ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
800 / 2,518

第800話 謎の冒険者たち

しおりを挟む
 擬態の上手い魔物を退治してから30分ほど散策すると、また何かが争った形跡がある。

「今度は、魔物と人間が争った感じだな。相手はさっきの擬態の魔物じゃないだろうな」

「そうですね、今回は血が散らばってますが、おそらく人間側は怪我を負っている様子ですね。死んではいないですが、それなりに怪我を負った感じですかね?」

 俺も、マリーの意見に同意の状況だと考えている。死体が無い事から人間側は生きている。魔物側は死んでドロップになったか、深手を負って逃げたかのどっちかだろう。魔物の領域で仲間が死んだ場合、基本的に放置していく事が多いのだ。

 正確には、死体を連れて帰る余裕もなく、死体をおいて逃げる事によって、魔物がそこで食事を始める事を目的とするのだ。そして、ここには死体の千切れ部分が何もないので、生きていると判断した。

「と言っても、何もできないけどな。一直線でも無いが、ミューズ側から来たのに遭遇していない事を考えると、それなりに時間が経っているか、ミューズ側に逃げられない理由があったかのどっちかかな?」

「このまま考えていてもしょうがないので進みましょうか? みんな、まわりの気配には注意して進みましょう」

「ちょっと待って! あそこにはえてるのって目標の薬草じゃないかな?」

「ん? おぉ偉い偉い! サーシャよく見つけたね」

 薬草を見つけたサーシャの頭をなでながらほめる。しゃがんで探していたこともあって、背の低い木の影にあった薬草を見つけた。サーシャにお願いして、薬草を採取してもらう。

 この薬草は根から葉にかけて、茎の部分に薬効があるタイプなのだ。と言っても、根っこまで持っていくと、魔の森でも再度はえるまでに時間がかかるので、土から出ている部分を3センチメートル程残して摘む事が大切である。

「サーシャ、摘んだ薬草は麻紐で軽く縛ってから収納の腕輪の中にしまっておいてくれ」

 は~い、と可愛らしく返事をしたサーシャが一生懸命摘んでいる横で、俺は周りの様子を観察する。

「特におかしなところも無いし、他の薬草を摘むために移動しようか」

 その日は、これ以上気になる事もなく帰る時間になった。他のチームも問題なく1日が終わった。部屋に集まったみんなの話を聞いても、特に気になる事も無かったそうだ。まぁ1日目だし、ゲスドゲイドと司祭に関係があるかも? という事について分かっただけでも良しとしよう。

 次の日から2日は、特に何もなく時間だけが過ぎていった。一応、3チーム程クエストで領主館にも行っているが、特に何もなかった。

 だが4日目に入ると、動きがみられた。シュリの3人パーティーに、ミューズの冒険者パーティーが接近してきた。一見すると、パーティー構成のバランスが取れた5人組だった。前衛2中衛1後衛2だ。前衛はタンクが男女1ずつ、中衛は槍使い男1、後衛が男魔法使いに女ヒーラーと言った所だろう。

 まぁ一見すると、と言っているように、マップ先生で調べた所、実際は遊撃にあたる斥候や双剣使い5と言う変なパーティーだった。3人パーティーで腕の良かったシュリたちが目をつけられた感じだろうか? シュリたちはそのままパーティーの誘いにのって行動する様だ。

 俺は魔導無線で、

「みんな、今日はシュリたちのチームのサポートをするから、マップ先生を使って全力でフォローするよ」

 見た目と実際の職業が違うので、何かがあるという前提で行動する事にした。そして念のため部屋で積み木になっていたスライムたちと、ダマも呼んで万全のサポート体制をとる。

 シュリたちの魔導無線はずっとオープンにしてもらっている。マップ先生と無線による監視だ。シュリたちが採取クエ、向こうのパーティーが討伐クエ、と言うよりはドロップ素材を納品するクエを受けたようだ。どう考えても、見た目の職業では釣り合いのとれないクエを受けていた。

 話を聞いている限り、何処で生まれたとか、何処で冒険者活動をしていたとか、これまでのクエストの内容等、他愛のない話をしているが、よくよく聞いていると、シュリたちの能力を、遠回しに聞いているようにも取れる内容だった。

 それに気になるのが、進行方向に魔物の群れがいる事だ。その近くに3人組のテイマーがいるんだよね。ここ3日はいなかったはず。スプリガンのみんなからの情報でも、この3人組はいなかったと報告がある。

「なんとなく真相が分かってきたかもしれない。俺たちが初日に見つけた魔物との戦闘跡は、あいつらの仕業じゃないかな?

 そしてシュリたちと一緒にいるパーティーが、その時にいてその戦闘中に怪我を負ったパーティーを街に運び、今回ターゲットになっている司祭に怪我を治させて、法外な請求をして奴隷落ち。みたいな感じじゃないか?」

『でも、ご主人様。それだと、初日に遭遇したあの冒険者との関係が説明できないと思います』

「あいつらも、シュリたちと一緒にいるパーティーと同じっていう線は?」

『ないとは言えませんが、可能性は低くないですか?』

 ん~ピーチの意見にも納得できるな。ゲスドゲイドに犯罪の称号がついていないのも変だな。

 怪しいパーティーの誘導でシュリたちは、3人組が待っている場所に誘導されていく。

「みんな確認だけど、シュリたちが相手になると思う? 魔獣たちと3人組たちに、シュリたちが怪我をさせる事ができると思うか?」

『『『『『無理ですね』』』』』

「みんなの意見は一致か。シュリ、自分たちが危険にならないように、戦闘を伸ばしてみてくれ。もし少しでも危険を感じたら、手加減無しで倒してしまっていいぞ」

『了解しました』

 と、小さな声で返事があった。10分位進むと魔獣たちと遭遇して、戦闘が開始される。

「ん~、一応冒険者も戦ってはいるんだな。でもこれって、明らかに偏りがあるな。しかもじわじわと戦闘場所が離れてるな。いくら何でもシュリたち3人に対して7匹で、5人組に対して3匹って明らかにおかしいだろ。しかも、近付くならともかく離れるって何か企んでますって感じだな」

 みんなもうんうんと頷いている。しかも、視界から見えなくなった所で、5人組が煙幕のような物を使うと、5人組を襲っていた魔物たちがシュリたちの元へ走っていくのが分かった。

 こいつらが逃げるような煙幕があるなら、シュリたちの近くで使って、一気に全員で戦闘地域を離れるべきだろ。もともと囮に使う予定か、何かを企んでいると言わんばかりの行動だな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...