ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第660話 スカーレットのお菓子

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 俺の食事が終わると、片付けが本格的になる。と言っても、全部収納系の道具の中か、ブラウニーの固有スキル【メイドの嗜み】の中に、しまわれていくだけだ。収納系の道具、異空間への収納道具は、他の収納アイテムの中に入れることができた。

 今まではあまり意識せずに、収納系の道具を中に入れて使う、と言うことはしていなかった。間違って収納の箱のついた荷車を収納して気付いたのだが、収納のスペースは箱の大きさしか必要ないので、異空間の中に異空間を突っ込むことができたのが、ビックリだったのだ。

 今まで知られていなかったのは、ここまで多く収納系の道具を所持している、人や団体がいなかったので試したことが無かったのだろう。馬車という荷物を積む物を、収納の道具にしまうと言う発想が無かったのだ。

 でも、これは広めるのは良くないかもな。その収納系の道具が盗まれたらどうにもならないし、リスクを分散するという意味では、分けるのがベターだろう。

 それはさておき、どうやら変な事を考えている間に、すべてが終わったようだ。俺が飯を食べ終わって5分程の早業だった。

「みんな、通路に向かう扉を作るのは、一五二階に作るから降りるよ」

 俺の指示に従って、全員が移動を開始する。シルキーやブラウニーは、戻るという事が分かって、いったん仕事を切り上げていた。

 物珍しそうに周りをキョロキョロして、ダンジョンの壁をペチペチ叩いている奴もいた。ダンジョンに入ってずっと、俺たちのために色々しててくれたからな。自由時間は久しぶりだろうから、何も言わないでおこう。

 遅れるブラウニーも出てくるので、そういった者はスケルトンに捕まって、連行されている。骨に襟首をつかまれて、運ばれているブラウニー、シュールな光景だ。

 階段を降りてのんびりと進んでいくと、コアルームに到着する。

「このコアは回収して、俺の元のコアとつなげれば……問題なさそうだな。で、ここに穴をあけたから、ここに埋め込む扉を作っておこう。

 こっちからは無制限に通れるけど、向こう側からは俺たち以外通れないように、クリエイトゴーレムで細工をして……壊されることを考えると、総アダマンタイト製で作るのがいいかな。DPはたいしてかからないからな」

 扉のサイズを決めて、蝶番やネジもサクッと作成する。設置をするのにかなりの魔力を使ったが、これだけしておけば壊すことはできないだろう。

 そのまま扉を抜けて地上への通路を進んでいく。歩くのはさすがに面倒だったので、馬車を出してウォーホースに引いてもらう。

 後ろを歩いて付いてくるスケルトンたちを見て、頭のいい骨系の魔物なら、疲れを知らずに働いてくれるし、寝る必要も無いから労働力としては、ゴーレムより上かもしれないな……大量に使役ができるならだけど。等と考えていた。

 Sランクに相当するスケルトンなら、馬車をひいても時速二十キロメートルを超える速さで、引いてくれそうだな。俺でもひけるけど、問題は疲れるという事だろう。体力が無限にあるスケルトンには、持久走ではかなわないだろう。

 改めて考えると、勾配的には五パーセント程の坂道を、時速二十キロメートルほどで走っているウォーホース、やべえな。原付一人乗りに匹敵するかもしれん。

 登るまでに距離にして一〇〇キロメートル程あるので、通路を抜けるのに五時間程かかってしまった。途中で行楽弁当のような物を食べている。スケルトンは一生懸命走ってついてきてくれるんだけど、食事も必要ないので、命令に従って地上まで頑張ってついてきた。

 おやつの時間になる頃に地上についた。間に合わせで作った洞窟にでた。

「ここもこっちから入れないように、細工しておかないとな。あっ! 俺がここにいる事がばれるとまずいんだった。じゃぁここから魔導列車までの通路を掘って、埋めればいいか」

 DPを操作して通路を作り、のんびりと進んでいく。魔導列車の準備がされていたので、みんなで乗り込んでいく。今日はこの電車の中で一晩過ごして、朝にはディストピアだな。

 夕食まではまだ時間があるから、のんびりとソファーでくつろいで、神のダンジョンの事を考える。

「そういえば、神のダンジョンを踏破したけど、何か達成感が無いな。ダンジョンの踏破って、こんなもんなんだろうか? 今までは奪取する目的があって、踏破してたから達成感があったけど。今回は何となくきて、最後がグダグダだったからかもしれないが、達成感が薄い」

 他の冒険者は、こんな感じなのかな? 死ぬ思いをして、ダンジョンのボスを倒してもドロップだけなら、危険度とドロップによる収入を天秤にかけて、自分たちに向いている場所を選んでも、おかしくないよな。

 シングル以上の冒険者は、何か自分たちなりの理由があって、冒険者を続けているのだろうか? 今度、ケモミミ三人娘に、何を目的に冒険者をしてたのか聞いてみようかな?

 俺が冒険者を始めたのは、こういう世界に来たなら冒険者をやらないなんて! そんな強迫観念に近い何かが、俺の心を支配して選択肢は無かったからな。結局、冒険者として活動していた期間なんて、短かったよな。すべては国王の所為だったな。何か考えてたらイラついてきた!

「こんな時は、甘い物を食べよう!」

 シルキーは、自分たちの砦と言わんばかりに、魔改造をしているキッチン車両を占領しているので、その車両へ向かう。

「スカーレット、いるか?」

「はぃはぃ、どうなさいました?」

 ふよふよと俺の前まで飛んできた。

「ちょっと甘い物を食べたいんだけど、何かないかな?」

「そうですね、この前試作して美味しかった、とっておきのお菓子がありますよ。飲み物も準備しますので、食堂車で少しお待ちください」

 スカーレットが美味しかったって、自信を持ってるお菓子か……それはさぞかし、美味いんだろうな。しばらく待っていると、スカーレットがお菓子と飲み物、紅茶を持ってきてくれた。

「ん? シュークリームか?」

「そうです! 色々試してみました。ちなみにこれに使っている生クリームは、樹海魔牛の乳を使っています」

「あれ? それって魔物なのに食べれるの?」

「気付きましたか。魔物なのに、美味しいミルクを出すんですよ! ミルクは子供を育てるために出すので、おそらく毒素が無いんです。それなのに魔物の性質なのか、美味いミルクを出すんです!」

「ちなみに、そのミルクが安全だって証明は、どうやってしたんだ?」

「死刑囚を実験体として、二十人位使いました。誰一人死ななかったので、毒が無いと判断して飲んだら、美味しかったので、料理に流用しました!」

 スカーレットが、食べれない物を出すわけないから、本当に上手い物なんだろう。だから意を決して口に運ぶ。

 サクサクの生地の中に、濃厚なミルクの味! その中にほのかに甘い、王蜜だろうか? なんだろう、完璧と言っても過言ではない、完成されたお菓子の一つがそこにあった。
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