ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第538話 グリエルの危ない思想

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「グ~リ~エ~ル~」

「シュウ様、今度はなんでしょうか?」

 フレデリクで王国の文官っぽい人と話を終わらせてから、慌ててディストピアに意識を帰還させから、すぐにグリエルのいる庁舎に突撃をかけている。

「フレデリクとリーファスの扱いが決まったから、報告にきたよ~ん」

「何でそんなに緩い感じなんですか? あの二つの街の扱いが決まったのですね。どうなったんです?」

「簡単に言えばメギドみたいな扱いになった! だから壁をまたつくらなきゃいけなくなった! フレデリクまでの地下通路、フレデリクからリーファスまでの地下通路を作って、そのまま壁をさっさと作りに行ってくるけど大丈夫?」

「今の所、特にしてもらいたい事は無いので何の問題も無いですね。それに、ドッペルを置いてあるので、何かあったら意識だけ戻ってきてもらえば、何の問題も無いです。憑依の時に使っているベッド一式は、持って行ってくださいね」

「了解! もう土木組にも準備してもらってるから、みんなで行ってくるわ! 土木組に頼みたいことがあったら戻ってきてからでよろしく。なんかあったらいつもみたいに魔導無線でよろしく頼む」

「街の管理はどうなさいますか? 少なくとも代理を立てないといけないと思いますが」

「そういえばそうだな。任せそうな人材はいる?」

「もちろんです。メギドの時には間に合わなかったメンバーが何名か問題ない状態です。シュウ様がお決めにならないのであれば、こちらで向いているメンバーを送り出しておきます。

 領主以外にも文官として役に立つレベルの人材も、多く確保できているので問題ありません。メギドの方にも送り出しているので管理はばっちりです!」

 相変わらずグリエルは優秀だな! それにしても文官ってそんな簡単に育てられる物なのかな? それともこの世界の文官のレベルが相当低いとか? 人をイライラさせるのは神がかり的に上手いのに、経営については素人なのだろうか? 搾り取るのが上手いだけで、それ以外の事を考えていないのかな?

「多分ですが、シュウ様の考えている通りだと思います。私も、シュウ様に買われるまで、文官として働いていましたが、あれだけの事でよく文官と名乗っていられたなと思います。

 この世界の人間からすると、シュウ様の希望される基準が高いんですよね。ですが、シュウ様の国の教材を使うと、あそこまで効率的に知識を得る事が出来るので、びっくりしています」

「そんなにすごいのかな? 俺の国なら十五歳、この世界なら成人前までに、ほぼ全員が勉強する内容なんだけどね。余分な部分を勉強していないから、あれだけどな。土木組はグリエルたちの教えているやつ以外にも、科学や土木に関する知識も結構勉強しているぞ」

「あの子たちは余計な事を知らないし、勉強するのが楽しくてしょうがないから、真綿が水を吸うように知識を蓄えていきますよね。自分ももっと若ければ! とも思わなくもないですね。子どもたちに勉強する機会を、与えてもらえているだけありがたいですけどね」

「勉強も大切かもしれないけど、今のディストピアからグリエルとガリアがいなくなったら俺が困る! 何でも優遇するから、出て行くのだけはやめてくれ!」

「出て行くも何も、私たちはまだシュウ様の奴隷ですよ、出て行けるわけないじゃないですか。それに奴隷じゃなくても、ここ以上にいい環境なんて存在しませんよ。ちょっと仕事が多いですけどね」

「えっ!? グリエルたちって奴隷から解放してないんだっけ? てっきり解放したと思ってたのに……あれ?」

「解放してくださるという話はありましたが、ずっと断っていましたので、シュウ様は勘違いされていたのかと」

「何で解放されたくないの?」

「理屈とかではないのですが、シュウ様とのつながりですからね。無くなってしまうのが寂しいんです。ちょっと、その反応は酷くないですか?」

 何となく身の危険を感じてしまい、身体を抱いて隅に逃げてしまった。

「いやさ……だって……」

「そういう意味じゃないですってば! 私には最愛の妻に子どもたちがいるんですから! 男性をそんな風に見る事なんてありませんよ!」

「それもそうか。でも奴隷でいても解放されても変わらないと思うんだけど……いや、奴隷でいた方が行動が縛られるから、解放された方が良くないか?」

「ん~ディストピアにというかシュウ様の下にいる限りは、特に関係ないと思うので、精神的なつながりのある奴隷でいた方が便利かと思ってたりします」

「自分たちがそれでいいなら、そのままでいいか。でも何かあったら開放するからな!」

「了解しました。ではフレデリクとリーファスに向かってもらうメンバーに準備させておきます。移動にはシュウ様がつかった後の、地下通路を使わせてもらっても大丈夫ですか?」

「あ~大丈夫だよ。綾乃に貨物車を改造してもらって魔導列車も作ってるから、それを配置しておくわ。もしまだできてないなら、移動用の箱を付けた貨物車をセットしておくから大丈夫だと思う。俺は先に出て壁の作成に向かうわ」

「何かあれば連絡しますので、よろしくお願いします」

 グリエルに見送られて、俺はみんなの準備している場所に向かって歩いていく。途中で俺の事を発見したハクが腕に納まり、いつの間にか現れたニコは、俺の頭の上に乗っていた。

 少し遠くから『コーン』ハモって聞こえる鳴き声が……あ、ダマがコウとソウを乗せて、俺の方に歩いてきた。早速コウとソウが先輩面をして、足に使っているようだな。戦ったら圧倒的にダマの方が強いんだけどな、慣れてくれ。

「みんな、準備は終わってるかな?」

 シルキーたちがついてくるのに、年少組と土木組が、お弁当を持った! バナナはおやつじゃないのです! おやつは三〇〇円まで! と、なんだか小学生のピクニックの時のネタをブッ込んできた。こんなベタなネタのマンガや小説って、あったっけ? 本人達が楽しんでいるならいいかな?

「綾乃の魔導列車も大丈夫そうなので、出発しようか!」
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