ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第647話 予想以上に厄介な敵

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 ダークナイトとの戦闘が開始された。

 聖銀を使った武器は、アンデッド系や闇系の魔物に有効なのだが、今ままでは必要性を感じなかったため、使っていなかった。だけど、ダークナイトを相手にするのであれば、有効な武器を使うのが、戦闘をするために必要な事だろう。

 俺は聖銀を使った、ガントレットとメイスを装備して、盾をかまえる。

 みんなが装備を変えている間に、一当てしておこうか。意識をこちらにひくために、声に挑発のスキルを重ねて、

「お前の相手は俺だ!【スマッシュ】」

 俺たちは、普段前衛戦闘系のスキルを、あまり使わないのだが、普通に攻撃するよりダメージ倍率が高いので、何となく使用してみた。

 普段から前衛戦闘系スキルをあまり使わないのは、一部のスキルを除いて、発動すると自分の意志ではなく、何かに強制的に動かされて、スキルが発動するのだ。対人戦では、命取りになる可能性が高く、それに慣れてしまうと、攻撃が単調になってしまうからだ。

 ただ、浸透勁に関しては、条件が相手に触れる、という部分をクリアしないと発動できないので、強制的に動かされてという発動方法ではない。

 それに対して今使った【スマッシュ】は、前衛の武器攻撃職の、基本スキルでノックバック付きの強撃だ。スキルに付随している効果は、うまく当てなければ意味がない事が多く、【スマッシュ】のノックバックは、盾で防がれると、完全に無効化される。

 では、何故このスキルを使ったかというと、通常攻撃よりも単純に、ダメージを与えられるからと思ったからだ。

 これが持っている武器が、剣だったら【スマッシュ】は使っていなかっただろう。メイスによる【スマッシュ】だから、衝撃によるダメージを与える事が出来ると考えている。

 とはいえ、鎧の魔物にダメージが入ったかなんて、すぐは分からない。

 俺のメイスが、【スマッシュ】に加速されて、ダークナイトの盾を強打する。その際の音は、元の世界なら、製鉄所等で巨大な鉄板を作る際に、大型の機械で叩く時の様な音がした。

 ダークナイトの盾も、俺のメイスも特に変化は見られていない。

 ダークナイトは、俺の攻撃を受け切った後に、反撃を仕掛けてきた。右の足元から左へ切り払う斬撃を、仕掛けてきている。狙われた左足をひいて、かわそうとするが、斬撃の軌道が変化して、ふりぬいたと思ったら今度は、切り上げてきた。

 剣の軌道に盾を割り込ませた。タイミングを合わせられなかったので、はじくだけに留まる。

 その後十合位打ち合うと、他のメンバーの準備が整ったようだったので、近付いてきているのが分かる。俺は、メイスで強引に殴りつけ、ダークナイトが盾で防ぐと同時に、死角から回り込み左ひざに攻撃を加える。

【チェイン】

 攻撃したついでに、強引に俺に意識を向けさせるために、チェインを使用して、みんなが背中から攻撃できるような、位置取りをする。

 俺の意図を理解したのか、アリスが大剣を振り上げて強烈な一撃をはなった。

 アリスの攻撃は、ダークナイトに届く事は無かった。これは正確に伝えていないな。ダークナイトは、俺のチェインの影響を振り切ったのか、アリスの方を向き綺麗に攻撃をはじいてしまった。

「アリス! 回避しろ!」

 綺麗にはじかれてしまったため、アリスは体勢を崩してしまっている。アリスの攻撃に合わせて、バックステップをしていた俺は、ダークナイトの攻撃に間に合わない。

 ダークナイトの攻撃が、アリスの左腕をとらえ、防具を三割程切り裂いた所で攻撃が止まる。

 シュリが間に入り、ダークナイトの剣をはじいて、盾で強打をして、少し吹き飛ばす。シュリは流れるように、距離を詰めて回し蹴りを繰り出し、盾で受け止めたダークナイトは五メートル程飛ばされる。

 ダークナイトを、自由にするわけにはいかないので、

「シュリ! リリー! シャルロット! 俺でダークナイトを囲むぞ!」

 俺の指示に従って四人で、左右前後に位置取り盾をかまえて、逃がさないようにする。囲んでいる間に、ピーチがアリスの回復を行っていた。

 二の腕の肉を骨近くまで切られ、かなりの血が流れているが、動脈は切られていなかったため、噴き出すほどの血は出ていなかったのが救いだろう。これが腕の内側だったら、アリスは戦闘に復帰できなかった可能性もある。

「みんな、こいつはヘイトが管理できない可能性が高いから、チェインとか挑発には頼らないように」

 最初の攻防からは、考えられないほどの動きがよくなっている。クソッ! 騙されたな、俺たちは四人でダークナイトの攻撃を防ぎ、攻撃を受けていないメンバーが攻撃を仕掛ける。

「攻撃に参加していないメンバーは、動きをしっかり見ておいてくれ。前衛陣は交代で前に出てもらうよ。後衛陣は、みんなの動きに合わせて攻撃をしてくれ。難しいかもしれないけど、ダメージソースを増やさないと、きりがないからな」

 十分程タンク陣で、ダークナイトを攻撃する。ファイアナイトと違い、反応も早く三方向からの攻撃でも、対処して見せる事があった。

 感じた事としては、とにかく視野が広いという事だろう。盾に隠れて見えない部分は除き、見にくいヘルムをかぶっているのに、後ろからの攻撃に対応するとか、マジで勘弁してほしい。

 HPが減るたびに、強くなっている気がしなくもないけど、どうなんだろうな。

「そろそろ交代するよ。シャルロット、リリー、シュリ、俺の順で交換する」

 前衛陣が俺らの代わりに入ってくる。アリスは傷が癒えたようで、すでに戦線に戻ってきていた。

 今戦っているのは、アリス、双剣のチェルシー、タンクのメルフィ、斧槍のクシュリナだ。

 盾が無くても、攻撃のさばき方が上手い三人と、タンクのメルフィは、安定して攻撃をさばき、隙をついて攻撃をしている。

 後衛陣はただそれを見ているはずもなく、ヒーラーは、ダークナイトが闇系の魔物なので、範囲指定の聖属性のフィールドを作り、弱体化を図っている。

 弓に関しては、聖銀製の矢に雷付与を施し、隙を見て高速で撃ち出している。貫通させることが目的ではなく、この世界では破矢はやと呼ばれる、矢の先に鏃ではなく、拳半分程の重りをつけた矢で攻撃している。

 普通なら全身鎧の敵に対して、弓矢の攻撃は無意味に近いのだが、今回は一番ダメージを与えている。

 特に弓使いのニ人が構えると、包囲網を突破してニ人を攻撃しようとするくらい、危険を感じているようだ。ニ人の前には、護衛役としてタンク装備の、誰かが張り付いている。

 戦闘開始から四十分が経ち、再び俺の出番が回ってきて、ダークナイトを取り囲んでいる。

「メアリーとマリアを中心に、攻撃をしていくけど、一度囮を頼む。シュリが間に入って移動を止めたら、俺が後ろからスキルを叩き込むから、シュリはフォートレスで動かないように固定してくれ」

 作戦を伝えてタイミングを見計らう。
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