ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第761話 プチトラブル

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「ディストピアよ。私は帰ってきた!!!」

 っと、なんとなくアニメの名セリフ風に言ってみたが、このネタを分かってくれる相手がいなかったので、みんながポカーンとした顔をして俺の事を見ている。

 中には、また始まった? みたいな表情で俺の事を見ている妻も……冷たい視線はやめてほしいんだ! 癖になっちゃ……ってちがーーう! 俺は断じて変態紳士ではないのだ!

 早朝なので、ディストピアの街は活発になってはいないが、それでも結構にぎやかだな。屋台をめぐって話を聞いてみたら、農業に携わっている人間は、食事をとってから仕事へ行くらしい。朝早くから食事を作るのは大変なので、朝と昼は屋台で食べるのがディストピアの農家さんたちの基本らしい。

 ディストピアで農家の給料は、高い位置にあるらしい。自営業……作って売った分だけお金が入ってくるので、頑張っているのだろう。

 それにノーマンやドリアードの助けもあり、ドワーフたちが農作業を楽にする魔導具を、綾乃やバザールと一緒に作成しているのも大きいらしい。食べるものはすべての原点だもんな。生きるためには食事をしないとな。

 それにディストピアの農作物は高値で取引されるから、多少高く売っても商人は利益が出る最高の食材だそうだ。一番は、ブラウニーたちが扱っている食材、と言う宣伝効果が一番のようだが。食材を卸しているのは俺の商会だけだから、街の人間が買うので他の商会は儲ける余地はない。

 偽物を疑うのなら、俺の商会で買えば問題ないので、悪徳商人が稼ぐためには俺たちの事を知らない街へ、もっていくしかないのだが……そんな所で高値の農作物が売れるわけもなく、輸送費で赤字になるだけだろう。

 ゼニスとグリエルが相談して、今のような状況にしたらしい。ディストピアでは今、自給率が1000パーセントを超える勢いで食料が生産されている。

 初めは腐らないように、収納の箱とかを準備していたのだが、それでも余ってしまい、ダンジョンの機能を使って鮮度維持というよりは、品質維持と状態維持の特殊効果をもつ空間を作って、さらに温度管理が可能な特殊エリアを、かなりのDPをつぎ込んで作成している。

 それでも、野菜や穀物の生産量はさらに増加を続けている。

 消費するために、家畜も結構な数を育てているのだが、今度は肉の生産量まで増えてしまい、どう頑張っても消費しきれなくなったのが、売りに出すきっかけになっているとの事だ。

 これを聞いたのは、確かディストピアを作って1年くらい経った頃だっただろうか? ディストピアは、主にドリアードとワームの力によって、収穫スピードがおかしいからな。精霊の力で連作障害すら気にする必要が無い、という最高の畑だ。

 それに、バザールの農牧場にもドリアードは行っているようで、収穫量がおかしいんだよ。バザールの強みは、自分もダンジョンマスターなので、俺が渡しているDPを使って色々できるし、労働力が骨たちだからな。

 あいつらって、人間の体より雑菌がつかないから綺麗だし、ノーライフキングのバザールが命令を出すことによって、作業効率が跳ね上がるからな。力を強化するために、ダンジョンでレベル上げまでする徹底ぶりだし……

 細かく命令できるから、地球の機械よりよっぽど便利だ。燃料食事はいらないし、メンテナンスいらず、命令後は全自動! 野菜も完璧な物だけを、24時間収穫し続ける。

 っと話がそれたが、ディストピアの農作物は、収穫量が多いのに値段が高いので、自然と農家の手取りは高くなるという事だ。お金があるので、朝時間のない農家は食事を屋台でとるようになり、昼の準備もしてきていないので、昼も屋台で済ませるようだ。

 特に食べに戻ってくるのは面倒なので、ここで弁当を買っていくか、寒い時期には温かい物が食べれる屋台が、畑の近くに出るらしい。

 ディストピアは、農家だけでなく、塩を作っている人たち、湖で漁をする人たち、和紙を作っている魚人たち、スパイダーシルク等魔物からとれる貴重な繊維を売る人、その貴重な繊維を生地に仕立て上げる人、その生地やバザールの骨っ子が作る量産品の生地を服に仕立てる人、その仕立てる服をデザインする人、ドワーフたちの鍛冶労働者、ギルドや庁舎、学校で働いている人たち、そしてその人たちがよく利用する屋台や食堂の関係者……つまりディストピアに住んでいる人たちは、みんな高給取りになっているのだ。

 その中でも特に高給取りは、庁舎で働く偉い人たちだろうな。他の住人とはケタが違う位もらっているからな。その給料も全部、ディストピアで起こしている事業が稼いだお金で払われている。

 そうそう、ディストピアでは税金をとっていないのだが、住人が話し合って、寄付をしてくるんだよね。自分のためにつかえばいいといつも言ってるのにな。とりあえず、寄付してもらったお金には一切手を付けずに蓄えてある。何かあった時のためにね。

 俺ってば、ダンマスだから勝手に収入があるんだもん。わざわざ住人からもらう必要もないんだよね。それに、商会からのお金だって使いきれないくらい入ってくるから、本当に困っているくらいだ。

 俺的には、みんなが幸せだと言ってくれることが、一番幸せだったりするんだ。街を創ったかいがあるってもんだね。

 そんな事を考えながら、屋台で買い食いして帰路へつく。

 途中で俺の右腕がなくなっていることに気付いたおばちゃんたちが、大事にしそうな雰囲気だったので、妻たちが全力で止めにかかったくらいだ。街のみんなには、戦闘で腕を食べられてしまったけど、治す方法はすでに準備していることを伝えて安心してもらっている。

 その際にすぐ治さないのは、準備ができていない状態、しっかりと栄養を蓄えてから使わないと、反対に大変な事になると説明している。

 他の街でこんなことを言っても、分からない人が多いが、ディストピアは大人たちにも勉強を教えているので、この位は当たり前に理解できるようになっている。

 妻たちの説明を聞いて安心したのか、いつも通りに接してくれるようになった。

 色々あったが……やっとうちに帰ってきたな。やっぱりこの家が一番落ち着くな。
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