ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
534 / 2,518

第534話 白いモフモフ現る

しおりを挟む
「Sランクの魔物か、フェンリルとかダゴン君と同等レベルってことか。レッドドラゴンもSランクだったな。グリエル! 脅威レベルは高いから念のため、ディストピアの住人に二十分以内に地下に退避するように伝えてくれ。

 地下の空間を広くしておくか。スカーレット聞こえてるな? ブラウニーたちを連れてディストピアの住人が、出来る限り不自由しないようにしてくれ。俺たちは迎撃に出るぞ。四大精霊も連れて行こうか、あいつらの結界も便利だからな」

 移動速度を考えると、フェンリルみたいな四足獣ってところかな? 空は飛んでいないみたいなので、地面を走るタイプの魔物であることは、間違いないけど……さすがに亜人系の魔物で、Sランクでもこの速度で走り続けるのは無理だよな?

 モフモフだったら、何とかして従魔にしたいところだな。隷属でもいいんだけど、モフモフは隷属で縛って使役するよりは、自分の意志でついてきてもらいたいところなんだ。

 俺はディストピアの住人が地下に避難している間に、住人からしたらどうでもいいようなことを考えていた。長年いきたレッドドラゴンを倒した事による心理的な影響なのか、Sランクの魔物が近付いていると言われても、思った以上に焦る自分はいなかった。

「ご主人様、どんな魔物が来るにしても、木々で遮られている状況は良くないと思うのですが、このまま戦いますか?」

「そこまで考えてなかったな。ディストピアから一キロメートル離れた位置から、一キロメートル程の森を地下に押し込んで上に地面を作ろうか。そうすれば対応しやすくなるでしょ。一キロメートルで足りなかったら四大精霊にエリアを作り替えてもらえば大丈夫かな」

 ピーチにつっつかれたので、ちゃっちゃかと迎撃準備を始めて行く。

 相手が分からないので、俺の装備はタンク型の装備をしている。大型のカイトシールドと少し大きめのメイスを装備している。鈍器は基本的に粘液系の魔物以外にはダメージを与えられるので、相手が分からない時なんかは重宝するのだ。

「ご主人様、後二分ほどで森を抜けてくるそうです。皆さん戦闘準備を。タンク組は前に、射程に入ったらスキルを使ってヘイトを稼いでください」

 体をほぐしながら、まだ見ぬ魔物を待っていると、森から白い物体が飛び出てきた。ちょうど俺に向かってくるようなコースだと思う。俺の立ち位置は陣営の中心あたりだ。

 俺の前にシュリがいて横に並ぶようにタンク組がいる。今回は、リリーのお爺さんのレイリーも参加している。綾乃は自分を守る術がないので、人造ゴーレムに指示を出してから後方に下がっている。

「来たぞ! 何か白い、四足獣が来たな。それにしてもはやいな。シュリ、そのまま初撃を受けてくれ」

 俺の指示に従ってシュリが前に出て、挑発を行いヘイトを稼ぎ攻撃を受け止めようとしている。が、ここで予測不能の動きを白い四足獣がとる。白虎みたいな感じだな、見た感じフェンリルより大分小さいけど、普通のトラよりはかなりでかいな。

 予測不能の動きをしているのに、俺はシュリが前にいるという安心感で、どうでもいい事を考えていた。

「ご主人様! 危ないです!」

 嫁の内誰かの叫ぶ声が聞こえた。俺は慌てて現実に意識を戻して、白い魔物を目で捕らえる。あれ? シュリを迂回して俺に向かってきてる? シュリがチェインを使い物理的に引っ張っているのに、止まる様子を見せず、俺に突っ込んできているのだ。

 俺は慌てて盾を構えて、フォートレスを使用して攻撃に備える。

 俺の死角から攻撃しようと回り込んだコースを取ろうとしていたが、俺のフォートレスに阻まれコースを俺に向けてきた。

 前足による爪撃を受け止めると、周囲に嵐のような突風が吹き荒れた。風をつかさどる魔物か? 一撃で倒せないと思ったのか、両前足で連続で爪撃をしてきた。白い魔物が爪撃を繰り出すごとに、空気が一ヵ所に集まっていく。

「ヤバい! みんな、衝撃に備えろ! どのくらいの規模になるか分からないけど、空気が爆発するぞ!」

 忍者マンガにあった、小さな台風を手に作る術みたいな感じで、一点にドンドン空気が吹き込んでいく。白い魔物の攻撃を受けていると、魔物の後ろからシュリが近付いてきて、持っていた盾でシールドバッシュをして魔物を吹き飛ばす。

 その瞬間に一点に集まっていた空気が解放される。俺も三十メートルは吹き飛ばされたが、防御体勢をとっていなかったシュリは、俺の倍以上吹き飛ばされていた。頭ではシュリが大丈夫だと、わかっていたが体が勝手に前に進んでしまっていた。

 俺が白い魔物のスピードについていけるわけもなく、一方的に攻撃をされているが、フェンリルほど早くないのか、何とか攻撃は防げている。体の動きが思考速度に追いつけずに、何とか防いでいる感じだ。反射をあげるのであれば……体に雷付与をすれば何とかなるのでは?

 魔力を練り全身に雷付与をしたうえで、肉体活性にも魔力を注いでいく。世界がゆっくりになっていくのが分かる。何とか防げていたのが、ある程度余裕をもって防げるようになってきている。

 妻たちも攻撃をしているが、早すぎて遠距離攻撃は当たらない。最初の攻防で攻撃魔法や矢は飛んでこなくなった。魔法は行動阻害系の魔法、デバフを中心に行っているが、ほとんど効果が見られない。

 さらに加速していく意識の中で、魔導無線機から声が聞こえる。ダンジョン監視室からの連絡なので、スプリガンの皆さんだろう。この魔物の正体が伝えられる。

『霊獣 白虎』

 やっぱり白虎なのか、スプリガンの連絡してくれている娘から、他の情報が伝わってくる。どうやら四大精霊とは分類の違う、風をつかさどるモノの様だ。何か俺に都合のいいような形で話が進んでいくな。

 白いモフモフと分かった時点で、かなり従えるつもりでいたので、白虎と聞いてさらにテンションが上がっていく。シュリを吹き飛ばしたが、怪我も無く戻ってきていることが見えたので、意識が一気にテイムモードになっていく。

「みんな、斬撃は無しだ。出血死されても困るから、ボコボコに殴って瀕死にしてから従わせよう。もしダメなら隷属化してしまおう。バザールの様子を見れば、隷属化しても意識が変わるわけじゃないから、最悪それでもいいかな。俺の物になってから色々考えてもらおうか」

 全員の武器が鈍器や刃の無い武器に持ち替えられている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...