ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
672 / 2,518

第672話 脅し後、閑話

しおりを挟む
 路地を確認して進んでいく斥候の後ろから少し距離をおいてついていく。

 人気が無くなった事を不審に思った斥候が、キョロキョロしだしたので、一気に距離を詰めて背後から一気に押し倒し、うつぶせの状態にして上から踏みつける。

「俺をつけていたようだけど、何の用だ?」

「……何の話だ?」

「勇者のパーティーの一人だな。話をしていた場にはいなかったが、姿を隠して近くにいたのは、分かっている。隠してもためにならないぞ」

「勇者のパーティーの一員と分かっていて、こういう事をしているんだったら、問題になるけどいいのか?」

「そっか、勇者の威光を借りるのか? ここは王国ではなく中立地帯だぞ。無理に勇者の威光を使おうとすれば、中立地帯を敵に回すことになるぞ。それでもいいのか?」

「中立地帯とはいえ、一般市民と勇者のパーティーのメンバーでは、天と地ほど違いがあるぞ。それでもいいのか?」

「あくまで何もしていないと、しらばっくれるわけか。じゃぁ別にいいわ。次に俺たちの事をつけまわったら、命の補償はしないぞ。いくら勇者のパーティーのメンバーとはいえ、非合法に情報を集めるのは、良くないよな。

 勇者のパーティーメンバーに、しっかりと伝えておいてくれよ。勇者込みで十二人いるんだったよな。全員の顔は分かっているから、気を付けた方がいいってな。もし、非合法の輩に依頼した場合は、報復するかもしれないから注意してくれよ」

「いくら何でも……命をとるだと!?」

「お前さ、よく考えてみな。斥候のお前に気付かれないで背後をとった俺は、俺のパーティーでは攻撃や壁の担当だぞ。

 そんな人間が、一般人だと思うのか? 冒険者でも上位の人間だとは、思わないわけ? それと、俺の悪口は言わない方がいいぞ、聞かれた時点で死ねない事を、後悔するくらいの地獄を味わう事になるからな」

 こう言っておけば、馬鹿な事はしないだろう。勝手に向こうがシングルの冒険者と勘違いしてくれるだろう。冒険者ギルドにはAランクで登録が残ってるはずだから、問題ないと思うけどな。

 シュウたちの誰も知らないが、シュウのパーティーはダブルの冒険者に指定されている。正確にはダブルに有無を言わさず、強制的にあげられており、特定の条件下では、災害級の危険人物と記されており、その時はトリプル以上の危険人物指定されている。

 特定の条件下とは、自分たちに害をなした時の反撃が苛烈を極めると。冒険者ギルドの極秘情報書には、今までのシュウたちが起こしてきたトラブルが書かれている。

------------
 初めに、フレデリクの領主とのトラブルがあり、その際に領主館に突入をして騎士団の人間を戦闘不能にしている。この時、騎士団長は手足の骨を折られ、引きずられて領主の部屋に連れてこられたらしい。

 領主だったメルビル男爵は、回復魔法をかけられながら、部屋の中にあった物をぶつけられていたとの事。ナイフやフォーク、ペンが体に刺さっており、噂ではスプーンまで刺さっていたらしい。

 次に冒険者になって半年も経たないうちに、Sランク魔獣のフェンリルをシングルパーティーの援護を受け撃破。注意書きで、シングルパーティーを援護して、ではない事に注意、と書かれている。

 その後は、フレデリクとリーファスの戦争に参加して、両方の街を傘下に収めた。その際に用いた戦力は三十人程度だった。

 ギルド長の出した指名依頼先で、国王からの命令を受けた、通称暗殺部隊(シュウたちは奴隷兵と呼んでいた)に、襲撃される。それを難なく撃退した。

 フレデリクに戻って来たところで、再度暗殺部隊に襲われ、辛くも全員を殺して撃破。フレデリクで襲ってきた暗殺部隊は、一人ひとりがシングル級の冒険者に匹敵する実力があったらしい。四十人規模の暗殺部隊を退け、樹海に向かった。

 樹海に着いた後は憶測になるが、樹海の魔物を駆逐しながら中央にある山の近くまで進み、フレデリクにいた時から、魔法技術に優れていたパーティーであったため、時間をかけて開拓したと思われる。そこに人を集め街を作ったようだ。

 街の名前はディストピアと言われているが、名前以外何もわかっていない。

 理由はよくわからないが、帝国とも戦争をしたようで、奇襲による電撃作戦で帝都の城を半壊させ、屈服させている。

 気付いたらゴーストタウンという、樹海の中心の山の中に街を作っており、そこでは国、種族、問わずに色々な取引がされている。噂では、魔物も一緒に住んでいると言われている。

 以上他にも色々な逸話があるが、ダブルにするのに何の問題も無いと思われる。トリプルの話は、全部が自業自得であるため、いくら要請があっても指定はしないようにしてください。
------------

 要点だけをつまんで説明した紙だけで、冒険者ギルドの評議会の人間が全員賛同して、シュウはSSランクの冒険者になっていたらしい。

 話は戻り、足で踏んでいる斥候を解放して、早く消えるように伝えてから、三人の待つ店に向かった。

 俺がつく頃には注文も終わっており、すでに食事が届いていた。三人は甘い物が食べたくなったようで、色々なお菓子を注文したようだ。ジャルジャンもこういった嗜好品ができているんだな。前に来た時は屋台が多く、他は飯屋のような所しかなかったのにな。

 それにしても三人は良く食うな。自分の身体じゃなくて、ドッペルの身体だから太る事もないし、いっぱい食べているんだろう。俺もガッツリ食ったけどな。

 シルキーやブラウニーのお菓子に劣るけど、美味い。作り始めたばっかだと思うのに、こんなに上手い物なのだろうか? ブラウニーがレシピとか配布してたりするんだろうか?

 何となく気になって、マップ先生を見てみると……おかしな状況になっていた。

 どんな状況か簡単に言えば、勇者のパーティーのメンバー十人が、ほぼ同じ場所に重なっていて、瀕死になっていたのだ。二人の勇者にボコボコにされたのは、間違いないと思われる。何でボコボコにされたのかは、よく分からないけどな。

 俺がダンジョンマスターだって、バレなかったな? もしかしてばれてた? いや、バレてたらもっと違う反応になってるよな? って事は、ドッペルに憑依していたから、ダンジョンマスターと分からなかったのかな?

 魔物へは強くなるけど、魔物と判断する目は無いってことか? ちょっとドッペルの有用性が広がったな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...