ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第765話 住民との交流開始

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 月・火曜日にあたる2日は、農業関係の人たちや施設を見学したり、お話ししたりした。農業関係者の人たちは、ほとんど俺に感謝しっぱなしだった。ここにいる人達は大半が、奴隷上がりなのだ。

 悪徳商人に騙され奴隷にされた人、不作が続き対策をしてくれない国や街によって奴隷落ちにされたりと、環境が原因で奴隷になった人を、グリエルが手配して購入したので、正確には俺に感謝をするんじゃなくて、グリエルに感謝するべきだと思うんだけどな。

 冒険者も早い段階で自分を買い戻していたが、それより早かったのが農家だった。一番早く買い戻したのは、ネルの両親だ。今となっては俺の義理の親になるんだけどな。

 一番早く買い戻しができたのは、ネルが自分のお小遣いなどを、両親を買い戻すために提供していたので、買取りが一番早かったのだ。

 俺の妻となったネルだからというよりは、両親のためにネルが頑張ったからなんだけどな。グリエルのお願いで、回復魔法を使って街の人たちを治療してまわって、お金を稼いでいたらしい。本人はそれを知らないんだけどな。そこらへんは大人の事情って奴らしい。

 3日目・4日目は、林業の人の見学と交流なのだが、この街で林業? って思ったが、思っていた以上に木材の需要が高いらしい。

 何でかと思ったら、お金を自分で稼げる人たちが多いので、空いてる土地を買って、物作り全般が得意なドワーフに依頼して、理想の家を作っているとの事だ。他にも薪としても利用しているので、林業の人たちは日々頑張っているらしい。

 街の外に出て危険地域で木を切り倒さないといけないので、ある一定の戦闘力は必要になってくるため、軍隊かと思う位に鍛えられている人たちが多かった。

 それ以外にも、荷物を運ぶための重機代わりの普通のゴーレム、これは地の精霊であるノームのノーマンが、魔法で作り出している物だ。俺の支配下にある場所に限り、魔力供給が必要ない特殊タイプとの事だ。

 そしてノーマン以上に林業の人達が感謝しているのは、大精霊のウンディーネ、アクアだ。木は切ってからすぐに木材として使えないため、その乾燥に一役かっているらしい。

 水精霊が適度に水分を抜いてくれるらしく。普通なら年単位で乾燥させる必要があるのに、1週間もかからずに使う事が可能らしい。この世界の精霊ってすげえな。

 って思っていたら、それを従えている俺にめっちゃ感謝してきたので、農業の人と同じでつかれてしまった。それ以外にも、戦闘訓練やレベル上げについても、冒険者ギルドでアドバイスをしてくれることを、とても喜んでくれていた。俺がしていないことまで感謝されて、どうしていいか分からなくなった。

 第1週、最後の日。5日目は、農業と林業に携わっている人が集まって、宴会みたいな事をした。

 正確には、1~4日目までは仕事をしている人の見学と体験、話し合いだったが、5日目に関してはいつも頑張ってくださっている人たちをねぎらうために、俺が主催したことになっている食事会に、2つの関係者たちが集まり、挨拶をする場みたいな感じだ。

 シルキー監修、ブラウニーが手掛けた食事を食べれるという事で、出産を控えた奥様方以外は全員参加していた。

 一番大変な思いをしている、出産を控えた奥様方には別に、シルキーたちが食事を準備しているので、実質全員が食事を食べる事が出来ている。もちろん、赤ちゃん専用食も作っているあたり、さすがだと思った。

 第2週の1日目は、漁業をしている人たちの見学と話し合いだ。漁業に携わるのは、人族と魚人たちだ。人族は主に、湖で漁や養殖をしている。魚人たちで漁業をやっているのは、深海にすんでいる海産物の採取と、ダンジョンからとれる海産物やドロップ品で生計を立てている。

 まずは人族の漁業関係者との交流で、俺が刺身が好きとの事で生食を試して、腹痛とかに襲われた人がいたらしい。寄生虫の概念が無いのか腹痛に襲われた人は、美味しかったのでまた食べようとしてたが、原因が分からずに止められていたらしい。

 あれ? その時は病院で治療してもらったとか言ってたけど、そこで寄生虫について聞かなかったのかな? 疑問に思ったので聞いたら、寄生虫の話は聞いたけど、寄生虫が分からないので聞き流していたと言われてしまった。確かにディストピアの学校でも、そんなこと教えてないからな。失敗したな。

 寄生虫とは何かを説明して、その対策についていくつか説明した。基礎知識があったので、何とか理解してもらう事が出来てよかった。前回はその下地も無くて理解できなかったようだ。

 ここでも住人のみんなに感謝され続けて居心地が悪くなった。

 次の日の魚人たちとの交流では、以前、鼻高になっていた魚人の若者の様子が変わっていた。力に魅入られていた若者たちが、自分の種族の繁栄という目的ではあるが、精力的に活動しているとの事だった。

 自分の種族が中心であっても、他の種族をないがしろにしているわけでは無いので、問題が起きているわけでは無い様だ。

 魚人たちのメインの商品は、和紙なのでこれからもよろしくという事で、お願いしている。和紙は量産品を含めて単価が高いため、ディストピアの中でも結構な収入だ。

 そのため魚人の住む島には、お金をかけて色々な物が作られている。その大半が、ドワーフに依頼して、生活環境を整えるためのものだった。特に水に関しては、生きるためというより、生活に不可欠なので魔導具をいくつも買っているらしい。

 第2週3日目、4日目は水産物の加工場の視察と交流だ。ここはいつでも人手が足らないくらい大忙しだとの事だ。

 塩づくりに関しては、綾乃が専用のゴーレムを作って貢献しているが、最初から最後まで全自動とはいかずに、命令を出さないといけないので、その命令を出す人間の教育も大変だとの事だ。作業工程をしっかりと覚えて、自分の目で見極めないといけないため大変なのだそうだ。

 他にも干物等を中心に作っている。ディストピアができた当初から作っている、鰹節や出汁昆布などももちろん量産されている。海産物はいいだしが出るものが多いので、魚をさばいた際にでるアラを塩を作る窯と似たような物で、出汁をとって粉末にして手軽に使えるだしの素も作られている。

 これの主導者は、もちろん綾乃だ。日本に住んでいた者としては、食生活の向上を図るのは必然だと思う行動だった。それでディストピアの食の向上が図られているのだから文句はない。

 5日目は、第1週と同じように、宴会を開いてみんなを招待している。ここでも、農業や林業の人と同じで、感謝をされまくり居心地の悪さを感じていた。休みの2日間は従魔と戯れて疲れた心を癒していた。俺がしてない事も、俺のおかげだと言われるのが心苦しかった。

 シュウ以外の人間からすれば、シュウがいなければ自分たちは地獄の底で、死ぬ事もできずに生きる事に必死になって、血反吐を吐きながら働かされていただろう、と言うのが共通認識なので、シュウに何を言われても聞き入れる事はあり得なかった。
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