ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第611話 大人げなく本気を出す

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 ダンマスのスキルを使って、このダンジョン内に声を届ける。

「みんな、時間になったから探しに行くよ!」

 初めは、しらみつぶしに探していくしかないかな。索敵の感度を高くしてから、魔力を体に巡らせて森の中を駆け抜けていく。そこまで広くないダンジョンなので、一人位はすぐに見つかると思ったが、三十分経っても誰の反応も見つけられなかった。

 これはどういう事だろうか? 規則性なく走り回ってるから、先読みなんかはされていないと思うけど、見つけられない理由が分からない……

 索敵の感度はそのままに、走りながら考え事を始める。

 三十分走り続けているのに、五十メートルまで接近した子たちが、一人もいないのは明らかに不自然だ。なら、絶対に何かしらの理由があるはず。

 立ち止まって、近くの十メートル位の木に登り、天井を見る。天候をダンジョンに反映させてるが、天井自体が無くなっているわけじゃないので、必ず天井は存在する。

 下で拾っておいた石を、上に向かって投げる。ニ十メートル位だから、地面から天井まで三十メートルほど、くぼんでいる所でも、最大四十メートル位だろうか? それに天井にいれば、木に登った段階で分かるだろうけどいない。

 木から降りてまた走り出す。

 可能性としては、俺を何らかの方法で認識して、範囲内に入っていないか、単純に走ってるだけでは、五十メートル以内に近付けない位置にいるか……となると地面の下だな。

 穴を掘るのは禁止していないし、土木組の考え方としては、穴を掘る地面を盛るのは、常套手段だろうしな。五十メートルも潜ってるとしたら、どうやって探せばいい?

 いくつか穴を掘って探しては見たが、開始から一時間経っても誰一人反応がない。何か決定的な間違いをしているのかもしれない。

 地面の下というのがなければ、何かしらの方法で、俺の位置を把握しているってことになるわけで、マップ先生は使用しない約束だから……索敵に引っかからない……

 下位精霊を使った、魔法か何かか? 中位以上の精霊は索敵に引っかかるんだけど、下位の精霊は索敵に引っかからないんだよな。理由は不明だけど。

 その中でも見つけにくい風精霊が、俺の事を認識してる可能性が高い? 精霊魔法は、俺もよくわかってないから何とも言えんな。精霊を潰さんといかんか? とはいえ、精霊は簡単に倒せるもんじゃないからな。

 よし、ダンジョンの中心に行って、結界を徐々に小さくしていけば捕えれるだろうか? ニ十分ほどかけてこのダンジョンの中にいる精霊を、全部中心に閉じ込めた。大分魔力を使ってしまったので、ポーションで回復してから再度探しはじめた。

 それから十分、開始から一時間三十分やっと索敵に反応があった。土木組の四人だ。十分程善戦をしたが、俺に捕まってしまった。

 開始から一時間四十分で四人捕まえた。後八人がラインか、頑張って捕まえないとな。

 それからニ十分、誰も索敵に引っかからなかった。

「俺の運が悪いのか? それとも精霊以外の何かで、俺の事を認識しているのか? 困ったな……探知結界はさすがに、マップ先生と同じだから駄目だよな。さてどうするか?」

 これ以上無暗に探しても見つからないと思い、とりあえずお昼を食べながら、いくつかの方向を検討していく。十分ほど悩んではみたものの、いい案が出なかったので、あまりやりたくなかった方法をとる事にした。魔力を手に込めて、イメージを加速させる!

【アースクエイク】

 棒RPGで出てくるような、地面が隆起するような規模ではなく、俺が行ったのは単なる地震を起こした程度のものだ。発動した次の瞬間に、俺から三時の方向に魔力反応、七時の方向でちょっとした悲鳴が聞こえる。

 魔力反応は俺の魔法に対抗するために、防御結界みたいなのを張ったのだろう。年少組のチームがそこにいるはずだ。悲鳴をあげた方は、距離的には遠いけど次は聞こえないかもしれないから、こっちを優先しよう。

 七時の方向に体を向け、正真正銘の全力疾走を森の中で行う。

「みーつけた!」

「シュウ様ずるい! みんな逃げる準備をしよう!」

 俺に見つかった土木組の子たち四人は、戦闘態勢になり逃げる算段をし始めた。ここで最低でもニ人は捕まえておきたいな。俺が捕まえようと移動を始めると、四人が魔法を使い始めた。

 みんな同じ魔法? んっ!? 発動が速い! 魔力を感じて警戒をしていると、予想以上に早く魔法が発動したので隙を与えてしまった。

【ピットフォール】

 落とし穴かよ! みんなが逃げる前に、穴から出ないと! ってこの穴深すぎだろ。俺は落下を始めた体を、五メートル程先にある壁に向けて、風魔法で撃ち出す。

 壁に到着する前にナイフを取り出して、強引に壁に突き刺し、これ以上の落下を防いだ。土魔法で足場を作り一気に駆け上がっていく。

 逃げていく四人の影を、辛うじて捕える事が出来た。逃げた方向に向かって全力疾走し、ニ人を捕まえた。こんなに早く脱出するとは思ってなく、少し油断していたので簡単に捕えれた。

 残りの人には警戒をされて、逃げられそうになったが、スピード勝負になれば俺の方が有利なので、捕まえる事が出来た。

 この時点で開始からニ時間三十分……あとニ時間。ペース的には文句はないが、残りの四人はどうした物だか。何が俺を認識する要になっているか分からないので、隠形をしてみる事にした。使う事のない忍び系スキルも覚えており、久々に使用してみる事にしたのだ。

 あまりスピードを出すと、隠形の意味がなくなるので、若干焦れる気持ちを抑えながら、移動していく。日本にいた頃の事を考えたら、普通に走るくらいのスピードで移動しているのだ。

 その速度で三十分程走り回ると、ニチーム分の人数を索敵で感知した。向こうはまだ気付いていない。視認できるところまで移動して、様子を見ると警戒しているようだが俺に気付けていないため、少しリラックスしている印象だ。

 年少組の四人と土木組の四人が一緒にいるな。後四人……木の上から襲うか。

 八人の上まで移動して、自然落下にまかせて八人の真ん中に着地すると共に、魔法を発動する。

【アースウォール】

 全員を土の壁の中に閉じ込めた。近くにいたニ人を捕まえると、大きな音が聞こえる。良く見るとシェリルがシュリみたいな力技で壁に穴をあけていたが、土木組の残りニ人は突然の事で、硬直していたのであっさりと捕まえる事が出来た。

「十ニ人捕まえた。鬼ごっこは終わり。みんなおつかれ! 入り口に集合!」

 捕まったのが全員土木組のメンバーだと知って、土木組の子たちは、みんなショックを受けていた。さすがに年少組のみんなと土木組のみんなでは、訓練している時間が違うんだからしょうがないと言って、頭をなでくりまわす。

 その後は夕食になるまで、色んなことをして遊んですごした。
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