ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第700話 苦行が続く

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 魔物の数や魔物の強さは高くなっているが、俺たちが苦戦するような事もなく、1日平均3~4階ペースで降りる事が出来ている。

 現在10日目朝、31階に到着している。移動自体は大したことではないのだが、ずっと変わらない洞窟型のダンジョンで、敵も増えるし強くなるが変わり映えがしないため、若干嫌気がさしている。

 ブラウニーたちなんか、移動中に馬車の中で寝るかみんなで遊んでしまうくらいだ。

「帝国の騎士って、こんなダンジョンで良くレベル上げしてたよな」

 と漏らした所、リンドから言葉が帰って来た。

「シュウ、まだ10日しか経ってないわよ? ヴローツマインのダンジョンの中には、1ヶ月とか平気で同じフロアに留まり続けるパーティーだって、珍しくなかったわよ?」

「そういえば、そんなことも聞いた覚えがあるな。良く飽きずにダンジョンにこもってられるもんだな」

 そういうと姉御組と年長組の2組から、若干冷ややかな目で見られることになってしまった。それで俺が喜ぶような性癖はない!

「シュウ、冒険者と呼ばれている人たちが何でダンジョンにもぐったり、魔物を討伐したり、素材の採取に言ったりするのか分かってる?」

「そりゃ、お金のためだろ?」

「分かってるじゃない。お金のため、生きていくためにはお金が必要、っていう事だよ。シュウの感覚がずれているから忘れているかもしれないけど、普通のパーティーは私たちみたいにお金が潤沢にあるわけじゃないんですよ?」

「そういわれるとそうか、ダンマスの能力があるせいでお金に困ったことが無いから、普通という考えがすっぱり抜けてたな」

「シュウの事を聞けばわからなくもないけど、ちょっと飽きっぽいわよ」

 リンドに言われて渋々頷くが、俺の視線の先には馬車がある。

「シュウ君、ブラウニーと一緒にしちゃだめですよ。あの子たちは精霊なんですから、人間と同じに考えてはいけません。

 それに本来あの子たちは一つの家に住み着くのが普通なのですが、何の因果かシュウ君の関係する場所には行きたがるし、シュウ君のいる所ならどこでもいい感じですからね、これは異常な事ですよ」

「あいつらは、俺のダンマスの力によって召喚されてるから、普通とは違ってもおかしくないと思うけどね。この世界で生きるためって言われてもね、俺は今回チビ神に乗せられる形でダンジョンに来てるからな、あんまり実感がないと言うか、元から無いと言うべきか?

 それにさ、俺はもう生きるために稼ぐ必要がない位、お金を持っているのも問題かもしれないね。DPも不労収入があるし、1日のDPだけでも1年間は遊んで暮らせるからね」

「シュウ君! 何にしても気を抜きすぎは、良くないですからね!」

 お姉さんキャラと言っていいのか、ミリーに言われると何故かすんなり受け入れられる部分があるので、俺って年上好きだったのかな?と思う事が度々ある。

 同じ年上のカエデやリンドに同じことを言われても、ピンとこない事が多いので、年上だからという事ではないだろう。ミリーは言い方が優しいからかもしれないな。

「了解! ふぅ、気を入れなおすかな。歩きながらで良いから聞いてくれ。10階・20階・30階と継続ダメージの入るフロアだったから、10階毎にあのフロアが存在すると思う。

 だんだんダメージが増えているから、注意してもらいたい。特にブラウニー! 聞いてるか? 多分、この中で一番撃たれ弱いんだから、危ないと思ったらすぐに言うんだぞ! 31階以降も油断なく行こうか」

 21~29階と大して変わりのない、31階のダンジョンを進んでいく。

「それにしてもこのダンジョンが何で、王国のダンジョンより攻略しにくいんだろうな? チビ神の話だから全部をうのみにできないけど、たったこれだけなら大したことは無い気がするんだけどな」

 俺がブツブツ独り言を言っていると、

「シュウ君、このダンジョンが150階まであるとしたらまだ2割しか攻略できていないんですよ? それなのにすべてを判断するのは良くないですよ」

 ミリーにたしなめられてしまった。でも本当に何故こっちのダンジョンの方がクリアしにくいか意味が分からないのでつい口に出てしまったのだ。

 シュウは分かっていないが、本来ダンジョンのエリアが入れ替わるシステムのダンジョンが、こんなに簡単に踏破できるものではないのだ。まだダンジョンの途中であるため強い魔物も出てきていない。クリアするのが困難な理由は51階以降にあるのだ。

 ダンジョンのエリアが入れ替わるシステムを理解して、入れ替わった先までわかるシュウは、時間がかかっているが着実に階を進んでいく。

 あれから1週間、特に何が変わるわけでもなく、朝起きてダンジョンを進み野営してウィスプ召喚して眠るという、精神的にこたえる作業的にことをこなしていた。

 現在いるのは、50階に入る階段の最後の段だ。

「ん~、10、20、30、40のダメージの推移から考えるとダメージが跳ね上がってる感じがするな。だからと言って問題にはならないけど、このまま続くとブラウニーたちには、厳しくなるダメージになるかもな。

 回復魔法の使える魔導具があればいいんだけどな。クリエイトゴーレムでためる魔力だと、どうしても回復魔法を発動させられないんだよな」

 理由は分からないが、魔法の中で回復魔法だけ魔導具として再現ができていないのだ。再現できた魔法の魔導具も、実際に自分たちで使う魔法の効果より大分落ちてしまっているので、実用化はされずにお蔵入りになっている。

「まだ大丈夫そうだから、今回は問題ないだろう。魔物も強くなってきてるけど、苦戦するほどの敵じゃないから50階はそのまま進もう。

 俺は移動中に回復魔法の使える魔導具ができないか、考えてみるから基本的な指示は、リンド、君にお願いする。そもそも、俺が指示する事って多くないからな。もし判断に困るようなことがあったら言ってくれ。一緒に考えよう」

 ダメージが増えたトラップの50階を越えていく。ブラウニーたちはムズムズがたまらなく、笑い転げていて緊張感が無かったけどな。
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