ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第593話 シュウ、心を痛める

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 レイリーが入った穴の中に俺も入っていく。入った先では、戦闘はほとんど行われていなかった。というか、戦闘を行えるだけの兵士が、門の中にいなかったようだ。多分魔法中隊の火にあぶられて、重傷を負っていて出てこられないのだろう。

 さて、どうするべきか? すぐに敵兵士の治療をするわけにもいかないしな。元気になって攻撃されても困るからな。痛みを抑えれるような感じの魔法薬は……Eランクくらいのポーションで問題ないか? 応急処置的な感じでなら、Eランクで十分だろう。

 その辺のランクのポーションは、スキルをあげるために全員で作ってた時の物が、まだまだ大量に残っているのだ。途中で全員で作るのをやめたので、これ以上のものとなると一気に数が減ってしまう。

 門の守備隊長みたいなやつを探して、連れてきてもらう。すぐに見つけたシュリが俺の近くまで連れてきて、シュリとアリスが腕を抑えている。怪我してるしそこまでする必要なくね? 気にしたら負けだな。

「俺達がここに何で来たか、知ってるよな? 今さっき入ってきた人間が門の前で、理由を言ってたはずだが……お前達は帝国に住むのに、皇帝の言葉に従わないのか? それとも街と一緒に死ぬ覚悟があるのか? 理由を聞かせてくれ」

「俺は自分の街を守りたいだけだ! お前たちが街の中に入ってくれば絶対に略奪をして、男は奴隷、女は慰み者、子供は使えないと判断されれば、殺されるのだ! それを防ぐために、俺は戦っている!」

「ふ~ん、お前たちがどこまで知っているか分からんけど、お前たちの街の他に、七個か八個の街が俺の街であるメギドに攻めてこようとしている。そしてそれは皇帝によってしてはならないと、勅命が出ているんだがしっているか?」

「どこかの街を攻めようとしているのは知っていたが、勅命の事は初めて知った」

「門の守備隊長クラスには知らされてないのか。どうでもいいか。そっちがどう思おうと勝手だが、俺たちは俺たちの街を守るために、この街の上層部を入れ替えるつもりだ。

 略奪や奴隷落ちとかにして、人のいなくなった街を支配して、何が面白いと思う? 住人の力も借りて上層部を捕えようとしている俺たちが、住人をないがしろにするわけないじゃん。この街を滅ぼすだけならこんな面倒なことしないわ。よく見ておけよ」

 門の外に引きずり出して、魔力を大量に込めたファイアボールを作り出して、平原のど真ん中に撃ち込む。

 そこで起きた惨事をみて、守備隊長は絶句している。

 力を抜けたのを見て、シュリとアリスに離すように合図を送る。しばらく愕然としていたが、シュリとアリスが少し離れると、剣を抜いて俺に切りかかってくるが、剣を持っている腕をとり、背中を強く打ちつけるように投げ落とす。

「お前の腕じゃ、ここにいる誰もケガさせられないよ。それに俺を殺した所で、今さっきの魔法を使える魔法使いが、少なくとも四人はいるんだけどな。

 以上の理由で、わざわざ手間をかけて制圧するのに、後々問題になるようなことするわけねえだろ! それにな、もし今の剣で俺に傷一つでもついてたら、この街が一時間後には更地になってる可能性があったぞ。命拾いしたな」

 一生懸命息を吸おうとしているが、呼吸ができていない。苦しそうな顔で俺の事をにらんでいるが、それは筋違いってもんだ。お前の街の領主に恨み言は言ってくれ。

「お前さん仲間を助けたいのであれば、これ以上俺たちと敵対しない方がいいぞ。殺すつもりもないが、あまりに度が過ぎると、俺たちも我慢の限界があるからな。これ以上敵対しないなら、城門の上で苦痛に声をあげている奴等の、痛み位は抑えてやるぞ」

 葛藤している顔をしているが、最後には仲間の命をとったようだ。

「これが、痛みがひくポーションだ。これで回復するのは火傷とかによる痛みだけで、無理をすれば体にさわるから気を付けるように言っておけよ。傷を治してやったのに襲ってくるなら遠慮なく殺すからな、ニ度目は無いぞ。

 上層部を全員捕えたら治療してやるから、怪我人は一ヵ所に集めておけ。住民の中に紛れ込ませている兵士がいたら、すぐに出てくるように言っておけよ。門で宣言した通り、かくまっていると判断したら、関係ない住民がいてもあの魔法をその区画にぶち込むからな」

 青い顔になってそんなことをさせまいと、無傷の兵士に指示を出している。他にも比較的に元気な人間を選んで、ポーションを城壁の上に運ばせている。早めに対応してやらんと部下たちが苦しむだけだぞ。

 対応を終わらせて街の中を進んでいく。群衆の中で縛り上げられて放置されている人間を発見する。この区画に潜んでた兵士だろうか? 暴行を受けた形跡はないがまるでミノムシだな。

「レイリー、ここの住人たちは協力してくれたから、後で何か報酬を出そう。地図に番号を書いた紙を準備するからメモっておいてくれ」

「了解です」

 DPでこの街の地図を召喚すると、カスタマイズで区画ごとに線の入っている地図を出すことができた。そこに番号をふってもらいレイリーに渡す。

 しばらく進んでいると、ほとんどの区画が兵士を捕えるのに協力してくれている。そして、協力せずに気付いていたのに放置していた区画がニつあった。一つは、士官クラスの奴が、住民を切り付けていたのだ。

 単なる屑なので、そのまま当身で気絶してもらった。でも気絶しながらゲロを吐くって器用だな。気管に詰まるぞ? その原因を作った張本人は、自分は関係ないと言わんばかりの思考だった。

 切り付けられた住人の内三人が、もうすでに死んでいた。

「シュウ様。気に病むことはありません。悪いのは全部ダギアの領主です」

「わかった。怪我をした人の手当てをしてくれ。レイリーちょっといいか?」

「了解です。怪我人の治療をしながら、周囲の警戒をして待機!」

 中隊長たちに指示を出したレイリーが、俺の方へ来た。

「気にしすぎない方がいいですよ。シュウ様の優しさは毒にもなりえるので、限度が必要です。どうしましたか?」

「死んでた三人は、あそこで泣いている奥さんと子供の父親たちだよな?」

「おそらくそうだと思います」

「後でいいから、名前と家の場所聞いておいてもらっていいか? それと、当面の生活費に変わる何かを渡しておいてくれ。ゼニスに後で何とかさせる」

「シュウ様の御心のままに」

 最初に否定しておきながら、俺のいう事をすぐに実行に移してくれるレイリー、有能だな。

「よし! 気を取り直して、こんなバカげたことは、一刻でも早く終わらせよう。多少強引にでも終わらせる!」

 ついてきていたハクに、士官クラスの奴を従魔たちが守っている門に運んでもらった。
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