ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
524 / 2,518

第524話 試験農場制圧

しおりを挟む
 試験農場に向かう途中、マルチプルサンダースネークを放ち距離を稼いでいると、

「ご主人様、遠目で見辛いですが、あの門壊れそうじゃないですか?」

 妻の中で目のいいメアリーが、フレデリクの街の門の方を見て、俺に話しかけてくる。俺も目が悪いわけではないけど、さすがに遠すぎて見えないので、止まって望遠鏡を使い門の方を見てみる。

「門が歪んでるな。まだしばらくは大丈夫かもしれないけど、そのうち突破されるな。試験農場守り切っても、フレデリクの街が落ちたら意味がないから、応急処置位しておくか。みんなあの門に向かうよ、隊列組んでくれ。

 あそこを応急処置したら、試験農場に向かうからね。壁は壊れてないみたいだけど、身体能力の高い魔物が何匹か、試験農場に入ったから対処しないとまずい。同じエリアに人はいないけど、隣のエリアまで来てるから、あまり時間がない、急ぐよ」

 俺の指示を聞いて、みんなが流動的に隊形を変えて、歪んでいる門へ向かっていく。倒すことは考えておらず、吹っ飛ばしたり麻痺させたりと、行動不能にしている感じで進んでいく。門の二十五メートル前付近まで進んで、扉を埋めるようにアースウォールを使用して歪んだ門を隠す。

「これでしばらく耐えれるだろう、試験農場に向かうよ。もっかい雷魔法使って道をこじ開けるから、また突っ走るよ。多分これで魔力を大分使い切るから、俺の事はあてにしないでくれ。イリアは壁に着いたら穴をあけて、みんなが入ったら閉じてくれ。【マルチプルサンダースネーク】」

 う~む、大量に魔力を吐き出したせいで少し気持ち悪い。戦術級の魔法を三度も使っているのだから、魔力が枯渇してもしょうがない。フレデリクの門は問題なさそうだから、試験農場に急がねば! 魔法は現状使うのはよろしくないので、収納の腕輪から武器を取り出して手に持つ。

 今回出したのは、魔核内蔵型のゴーレムクロスボウだ。今、拠点で使っているドワーフ作のクロスボウの、数倍の威力のある代物だ。ついでに言うと、ボルトをセットするまでをオートで行ってくれる、優れものだ。後は引き金を引くだけで撃てるので便利だ!

 ゴーレムクロスボウは、銃だとダメージ減算があるため威力が頭打ちになるが、クロスボウの形状なら減算がかからずに、クリエイトゴーレムと魔核の力で威力を高められるので、作ってみた代物だ。ボルトは十本入るカートリッジ方式を採用しており、元の世界では再現するのが困難なオーパーツかもしれない。

 俺の活躍は試験農場の壁の中にはいってからだ。それまではみんなの邪魔にならないように、移動するだけだ。みんなのペースについていけているが、結構大変だったりするのを見てクロが俺の下に寄ってきて、乗るように促してきた。背中にはニコが乗っており上空にはハクが追従していた。

「クロ、助かる。ニコ、ちょっとクッションになってくれ」

 クロの背中に乗っていたニコをクッションにして、クロの背中に乗る。そうすると、急にスピードを上げてピーチに並んだ。

「クロ、先にご主人様を連れて試験農場へ! ハクとギン、コウとソウ、ニコもご主人様の事頼みます」

 ピーチに頭を撫でられたクロが一気に加速して、試験農場の壁までの距離を一気に潰し、壁を飛び越えた。何メートル程ジャンプしたのだろうか? 突然の事だったのでたまヒュン的な感覚に陥った。

 でも俺を先に行かせたのは、魔物が人のいるエリアに近付く前に、殲滅しろってことだよな。ゴーレムクロスボウも取り出したことだし、俺は役目をはたそう。

「クロ、向こうに向かってくれ」

 背中を叩いて移動する方向指示する。二枚目の壁を飛び越えてもらう。魔物が何匹か視界に入る。俺たちの存在に気付いたようで、こっちに向かってくる。エリアには四匹が入ってきているようだ。

 クロを止めてクロスボウを構えて、眉間を狙ってボルトを放つ。上手く眉間にあたるわけはなかったが、右目から脳に貫通したようで、即死してドロップ品に変わった。続けて二射三射四射。場所は違うにしても、全部頭を貫通して命を刈り取っていた。

「予想以上に強いな。ボルトが重たい上に、スピードがあるから貫通してしまうのか? 下手な拳銃より命中性能も、攻撃力も上っぽいな。重たい事を除けば十分に使える」

 自分で作った兵器に評価を淡々としていた自分に、若干頭が痛くなった。次のエリアの掃除に行く。大体一エリアに三匹くらいの魔物しかいなかったし、エリアの数も多くなかったので、すぐに掃除が終わった。

 試験農場で人的被害がでなくてよかったよ。俺がクロに乗って近付いたもんだから、試験農場に住んでいる農民さんたちが、めっちゃビビってしまったから申し訳ない気持ちだ。でもすぐに俺だという事が分かったようで、色々話してくれた。

 今の領主はゲスだな。試験農場は守らないのに、食料だけ買い占めようとして兵士を連れてきて、はした金で食料をもっていってしまったそうだ。

 以前に俺が教えていたように、床に穴を掘って一時的に食料を隠せるようにした場所を、しっかりと作っていたようで、自分たちの分は問題なく確保できているとの事だ。

 ゲス領主はどうせここで死ぬのだから、食糧はもらっていく! この金は慈悲みたいなものだ! とか言ったんじゃねえかな? どれだけの食料が盗まれたか分からないけど、後でその分のお金はしっかり回収して、試験農場のみんなに配ろう。

 試験農場にいるみんなには、俺たちが守るから大丈夫だという事を伝えてある。念のためにできるだけ一つのエリアに集まってほしい事を伝えると、素直に集まってくれた。ここに集まっている間の食料は、俺が提供することにしたので、特に問題は無い。

 ついでに休ませている畑の上に、臨時でゲルの様なテントを複数建てている。迎撃に出る会議をしていた所、男衆がせめて見張り位はやらせてくれとの事だったので、急遽櫓を建てて、そこで火を焚けるようにしてある。櫓で交代で番をしてくれるそうだ。みんな頼もしいな。

 一応身を守るために、ドワーフ製のクロスボウを何個か渡しておく。傷つかないでくれよ。

 俺が農民たちを相手にしている間に妻たちが到着して、外周の壁を修復&強化を行ってきたようだ。今夜は長くなりそうだな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...