ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
292 / 2,518

第292話 対応会議

しおりを挟む
 王国への報復対応会議は紛糾していた。まぁ紛糾って言ってもニつの意見がぶつかり合ってるだけなんですけどね。

 フレデリクから脱出してディストピアに来たメンバーは、あれだけ俺たちに迷惑かけたのに逆恨みの行動で、更に迷惑を被ったのだから国王は処刑して面倒な奴らもまとめて処分、自分たちに都合がいい者か無害な者にトップを挿げ替えようという意見。

 老ドワーフやリンド等のヴローツマインから来たメンバーと、グレッグやミューズを任せているメンバーからは、重鎮やある程度の貴族を処刑するのは一〇〇歩譲って許可するが、国王の処刑は絶対に行うのは拙いという意見だ。

 このニつの意見が真っ向からぶつかり合っていた。

 前者の意見も後者の意見も俺にはわかってしまう。

 前者は迷惑ばっかりかけられたし、面倒なのでいなくなってくれればいいと思ってしまう俺がいる。

 後者は国王がいなくなると王国が混乱して、さらなる面倒事が増える可能性が高いのだ、分かっていてわざわざ面倒事を呼び込む必要はないという事だ。その代わりに国王の意見に同調した奴らを始末することで、留飲を下げろって言われてるんだろうな。

 ただここで俺がどちらかに偏った発言をすると、すべてがそっちの方向に傾いてしまうため迂闊な事は言えない。だから黙って見守る以外にできないのだ。

「あなた方は私たちの苦労が分からないから、そう簡単に殺すなとか言えるんです! 死ぬ思いをして住み慣れた街から逃げ出して、こちらに何の落ち度もないのに国家反逆罪にされたんですよ? あんな国王は百害あって一利なしです!」

 おぅ、ピーチの言いたい事もよくわかるわ。

「確かに君たちの苦労は分からないが、今の王国の現状で国王を殺すのは愚策でしかないんじゃよ。ワシ等が集めた情報だと、国王はまだ四十代半ばでバリバリの現役なのじゃよ。

 その子供たちで成人しているのがニ十四歳・ニ十歳・十八歳の王子とニ十一歳・十九歳の王女なのじゃ。王女の方は嫁ぎ先も決まっており、その家が王国の軍閥名家なので今国王がいなくなると、五人の子供たちが血を血で洗う争いを始めると思うぞ」

「むしろ私たちにとってはそうなった方が好都合なのですが、何か問題があるのですか?」

 ブラックピーチ、エンジン全開だな。

「一〇〇歩譲って混乱した方がいいとして、君がかつて住んでいたフレデリクだったか? その街もその混乱に巻き込まれてもいいのか?

 あそこはシュウが国家反逆罪で指名手配されてから、王の直轄地になったので否応なくリーファスと一緒に真っ先に標的になるぞ? ミリーの知り合いや、シュウによくしてくれた人だっているはずだ。その街がなくなっても君達はなにも思わないのかね?」

 おぉ、ドワーフの爺さん伊達に歳とってないな! 国が混乱するってそういう事だもんな、ただの飲んだくれじゃなかったんだな。

「私たちの中で、あの街に一番長く住んでいたのは恐らく私ですよね。今の生活が嫌とかではないですが、あの街の人が傷付くのは避けたいです。それが私の本音です、わがまま言ってすいませんでした」

「ミリー、それはわがままじゃないぞ。もしあの街の避けたいのなら、みんなにお願いすればいいじゃないか。俺の妻なんだろ? 他の妻たちにお願いするのは決してわがままじゃないさ」

 俺がそういう風に言うと、年少・年中組はウンウンとうなづいている。年長組は若干渋い顔をしているが、俺が住んでてお世話になった人達がいるのを知っているし、妻仲間のミリーからお願いされたら無下にはできないだろう。

 今回嫁の一人であるリンドが国王を殺さないでくれと言っていたが、確固たる理由がないからただの意見対立になってしまったのだろう。

「みなさん、フレデリクの街を、私の知り合いをくだらない権力争いの犠牲にしないでください……」

 妻たちは何も言わないで泣いているミリーを囲んで慰めるような形をとっている。その中である事に気付いたケイティがボソッとつぶやく。

「フレデリクの街の人を連れ出せば、問題なかったりするのかな?」

 ん? 必要な人だけ連れ出せれば確かに問題ないんじゃないか? できれば満腹亭のおばちゃんは来てほしいな。あの人の料理って不十分な調味料であの美味さだったからな、ディストピアの食材と調味料を使えば、シルキーに匹敵する食べ物ができるんじゃないかと思ってるんだよな。元気にしてっかな?

「難しいかな、一応王国内では国家反逆罪で手配中だし、王国内でどんな情報操作が行われているか分からない以上、迂闊にフレデリクにはいけないです。それより国王を殺さないとなれば、どういった対応をとるのがいいでしょうか?」

 そういえば王国内で俺たちの事どう思われてるんだ?

「そうじゃな、わしならディストピアに手を出そうと考えている重鎮や貴族、軍属の偉い所を切り捨てるかのう? 後は、国王にそれこそ教皇にした以上の恐怖を植えこんで様子見ってところかな?」

「確かに妥当な線かもしれないわね。付け加えるなら、国王の権力がギリギリ維持できるくらいの資金以外は、迷惑料として回収して、国家反逆罪を取り消させて国王の名の下謝罪させる、ってところでいいんじゃないでしょうか?」

「金を回収するのか?」

 お金なら腐るほど召喚できるけど足りてないのか? それにお金を回収すると実力を見誤って王国が混乱しないか?

「そうですよ、お金がなければディストピアにちょっかいをかけられなくなりますし、危ない重鎮、貴族、軍属は処刑するから多少の混乱があっても、国が乱れるほどの混乱にはならないですね」

「リンドの言う通りだろうな。そこまで大きな混乱にはならないじゃろう。ひとまずの方針はそれで問題ないじゃろうから、細かいところを詰めていこうかの。どこまで処刑するかは大切なところだから集めた情報を基に決めようじゃないか。決まっても途中の街で貴族捕まえて情報を聞き出せして修正すれば問題なかろう」

「話はまとまったな。じゃぁ飲んd……おっと、ドワーフの爺さんが集めた情報を出してくれ、俺はそういったのに詳しくないからみんなに決めてもらう事になるけどな」

「おい! お前さん今『飲んだくれ』と言おうとしてなかったか? 『飲んだくれ』というのはな大酒飲みでたちが悪い人間を指すのじゃ! わしはたちは悪くないからただの酒好きな大酒飲みなだけじゃ!」

 一応弁解しているつもりだろうか? 少し疑問になったので頭の中で考えていたら、どんどん話が進んでいっていた。俺がかかわってもいい事ないしみんなには頑張って決めてもらおう。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...