ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第548話 話が進まない……

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 のんびりとした一日が過ぎて、メギドを出発してから十一日目の朝がやって来た。

 太陽の出る時間あたりになると、城壁の上から声が聞こえてきた。何て言っているか分からないけど、魔物の領域に昨日までなかった道ができていれば、そりゃ誰だって驚くわな。

 この道を確認しに来るために、何者かが派遣されてくると思う……後の事を考えると、元々ある道を使ってドーンボーンに入るのが良かった気がする。三日間不便な思いをすれば、何とかなったわけだし。

 朝食が終わる頃に索敵に反応があった。妻たちも気付いたようで荷物をしまい警戒をする。索敵に引っかかったってことは五十メートル以内に、何かが近付いてきているという事だ。

 城壁沿いとはいえ、森の中という事もあり五十メートル先を、視認できるほどの隙間は無い。二十五メートル位まで近付いてきたら、おそらく何かは見えるのではないだろうか?

 お互いが警戒した状態で、十メートル程距離を置いて対峙している。相手の隊長っぽい人が前に出てきて、

「我々は、ドーンボーンの兵士だ。抵抗せずに連行されてはくれないだろうか?」

「俺たちは、中立地域にあるディストピアからの冒険者のシュウだ。このまま抵抗せずに連行されてもいいけど、それには条件がある」

「いいだろう、その条件とやらを教えてくれ」

「こちらに一切の危害を加えない事、こちらの装備や備品に確認後一切手をふれない事、連行される先は全員が同じ場所で留まれるような広い空き地である事。武器の帯剣を認める事。

 この四点が今思いつく範囲の条件だ。あ、取り調べを行う際も他の人間から見える位置、俺らが留まる空き地で行ってくださいね」

「一個目と二個目は妥当だな。だが三・四個目の条件は厳しいな。こちらにも危害を加えるつもりは、今の所ないが空き地に留まらせるという事は、監視の数が非常に多くなりこちらも困る。武器を持たれても管理に困る。

 小グループに分かれてもらいこちらの管理する建物の部屋に留まってもらうというのはダメだろうか?」

「小グループに分かれるというのは飲めないですね。こちらには戦闘に向かない仲間もいるので、その者たちが孤立させられるのも、俺たちが離れ離れになったり、帯剣が認められないのは不利になる事も飲めない条件だ」

「しょうがない。だけどよく考えるんだぞ。実力行使で捕らえても問題ない状況で、ここまで譲歩しているのだ、ここらへんで手を打とうとは思わないのか?」

「下手な脅しだな。今連れてきている兵士で、森の中にこれだけの道を作って来た俺たちを、実力行使で捕らえられると思っているのか? それに、兵士の隊長格から出た言葉ってことは、ドーンボーンの街の総意って事になると思うが、その辺は問題ないのか?」

「…………」

「俺たちは、今の所何の違法行為も行ってない。昨日の水魔法のドラゴンだって、そっちには全く被害を与えていない、やった事と言えば魔物の領域に道を作っただけだ。そして魔物の領域はどの国の物でもないので、道を作ったことによる不利益があったとしても、被害を与えた事にはならない。

 この状態で連行される意思はあるのに、譲歩できないから実力行使となれば問題は多いぞ。もし俺たちが領主を捕えられるだけの力があれば、ドーンボーンの街が俺の物になるってことだからな」

「街の中には入れられん。どういう素性の者たちか分からないのだから、それは承知してほしい。本日午後早い時間に話し合いの場をここで設けるので、そこで色々を決めたいと思うが問題ないか?」

「街の中には入れないのか、どこにいても変わらんから一緒か。後でよろしく。ここに来る時は、絶対に武器向け無いで来てくれよ。今度は攻撃するからな。初回だったから様子見ただけだから、そこの所よろしく」

「……了解した」

「少し時間が空いたから、のんびりしてようか」

 することが無くなったので、みんなでのんびりすることにした。

 時間通り昼食を食べてからしばらくしてから、兵士と文官の一団が到着した。何か偉そうなのもいるな。その隣にいる、デップリした奴が話をしてきた。

「お前がシュウか? まだ若造ではないか。それにしてもこんな所で会談させるとは、どういう要件だ?」

「……ここで話し合いを設けるって言ったのは、そっちの方なんだが?」

「なんだお前? 口答えをするのか?」

「これは俺を怒らせて何かをさせようって、魂胆の人員か?」

「貴様! 私に向かってその物言いはなんだ! ここで叩ききってくれる!」

 腰に帯剣していた剣を抜き、俺に切りかかって来た。俺は動くことなくその場で立っていた。シュリが盾と剣を取り出したのが分かったからの対応なんだけどな。

 シュリは剣を弾く時にフォートレスを使ったため、デップリした奴は手が痺れて剣をとり落した。

「そこの偉そうな人、この場で剣を抜いたのはドーンボーンの総意と受け取るがいいのか?」

「そんな事は無い、こいつの独断だ。ドーンボーンは何も関与していない!」

「その割には、こいつの行動を止めようとしなかったのはなんでだ? やっぱりトラップ要員で連れてきたってことか?」

「トラップ要員というのは意味が分からないが、行動を止めようとしなかったのは、これが言っていたように、こんな所で会談をさせるのは、どうかと思うので様子を見ていた」

「それはそっちの兵士が出した条件だろ? 俺に言われても困るのだが?」

「それはそちらが出した条件の所為だ。空き地で全員同じ場所にいさせることや、身分も分からない人間に武器を持たせておくことは、認められるわけないだろう。ここに来る際に武器を納めるというのを飲んでいるのだ、私たちがこれだけ譲歩しているのに何か文句でも?」

「ん~じゃぁどうすればいいんだ?」

「小グループに分かれてもらい各々からの事情聴取と、武器の帯剣は出来ない事を飲んでもらえるならなんの問題も無いのだが?」

「小グループはこっちでメンバーを決めて分かれても大丈夫か? 事情聴取は一人ひとりか?」

「メンバーはそちらで決めてもらってもかまわない。事情聴取は一人ひとりの予定だ」

「一人ひとりの時に、俺たちの誰かが中を覗くことは可能か?」

「それは出来ない」

「そっか、その中で何が行われるんだろうな。一人ひとりの事情聴取は認められない。そっちに有利になる情報を、そっちで選べるのだから飲めるわけがない!」

 それにしても、何でこんなに面倒なことになってるんだ? 先が思いやられる。

 しばらく睨み合いをしてから、偉そうな奴が一つ提案をしてきた。

「これではお互い平行線なので、金銭による身分保障をしてはどうですか? ドーンボーンで認められている物なのだが、どうかね?」

 あからさまに怪しいよな。金になるモノの代用だったらいいか?

「それじゃあ、俺たちがここに作った通路の権利を身分の保証にしようか」

「確かにドーンボーンへ来る通路が増えるのは悪くないですね、ですが金銭での補償しかしていないので、代用は難しいですね」

 ますます怪しいな。というかメンドクセー! この街って日本人が作ったと思うけど、今管理してるのが屑っぽいからどうにもならんか。

「というか、会談しに来たのに、何で金で身分保障の話になってるんだ? 別にここで話できるんだから問題ないだろ?」

「……身分保障がないのに、会談をするのは出来ない」

 面倒だな。これ払った金を自分の懐に入れるパターンだと思うんだよな。返せって言っても、知らぬ存ぜぬを貫くあれだな。

 実力行使に移るか? 明確に向こうから手を出させるようにしないといけないよな。

 それにしても面倒な奴が多い世界だな……ん? 向こうの世界にもいたかもしれないが、触れ合う機会がなかっただけか? どっちでもいい、何か作戦を考えるか。
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