ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第570話 一一七階にあったモノ

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 呪われているかもしれない、宝物を手に入れてから一夜が過ぎた。俺たちに特に何も変化も無く過ぎている。鑑定やダンマスのスキルを使って調べてみているが、呪われた形跡は今の所ない。これからも無いと願いたいところだ。

 荷物を管理してもらっていた人造ゴーレムにも、特に変わった様子は無い。体に使っている金属が呪われていた、という事も無く問題は無かった。

「収納のカバンに入れている間は、呪われる事は無いかな? 念のために人造ゴーレムに持たせておくけどな。さあ、一一六階の先には何があるのかな? みんな行こうか!」

 みんなに声をかけて、ボス部屋の出口らしき場所に向かって進んでいく。

「おぉ! でかい扉だな」

 遠目から見てもでかいとは思っていたが、扉の天辺は七メートル位上にあるんじゃないだろうか? それに横幅もそれに見合った大きさで、十メートル位あるんじゃないだろうか?

 これって開ける時に、負荷のかかる機構ってどうなってるんだろうか? DPで生み出した扉だと、そういうの無視されたりするのかな?

「どれだけ重いか分からないけど、誰かあけてみたい人!」

「「「はいっ!!!」」」

 予想通りで三幼女が手をあげて、自分たちが開けるとアピールしているので、任せることにした。

「三人に扉明けを任命する! 罠って事は無いと思うけど、十分注意を払うように! ピーチはいざという時のために待機。状況によってはフォローをするように」

 三人が位置に着くと、一生懸命押し始めた。ファーブニルであまり魔力を消費していなかったため、朝には完全回復していた魔力を使い切る勢いで、能力向上に魔力に注いでいる。

「開かないな、何か縛り付ける場所があるから、実は引くタイプの扉かな?」

 そんなことを言うと、三人がむくれてポカポカ俺の事を叩いてくる。

「ごめんごめん、わざとじゃないんだって。扉って言ったら押して開けるイメージだからさ、扉の床についている取っ手に気が付かなかったんだよ。準備するからみんなで、左右の扉を引っ張ってみようか」

 クリエイトゴーレムを使い、腕輪の中に入れておいたミスリル合金を取り出してワイヤーを作る。先端はカラビナをくっつけているので、引っかけるだけだ。

「繋げたからみんなしっかり持ってくれ。渡した手袋をつけてからだからな!」

 みんながもったのを確認して、掛け声をかけて引っ張る。予想通り開いてしまった、シェリル・イリア・ネル本当にすまん。

「かなり重たかったですね。何か他にあける方法でもあったのでしょうか?」

「このサイズだから純粋に重いだけだと思うけどな。でも、下手したらここまで来れて、ファーブニル倒せても扉をあけれなくて、帰らざるを得なくなるパーティーもいるかもしれないね……もしかして最終試練的な感じで、この扉があったりしないよな?」

 思いついた嫌な予感を頭をふって否定する。

「何があるか分からないけど先に進むよ」

 扉の中は暗くて明るい所から入ろうとしている俺たちからは、扉を開けて少し差し込んでいる光が、映し出す入り口部分しか見る事が出来ない。

 警戒しながら進んでいくと、大きな部屋に出た。五階毎にあった、エレベーターの設置されている部屋と同じ構造の部屋だ。

「最後の一個のエレベーターは、やっぱりこの階にあったんだな。何というか、最後の最後に一一五階にしなかったことが、キレイにそろっている数字を崩されたようでイラっとするわ!

 本当にこのダンジョン作った奴殴りてえ! けど、この先を確認しないで、地上に戻るのは良くないよな。先に階段を降りてから、少し先の階を覗いて戻ろうか」

 俺の意見にみんな頷いてくれているので、そのまま進んでいく事が決まった。

 一一七階にあたる階に降りて、初めて目にしたのは縦横三メートル程の扉だ。そしてその扉には文字が書かれていた。

「…………」

「シュウ君、この模様がどうなさいましたか?」

 呆然としていると、ミリーに問われて我に返る。みんなを見ても、何で俺が固まっているか分からない様子だ。あれ? みんなにはこの文字が読めないのか?

「みんなには、これが読めないのか?」

「え? これって文字なの? どう見ても意味のある模様には見えないんだけど」

 カエデは首をひねりながら、俺に真剣な顔をしてみている。

「本当にみんなには、模様に見えているのか。これって今まで意識してなかったけど、あのチビ神がくれた【自動翻訳スキル】のおかげなのかな? 一応ここには」

 扉にはこんな風に書かれていた。

『ここまで来れた同郷の人たちにお願いがある。私の遺産であるこのダンジョンの上にある街が、滅びない限りダンジョンを壊さないでほしい』

『おそらく一一一階以降に降りてくるためには、勇者の称号かダンジョンマスターである、異世界から呼び出された人間がパーティーにいないと無理だろう』

『ダンジョンを壊さないでほしいというのは、このダンジョンは、世界の理のちょうど境界線にあるようだ。

 神に反逆し自分だけに生まれた、ユニーク称号【堕天使】を持っている時に作ったダンジョンは、コアを壊されると復元されずにそのままの形で残るようだが、このダンジョンはダンジョンマスターのスキルで、保護されていないと崩落してしまうのだ。

 本来なら崩落しないように作るべきだったのだが、つい調子に乗ってしまってね。ここまで読んでもらえばわかる通り、僕の生きた街が残っているのにダンジョンを壊すと、その上に住んでいる人たちが全員死ぬ事になると思うので、壊すのはやめてほしい。それともしコアを壊してしまった場合は、崩落する前に自力で脱出する必要があるので、気を付けてほしい』

『壊さないでほしいと言っているのに、気を付けてほしいというのも変かもしれないけど、よく考えてから行動してほしい』

『ここに来た同郷の人間が、賢明な人であることを祈っている。』

『念のためにこの扉に【自動翻訳スキル】にだけ反応する言葉を残します。』

 あ、自動翻訳スキルがないと読めないんだな。最後に書いてあるとかやらしいな。

「何かまとまっているのか、分からないような文章で書かれているけど、こんなふうに扉には書かれているな」

「この模様って召喚された、異世界の人間じゃないと読めないってことですよね? もしこの世界の人が降りてきたらそのまま、ダンジョンコアをとって崩落したかもしれませんね」

「有用なダンジョンは、資源として有用だから残すと思うけどな。こいつの望み通りダンジョンは、残しておこう。もともと奪取するつもりだったしな」

 文字の書かれた扉を開け中へ進んでいく。
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