ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
427 / 2,518

第427話 レッドドラゴン大地に立つ

しおりを挟む
 ニコの頑張りによりレッドドラゴンが地面に降りてきた。ニコの力では翼を切り落とすことができず、限界が来たところで離脱している。どうやら皮膚と筋肉を途中まで、時間をかけて溶かせたようだが、骨は頑丈だったためか溶かせなかったらしい。

 それでも十分だ、一時的にでも地面に降ろせたんだ、こっから先は俺たちの仕事だよな。

「レイリー!」

「お任せください、貴方の相手は儂だ! 全力で来なさい!」

 レイリーは俺の声ですべてを察してくれたようだ。俺は続けて、

「リリー、補助! キリエは二人のサポート! ネルは後方で回復! 他のメンバーは、各自の判断で攻撃、俺はあいつの翼を落とす! ギン、来い!」

 俺はギンを呼んでその背中に乗る。トップスピードだけで言えば、雷付与をした俺の方が早いのだが、持久力は頑張っても勝てないので、ギンに騎乗して機動力を稼ぐ。

 武器は大薙刀に換装して、ギンに指示を出す。レッドドラゴンの周りを走り回り、隙があれば体を駆け上るように指示する。

 クロはギンに注意が向かないように、レイリーの横に並び立って威嚇をしている。クロもギンも成長して今や三メートルを超えるサイズになっている。ドラゴンと比べると小さいとはいえ、その牙や爪は無視できるものではないだろう。

 レイリーに向かってブレスを吐こうとしているのを見ると、ギンが一気に方向を変えトップスピードになる。ブレスを吐こうとしていたレッドドラゴンの背中に到着し俺を降ろすと、行き掛けの駄賃としてニコの潰そうとしていた左の翼の付け根ではなく、右の翼の付け根に噛みついて肉をえぐっていった。

 ニコの溶解液で溶かした分よりガッツリえぐれてるな。相当痛かったようで、レッドドラゴンは悲鳴をあげて体をくねらせていた。

 危うく落ちる所だったが、大薙刀を強引に突き刺して足場を固定した。突き刺したことによってまた暴れたけど、しょうがないよな!

 俺は大薙刀を抜いて、翼の付け根付近まで何とか移動する。レッドドラゴンはレイリーを殺そうとブレスを吐いたり、噛みついたり、爪で引っ掻いたりしているが、上手くかわしているようだ。ここに来てレッドドラゴンが今までと違う挙動をとる。

 ブレスの時は大きく息を吸っていたのだが、今回は大きく息を吸うわけではないのにブレスを吐くときに近い動作をしている。何かあるよな?

 時間が経つにつれて魔力の高まりを感じる。Sランクの魔物らしく、膨大な魔力をコントロールしている。これはやばいか?

「全員、全力で対魔法結界! 近くの人間にもかぶるように張れ!」

 魔法全般に効果があるので使い勝手がいいが、効果を絞って使う時よりは脆いので互いにカバーできるように張らせている。俺も念のため対魔法結界を張る。

 次の瞬間、レッドドラゴンから魔力を変換せずに、そのままブレスとして吐き出していた。いわゆる無属性魔法のブレスという所だろうか? 下手にヴェールとかウォールでガードしなくてよかった。

 ブレスのターゲットになっていたレイリーは、キリエの結界と自分の結界にフォートレスも発動して魔力ブレスを何とか防いでいた。

 危なかったな、レイリーに集中してブレスが撃ち込まれたためか、二枚の結界は破られて、最後のフォートレスで何とか防ぎ切ったようだ。無属性魔法は、表現するなら魔法力を使った、物理攻撃みたいなものなので、フォートレスで受け切れたんだろうな。

 ファイアブレスとは違い大量の魔力を使ったようで、若干動きが鈍っている。

 これはチャンス!

 大薙刀に風の魔法を付与して切れ味をあげ、左の翼の付け根を切り付ける! 途中まですんなりと刃が通ったが、ある程度進んだところで、魔物を攻撃した音とは思えない金属音が響いた。

「いった! なんだこれ? めっちゃ硬いんだけど、多分骨だよな? おっと危ない! 落とされるとこだった。切り裂けないなら、叩き折るしかないか?」

 武器を大斧に持ち替えて……大斧なんて訓練以外で使うのは初めてだな。

 大斧は武器の性質上切り裂くというよりは、押しつぶしたり叩き砕くような効果が高い。レッドドラゴンの動きが鈍っている間に、この攻撃は叩き込んでおきたい。木こりが斧で木を切るような体勢で、火付与を行い純粋な攻撃力をあげて切り付ける!

 金属音が響いたが今度は大薙刀の時の高音ではなく、鈍い音といえばいいのだろうか? そんな音がして、大斧が骨と推測されるうちの三割ほどまで食い込んだ。

「クソが! 硬すぎんだろ、ドラゴンの骨!」

 俺の攻撃でレッドドラゴンがジャンプしたのだ。翼を動かそうとしたが、上手くいかないようでジャンプにとどまったようだ。そのせいで俺は振り落とされてしまった。地面に着地して、

「ドラゴンが飛べなくなったぞ! ジャンプをするみたいだから、立ち位置には気をつけろ!」

 みんなに指示を飛ばしていく。今の所大きなダメージをくらった者はいない。少なくないダメージを負った者はいるが、戦闘を離脱しなければならないほど、傷を負っている者はいなかった。

「みんな、バフの更新をするんだ。この更新でけりをつける! レイリーはそのままタンクを! みんなはレッドドラゴンを削っていくぞ。魔法組はおそらくダメージは見込めないから、補助する形でみんなの支援をするように」

 順々にバフの更新をしていくと、レッドドラゴンの動きが戻って来た。無属性ブレスを吐いてからおそらく二分は経っていないだろう、次にまた吐くかはわからないが目安にしてもいいかな?

 さて、最終決戦と行きますか!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...