ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
751 / 2,518

第751話 本当の姿……?

しおりを挟む
 ベルゼブブことハエの王……だったモノがそこで腕を組んで、俺たちを見ている。そこからは感情のような物は感じられず、不気味に微笑んでいるだけだった。

 それにしても、鳩尾付近からはえている、2対の腕……あの4本の腕はどうやって使うんだろ? ただただ邪魔じゃないだろうか? 手足が2本ずつの俺たち人間には、分からない使い方があるのだろうか?

 そんな事を考えていた刹那の時間で、ベルゼブブだったモノの雰囲気が豹変した。

「フシャァァァァァァァ!!!!」

 なんだかよく分からない奇声をあげて、人間位のサイズだったモノが、250センチメートル程のサイズに膨れ上がり、何とも言い難いビジュアルになっていた。元からある程度マッチョだったが、大きなサイズになってさらにマッシブな筋肉が追加されたようだ。

 それにしても、鳩尾付近の4本の腕までマッシブになるのは、何故だ……その腕どうやって鍛えるんだ!

 全員警戒態勢は解いていなかったのだが、次の瞬間にタンクのサーシャとメルフィが、壁に向かって吹き飛ばされていた。2人がいた場所には、ニタァと笑っているベルゼブブがいたのだ。

「いつの間に!」

 驚きは一瞬だったが、いち早くネルが2人の元に駆け付け回復を始めようとし、弓使いのメアリーとマリアがつがえていた矢を解き放っていた。

 ベルゼブブの近くに仲間がいなくなったことが幸いして、放たれた弓はベルゼブブのお腹付近に吸い込まれるように飛んで行ったが、いとも簡単に鳩尾付近の腕にはたき落されてしまった。

 それにしても、自分に向かって飛んでくる矢をいとも簡単にはたき落すって、どういった動体視力をしてれば出来るんだ? それに、的確にはたき落すためにつかわれた、最適化された腕の動き……これってかなりやべえ奴じゃねえか?

「あのクソ爺! 最後に爆弾落としていきやがって! だましやがったな!」

『だますとは心外じゃな。このダンジョン攻略を楽しめるように、最後の出し物じゃよ、思う存分楽しんでいってくれ。ここで1つアドバイスじゃ、お前さんの考えているように、あの魔物はベルゼブブじゃ。

 だが、今の状態が本来の姿だ。そしてハエの王というだけあって、ハエの特性も有しているから注意するんじゃぞ。それじゃぁワシは、このダンジョン最後の楽しみを見させてもらう事とするよ』

 あれが本来の姿? それにハエの特性も有している? 動体視力か! 見た目では判断できないけど、複眼を持っていると考えた方がいいってことか? それにそれを高速処理して、動く事も可能ってことか? ここに来て一番厄介な敵が出てきやがったぜ。

 正直、このダンジョンの1匹1匹の魔物の強さは、今考えると王国の神のダンジョンの方が強かった。特にボス格の大きな堕天使も、王国の神のダンジョンのボスに、及ばなかった気がする。1体1体も確実にSランクに匹敵していたが、数で補っている部分もあった気がする。

 おそらくだが、大きい方の堕天使1体とファイアナイトが戦ったら、ファイアナイトが勝つだろう。それが2体になっても変わらないだろう。3体になればわからないが……

「みんな! よく聞いてくれ。創造神とやらから情報が来た。あの魔物は、俺の予想通りベルゼブブで間違いない様だが、ハエの姿は仮の姿だったらしい。今の姿が本来の姿のようだ。

 そしてハエの王というだけあって、ハエの特性もあるみたいで、その特性は恐らく異常な動体視力、複眼というものを持っていると思われる。どんなに早く動いても、あいつには通じないと思った方がいい。

 対応しきれないくらいの、飽和攻撃や範囲攻撃が有効だと思う。絶対に無理をするんじゃないぞ! 1人で突出する事だけはしないように注意してくれ」

 今まで逃げに徹していたベルゼブブとは違い、積極的に攻撃をしてくるようになっていた。ハエ形態の時と同じように早い動きで、俺たちを攻撃してくる。だが慣れてきたせいか、ハエ形態の時とは違い、何とか目で追えるようになっていた。

 スピードを犠牲に、攻撃力が高くなっているのだろうか? タフな所は変わっていないかよくわからん。

 もともとハエ形態の時は攻撃が効いているのか、よくわからなかった事もあるが、鳩尾付近から出ている腕4本が、どこから出したか分からないが盾を持っており、攻撃を受け流すため、ダメージを与えられずタフなのか判断できていない。だがわかるのは、盾を含め全体的に守りが硬いという事だ。

 なにより驚愕する事実は、学習能力の高さだ。2度だけまともにダメージを入れられた瞬間があったのだ。浸透勁による防御力無視の攻撃が、盾の上からベルゼブブにダメージを与えたように見えた。

 だが、その浸透勁が危険だと判断したのか、3度目からはシェリルの攻撃を受けずに、そらすかかわしていたのだ。

 戦闘開始から10分でこれだけのことが分かった、反対に嬉しい事実も判明している。ベルゼブブの攻撃は、痛い事は痛いが耐えられないわけでは無く、致命傷になる事も今の所ないという点だろう。

 防御態勢をとれていない時に攻撃をくらえば、普通に骨折したりするので普通なら致命的なのだが、地球の現代医療を学んでいるヒーラー陣の回復能力は凄まじく、骨折程度であれば何の後遺症も無しに治すことができるのだ。

 治療院を作るまで知らなかったが、この世界で骨折を治すためには、外科的な処置をした後に回復魔法をかけるそうなのだ。

 この世界有数の回復魔法師でも、日常生活に支障がない程度までしか、治すことができないのに対し、ピーチ・キリエ・ネルの3人は、外科的処置をすっ飛ばして治せ、その上戦闘復帰も可能なほど見事に回復させるのだ。やはり、肉体構造をイメージできるだけの勉強をした人間の、回復魔法はすごい様だ。

 ちなみに今、治療院では、医学の勉強も教えているらしい。そこの教師役は、治療院や治療院を併設している商店の裏の管理者である、ブラウニーがしているようだ。

 俺の記憶の一部を受け継いでおり、さらに家事仕事の合間に役に立つ知識を覚えているみたいで、本人たちの中では家庭の医学程度の認識だが、その知識は侮れないものだ。

 その知識からすれば、体の構造は分かりやすいものと言えるだろう。病気やなんかだとすれば、医者にはかなわないが、構造が決まっている体のつくり等であれば、筋肉の付き方など覚えればいい、という事らしい。俺からしたら覚えるだけが難しいんだけどな!

 そんな知識もあって、3人の回復能力は非常に高い。それ以外にも原理は分からないが、体を回復さしてくれるポーションやエリクサーもあるのだから、即死でなければ死ぬ事はない。俺からすれば、傷付く姿を見たくないが、今はそれを言ってもどうにもならないので、全力で倒すことが解決への最善の手段だ。

 ベルゼブブを倒す! 爺神! 見てやがれ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...