ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
322 / 2,518

第322話 正体不明の雲

しおりを挟む
「さて、召喚されたばかりの皆様には悪いですが、今の所分かってる森の北の報告を聞いてもいいですか?」

 俺が報告をしてほしいというと、スプリガンの皆さんがモニターを準備し始める。準備が終わると二人を残して他のスプリガンは、先ほど召喚されてきた仲間を連れて仕事を教えに行くようだ。新しい娘も頑張ってくれ!

 ふと、違う事を考えていると報告が開始された。

「簡単に説明しますと、何も分かりませんでした。調べれば調べる程、不可解な状況としか言えないんです」

 映し出された映像を色々見せられて、唸るしかなかった。

 映し出された映像は、俺らが現地に行ってみた物と一緒だったのだ。街全体どこでも同じ状況だったという事が分かっただけなのだ。

 どこの街も街のどこもでも上から何かに押しつぶされていて、予想される瓦礫の量より明らかに少ない。本当に分からない事が増えたとしか言えない。

「ん~調べれば調べる程分からない事が増えてくか。それにしてもどこの街でも同じ状態ってことは、原因となったもの? この災害を起こした奴? は同一って思っていいんだろうな。

 もしこれを起こしたのが人間だったらダブル以上で特殊なスキルの持ち主の可能性が高いな。魔物だったら。こっちもSSランク以上の魔物の可能性があるか、ファンタジーの世界なら第三の何かがあってもおかしくないけどな。なにせ暇つぶしで神が管理してる世界なんだからな」

 俺は考え事をしながらスプリガンの報告を受けている。初めにDPで掌握したエリア内の街は全部同じだったため、次の街へ走らせている最中だったようだ。早ければもうそろそろ次の街に着くのではとの事だった。

 と話している間にナイスタイミングで鬼人から連絡が入ったようだ。

「ご主人様、異常事態が発生しているようで今それをカメラに収めているとの事です。今その映像をモニターに出します」

 映し出された映像は、俺達が森の中で見たデカい積乱雲が渦を巻いているものと同じだった。

「これって俺達が森の中で遠くにあったのを見たやつだよな、周りはどういう状況なんだ?」

「鬼人族の通信をそのままつなぎます」

 スプリガンの説明補佐をしていた娘が音声を繋げてくれたようだ。

「報告します。現在渦を巻いている雲のちょうど一番端あたりにいると思われます。

 ご主人様の知識にあった台風みたいなものかと思っていたのですが、そこまで風は強くなく雨もほとんど降っていません。おそらくですが、渦の中心まで二十メートルとかそのくらいではないかと思います。私たちが視認してから渦巻いているだけで、多分ですが全く動いていないと思われます」

「台風だったら直径四十キロメートルじゃ小さすぎるよな、かといって積乱雲となると直径四十キロメートルは大きすぎないか? それに、風も強くなければ雨もほとんど降っていないか。この世界で現代知識を当てにするのも間違ってるけど、あてはめれないとなんかこう。モヤッとするんだよな!

 それより普通の雲だったら渦巻いているだけってのもおかしいよな。分かっている異変がこいつだけだから、近くにいる鬼人族を後二から三組程向かわせてくれ。違う角度からの情報も欲しい」

 俺の指示に従って鬼人族に命令が飛んでいく。

「ご主人様、少しよろしいですか?」

「どうしたエレノア?」

「今回の鬼人族は使い捨てを含めての人選なので、一組は中心に向かわせてはどうですか?」

「ん~その予定で召喚しているんだけど、いざとなるとな……」

「ご主人様が、魔物であれ配下の者が無意味に死ぬのは好まれない事は理解しています。でも今この状況で行かせないと、覚悟を決めて調査に行ってくれた配下の魔物に失礼ですよ!」

 エレノアのセリフを聞いてカメラに写っている鬼人が頷いている。召喚されるときに俺の知識を引き継ぐ際に召喚された理由を埋め込まれているためその命令に否はないのだ。

 もし自分たちに何かあっても仲間たちに便宜を図ってくれとの事だった。自分の身を切って仲間たちにってことなのだろうか? 魔物に仲間意識とかあるのか? 俺の知識が引き継がれたからか?

「じゃぁ頼む、一・二チームを雲の中心に送ってくれ」

 俺の指示に従って鬼人族の二チームを派遣することに決めたようだ。命令は出したが無事に帰ってきて来ることを祈った。

 さて布陣は雲の渦の端に三チーム、中心部に二チームの派遣が決まった。

「広範囲に散って街を探していたため集結までには時間がかかりそうです。高位の魔物達は休憩しなくてもいいとはいえ、すでに丸二日間は寝ていないので、今日は休ませて明日から突入という事でどうでしょうか?」

「そうだな、危険な場所に行くんだ万全の状態で行く方がいいな。ゆっくり休んで明日に備えてもらおう」

 スプリガンは、今日はこれ以上進展することはないと判断したようで、もし何かあれば連絡を入れると言われたので監視室を追い出された。

 まぁ追い出す前に香ばしいにおいがしたから焼き菓子か何かをブラウニーが作ったのだろう。俺たちがいては食べる量が減ってしまうので追い出された感じだ。もし話が進展するようなら追い出すことはなかっただろうけどな。本当に甘いものが好きな種族なんだな。

「さてすることがなくなってしまったな。家に戻って猫でもかまおうかな?」

「ご主人様、時間があるのでしたら森にいた時に言っていた人造ゴーレムを見に行きませんか? どうなってるかすごく気になります。うちの猫ちゃんたちはお風呂が好きですから、夜にでもかまえますよ」

「あー人造ゴーレムか、また忘れてたわ。そろそろ見に行かないといけないよな、見に行くのも若干怖いけど。にしてもうちの猫って風呂好きだったのか、日本で猫飼ってた時はお風呂に入れようとしたら、殺されるから助けて! と言わんばかりの声で鳴かれてたからな。今日一緒に入れるか試してみよ!」

 妻たちを連れて人造ゴーレムが訓練しているダンジョンの一角へ向かう事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...