかったのに、万能薬の場合は感染エリアの全体の濃度が使い続けただけ薄くなって、散布してない所まで濃度が下がっていくんだからな。はっきり言って意味が分からん」

「確かにシュウの言う通りね。何なのかしらね、この『魔熱病』ってさ……でもさ、シュウがダンマスのスキルで召喚できるって事は、この世界の法則と言うかシステムの一部って事よね?」

「そうでござるな。ダンジョンマスターなら召喚ができるでござるから、神たちの遊戯の駒の1つってことでござろうな。それにしても誰がまいたのでござろうな」

「っ! シュウ! 1つ確認していい? 『魔熱病』のレシピは召喚できるの?」

 綾乃に言われて、バザールと一緒にレシピを探してみるが発見できなかった。

「っていう事は、『魔熱病』はダンジョンマスターによって、広められたと考えるべきじゃないかしら? レシピが分からないのに失敗から生まれたって……今考えると無理があると思うの。それなら、ダンジョンマスターが意図的に広めたと考える方が妥当だと思うわ」

 言われてみれば、確かにそう考えた方がしっくりくるな。

「となると、昔に起きた『魔熱病』は、ダンジョンマスターが不利になる対策をしていた街に仕掛けた攻撃って事か?」

「それだけとは限らんでござる。他にも狙っていた女の子が他の男とよろしくしていたとか、感情の爆発みたいなものもあり得るでござる。カッとしてやった! みたいな?」

 その発言をした時に、綾乃はさげすむような眼でバザールを見ていた。その目はやめてやれ。

「自分で言ってあれだが、過去の『魔熱病』を広げたダンジョンマスターの理由は今はどうでもいいよな。問題は、今回の『魔熱病』もダンジョンマスターによる仕業って事だよな」

「そうね、過去に召喚された魔法薬がまだ残っていたと考えるよりは、しっくりくると思うわ」

「今はフレデリクの『魔熱病』対策をしようか。一気に散布しても効果があるのかを確認してから、フレデリクの街に散布しよう」

 今回『魔熱病』を広げたと思われる敵、ダンジョンマスターは一時放置する事に決め、フレデリクの『魔熱病』対策を考える事にした。

 一報としてグリエルに伝えたが、城壁や町や村の対策に関しては、そのまま継続する方針でお願いしている。他にも、畑の土も排除して入れ替えないといけないので、する事は沢山ある。

 土に関しては、バザールが研究している土を提供する予定なので問題はない。バザールが管理している農場の半分ほどの土をもっていけば、十分に足りるはずだ。せっかくバザールが作ってくれた土なので、DPを対価に提供してもらって、また新しく研究してもらう予定である。

「この結果は、なんといっていいのかしらね。散布量を増やしても効果が全くない。しかも、半分にしても効果が変わらなかったわよ。何なの『魔熱病』って!

 初期の濃度なら、2ヶ月ほどあればほぼゼロに出来るわね。1時間で1本分って事は、24時間に28日に2ヶ月……そうなると全部で、1344本かな? 余裕をもって1500本分あれば問題ないでしょ? シュウ、準備してもらっていい?」

「了解。散布ゴーレムは一応強化させた方がいいよな。バザール、DP渡すから召喚して万能薬を収納箱に入れておいてくれ」

 俺とバザールが作業を始めると綾乃が工房を出ていった。よくわからないが、綾乃には綾乃のする事があるのだろう。特に気にせずに俺達はする事をこなしていく。1時間ほどで、万能薬散布ゴーレムの再製作と調整が終わった。バザールの方も準備が終わったのでグリエルの執務室へ向かう。

「グリエル! 準備ができたぞ。早い段階でこれをフレデリクの街に運んでくれ。設置する場所は、フレデリクの領主館でいいから1日に1回満タンまで補給するように厳命してくれ。

 おそらく2ヶ月ほどで、感染をしなくなると思うけど、さっき話したように『魔熱病』の影響は残るから、たてた計画通りにフレデリクを改築していこうか」

「これが、『魔熱病』対策の機材ですか? これに万能薬を入れて散布すれば濃度が下がるって事ですか?」

「そういう事。1時間で約1本分の万能薬が消費されるくらいのペースで、散布されるように調整してあるよ。そんな顔するなって、早い段階で収束させないと街を立て直すのに、手間と時間がかかるからな。

 過去の文献から判断すると、街が全滅するのが普通だって話だろ? 誰も死なずに収束するなら安いもんだろ? DPだって問題ないレベルだしな。他の街でこれが起こったら……考えたくもない話だな」

「そうですね、とりあえずフレデリクに届ける手配だけしておきます」

 そういって、ベルを鳴らすと秘書が部屋に入ってきて、いくつか指示を出すと小走りをして手配を始めた。しばらくすると、荷物を運ぶためなのか収納の腕輪をつけた人物と、力自慢に見える2人が入ってきて、散布機の方は収納の腕輪の娘が、力自慢の2人が万能薬の入っている収納の箱を運んでいった。

「それでシュウ様。今回の『魔熱病』に関して、ダンジョンマスターが関わっていると言っていたのは本当ですか?」

「確定ではないが、状況を考えると間違いないと思う」

 そう話を切り出して、俺たちがその考えに至った内容をグリエルに話していく。

「確かに、ダンジョンマスターが関わっていると考えるのが妥当ですね。ですが、ダンジョンマスターがフレデリクを対象にした件がよくわかりませんね。シュウ様を狙ったのか、偶然にフレデリクを狙ったのか、よくわかりませんね」

「グリエルはフレデリクの復旧に関してよろしく頼むよ。『魔熱病』に関してはこっちで調べておくからさ」

「フレデリクの方はこちらで進めておきます。確認してほしい事がありましたら、連絡しますのでよろしくお願いいたします。あ、樹海産の木材を運んでもいいですか? あと、城壁用の石材を調達したいのですが、ヴローツマインから購入してもいいですか?」

「木材はディストピアで使う分さえ残ってればいいよ。石材は、ヴローツマインと相談して、向こうに負担の無い程度になら購入してくれていいよ」

「了解しました。では失礼いたします」

 バザールを連れて工房へ戻る事にした。
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