ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
743 / 2,518

第743話 まさかのボス……

しおりを挟む
「何で堕天使で続いてたのに、ここに来てお前なんだよ! 俺的にはこの流れなら、堕天使ルシファー的な何かか、サタンだと思ってたのに……ってどっちも一緒か。悪魔系で同じだけど、よりによってその姿で出てくるのは勘弁してくれよ。巨大な黒い悪魔もきつかったけど、お前もきつい」

 部屋の中心にいたのは、ハエの王ベルゼブブだろう。見た目がもうね、ハエ。気持ち悪いくらいにハエ。それに取り巻きに自分の分身みたいに、人間の顔位あるハエがいっぱい飛んでいる。あれって眷属ってことか? ちなみにベルゼブブは目算で3メートル程もあるハエだ。

 蠍とか蛇は大きくても怖いって思うだけだけど、黒い悪魔やハエって大きくなると、怖キモって言葉しか出てこない。あ、でもイビルスパイダーは怖かっただけだな。そもそもクモはキモイっていうより、出てきたらビックリする対象ではあるけど、毛嫌いするほどではなかったせいか?

 妻たちの意見……どうぞ!

「…………」

 黒い悪魔が平気だった妻たちでも、ハエの王ベルゼブブの見た目には、絶句するしかないほどの気持ち悪さを感じているらしい。妻たちの後ろでカタカタ骨が鳴っているので覗いてみると、スケルトンたちまで体を抱いてブルブル震えていた。

 おい! 魔物なのに相手の見た目を毛嫌いするのか? お前たちもホラーが苦手な相手からしたら、大して変わらないからな!

 全体的に気落ちしている俺たちは、お互いを励ましあってベルゼブブを倒す会議を始めた。そしてスケルトン! お前らも慰めあってるのはわかるが、骨同士が肩? を叩いたりハグをしたりするのは、意味が分からんからやめてくれ。

「本当の名前はわからないけど、見た目からしてハエの王なのでベルゼブブと呼称します!」

 ハエの王というのは何となく理解してくれたが、ベルゼブブというのは聞いた事あるが、名前とハエが結び付かず首をかしげていた。

「そう言うもんだと思って。で、ベルゼブブは見た目からしてハエだから、火とか効くのかな? ん~堕天使より強いはずなんだから、ただの火では効き目が薄いかな?

 人造ゴーレムだと攻撃するまで、反応しなさそうだから、動いている所は見れないけど……周りのハエを見る限り、かなり早い可能性があるね。早い魔物っていうと、フェンリル以外に移動が速い魔物って、あまり戦った事あんまりないな。どう対応するべきかな?」

 動きが早い魔物に対する対応は、チェインで組み付いて逃がさないって、意外に思いつかないんだが。アリスが一対一ならそれしかないけど、俺たちは複数なので数で包囲しつつ、殲滅が妥当なのでは? という意見が出た。

 ただ1つ問題があった。天井が20メートル程と制限のある空間なのだが、相手が自由に飛びまわれるという、圧倒的なアドバンテージが向こうにあるという事だ。

 対策をたてようにも、行き当たりばったりな戦闘になりそうだ・・・

 年少組から、部屋が高いなら土魔法で、低くしちゃえばいいんじゃない? という話が出たが、土魔法で無い物を魔力から作り出すとなると、ありえないほどの魔力を使う事になるのだ。

 アースウォールなど、一時的にそう広くない範囲に、壁を作るのはまだいいのだが、周りに利用できるものが無い所で、大きな物を作るのは勘弁してほしいところだ。今回のような広範囲は厳しい……けど、着眼点は良いと思う。

「年少組の意見を聞いて、ちょっと思いついたことがあるから、聞いてもらっていいかな?

 土魔法で壁や天井を作るのは、魔力がいくらあっても足りないけど、結界で行動範囲を制限すれば、戦いやすくなるんじゃないか? 結界の範囲内に入ったら発動して、外に出られなくする感じ。3メートルくらい先に結界の壁があるんだけど、ちょっと殴ってみて」

 シュリにお願いして、殴ってもらった。拳ではなくシールドバッシュみたいな感じで、体当たりをしていた。シュリの攻撃でも耐えれるのは、外から中に入れるが中から外には出られないという条件にして、結界の強度を高めている。これなら多少広範囲に展開しても問題ないだろう。

「結界内は密室みたいな形になるから、広範囲に展開する魔法は使えないね。でも相手の行動を制限できるのはこっちからすると助かるね。一応初手はユニゾンマジックの火と風で魔法を叩き込んでから、範囲内に来たら結界をはって閉じ込めよう」

 その後いくつかの決まり事を決めてから進む事になった。150階でやったように穴を掘って出口を確保しようとしたが、この階は穴を掘る事が出来なかったのであきらめて、上の階で準備していたアダマンタイト板を組み立てる事になった。

 部屋に入ってもハエの王ベルゼブブは戦闘態勢に入っていない。なので、入口を塞ぐようにして休憩所を作る事にした。念のため空気の入れ替えができるように入ってきた通路を使う事にした。

 準備が整いベルゼブブに近付いていく。

「まずは手始めに!」

 魔力を圧縮して、ユニゾンマジックで、部屋の温度が500度ちかくまで上がるくらいの余波を起こした。ベルゼブブの取り巻きは、そこまで強いわけでは無く、あっさりとドロップ品に変わっているのが分かった。けど、あれって何だろうな? ハエの羽とかいらねえぞ?

 油断しているつもりはなかったが、次の瞬間強い衝撃が体を襲った。俺たちの誰にもダメージが入った様子は無かったが、原因が分からず混乱しかけている。

「落ち着け! 全員防御態勢!」

 今すぐ簡単にできる行動をみんなに指示する。やる事が分かると意外と落ち着くようで、周りを見る余裕が出てきていた。

「ベルゼブブがいない!」

 誰かの声がして、ベルゼブブのいた場所を見ると姿が無かった。みんなで探すと、50メートル位離れた、上空に飛んでいた。

「もしかして、あいつが高速移動して体当たりをしてきた? その割には痛くなかったけど……」

 言い終わった瞬間に、俺は吹っ飛ばされていた。やはり痛みはない。けど、かなりのスピードでぶつかられたのに、吹っ飛んだだけだった。だけど、分かった。あのハエがぶつかったのがわかった。

「みんな、痛みはないけどめっちゃ速い!」

 誰も反応できていない。気付いたら取り巻きの眷属も復活しており、集団で襲ってきていた。

「「「「「「キャァァァァァッ!」」」」」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...