ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第225話 躍進の兆し

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 『宗教の活動は禁止しないが、教義を押し付けたら奴隷落ち』という法を施行してから一ヶ月が過ぎた。

 やはり、ミューズにやってきたバリス教の神官、司祭、騎士たちは獣人を見ると暴力行為をした。街に入る前に何度も説明したのを聞かずに、いつも通りにこの街でふるまったらしい。

 騒ぎを駆けつけてきた兵士に、賄賂を渡してなかった事にしようとしたが、そのまま捕まり牢屋でわめき叫んでいたようだ。恒例のごとく『手を出したらどうなるかわかっているんだろうな!』とか『覚悟しておけよ!』等と言っていたそうだ。

 何故過去形かといえば、もう奴隷になって売っぱらわれたからだ。特に神官や司祭たちは、バリス教の手にわたると面倒なので、奴隷に落としてグレックに送るふりをして始末している。

 もちろん直接的には誰にも手を下させていない。樹海を歩いてグレッグに向かえと命令をして放り出しただけだ。マップ先生で追跡して死ぬ所まで確認している。もちろんこういう殺し方だと犯罪の称号はつかないことを確認している。

 もしもの時のために悩んでいたら、老ドワーフたちがオリハルコンの鉱石を融通してくれれば、かわりにやってくれると言ったのでお願いしたのだ。もし犯罪の称号がついても優遇する事を約束してだ。

 ただ問題もあった。何せ数が多かったのだ。老ドワーフ十人に回してもらって二巡してもらったくらいだ。一ヶ月で二十一件、合計二四五人が奴隷になったのだ。

 バリス教が屑なのかミューズに来る奴らが屑なのかはわからないが、魚人の島で見たやつらと一緒で全員が犯罪称号持ちが多かった。この宗教なんなんだろうな? 犯罪量産宗教な気がしてきたよ。

 自分たちは正義だと思っているから本当に質が悪いよな。別に何を信じようが勝手だが巻き込むのはやめてほしいな。バリスなんて神はいないが神がいたとしてもあのチビ神と同類だからな。

『呼んだ?』

 呼んでねーよ! なんか久々に出てきた気がするな。お前らの準備した世界の大国の一個がめんどくせーんだよ。世界の法則に沿って言えば、ありゃ犯罪国家だぞ。まぁお前らが介入するわけないだろうから、お前らのせいじゃなくて人間の業のなせる業なんだろうな。

『当り前じゃない! 私たちは準備してコマを投入して引っ掻き回して遊ぶのよ! それにしても最近のあんたいい仕事してくれてるわね! 小さな国を作ったような物でしょ! 呼んだ私も鼻が高いわ! ただ戦争が短いのが残念だわ! 気付いたら終わってるんだもの、もうちょっと楽しませてよね! ってことでダンジョンバトルとかもしてよ!』

 お前たちの言いなりになるつもりはねーよ! それよりダンジョンバトルってなんだよ?

『ん? 聞きたいの? 聞きたいんでしょ? どうしよっかな~』

 あっそ、じゃぁ別にいいや。俺には今の所関係ないし、俺は困らんからな~じゃぁまたな。

『ちょっと待ちなさいよあなた! 本当は聞きたいんでしょ? わかってるわよ! ダンジョンバトルっていうのはね、ダンジョンマスター同士が自分たちの持てる力のすべてを出してバトルすることよ!』

 聞いてもいないことをぺらぺらと……それにしてもずいぶん大雑把な説明だな。まぁなんでもいいや、もしダンジョンバトルがあるならその時に何をするかわかれば問題ないわ。せいぜいこの世界を楽しんでくれ、俺は俺で楽しませてもらうさ。一応感謝はしているさ、自由な生活? 何だろうな、向こうの本もゲームも何でもそろう。

『やっと私の良さがわかったのね! 感謝すればいいのよ!』

 はぃはぃ、わかったよ。チビ神様すごいねーかんしゃしてるよーさいこうだー。

『ムキー! 何で棒読みなのさ! もう知らないわ!』

 どうやら行ったようだ。あのチビ神は今日は何をしたかったんだろうな?

 それにしてもダンジョンバトルか。なんかの小説であったやつだと、ダンジョン同士を繋げた制圧戦だったり、ダンジョンを攻めあってコアを制圧したり、ダンジョンマスターを倒したりってあれだろ? それをしたって俺に得があるわけじゃないからな~バカ神共を楽しませるだけなんだろうから放置するに限るな。

 そういえば捕まったバリス教の人間を返せと本国から来たようだが、全員に犯罪の称号があり施行された法律を説明してやったところ、帰って行ったので放置しておいた。そのうちに攻めてくる可能性があるので強化もしておかないとな。

 とりあえず攻めにくくしておくか、久々の土木工事でもしますかな? ってそうなると、俺が領主やってるグレッグも防衛強化しないといけないな。まぁ優先順位はミューズかな?

「という事でみんな! 久々の土木工事に行くよ! 向こうは川とかないよな。溝だけで対応するしかないかな? 本拠地でもないから水の湧き出る魔道具は設置したくないから深めの溝にしよっかね。では魔法組は現地で頑張ってくれ、他のメンバーは護衛だからよろしくね」

 俺らの都合で領主代行をしてくれているヴローツマインの人たちの安全も考えないとな。リンドの連れてきた砦の護衛メンバーを借りるか? 一応領主館には地下通路も作ってあるし、万能なリビングアーマーも設置しているから数名の護衛がいれば問題なく脱出できるよな。

 なんだかリビングアーマーって使いやすいからって、便利に使ってるよな。これでいいのかって思う事もあるけど、便利で使いやすい物って手放せなくなるよね。

 ミューズに移動してからは慌ただしく働くこととなった。城壁の前に大きな溝を掘ってから考えたが攻城兵器の破城槌ならこの対策でも問題ないが、投石器は防げないよな。

 五〇〇メートルくらい離れたところにもう一つ壁と溝を作っておくか、そうすれば時間稼ぎくらいにはなるだろうって思い立ったのでみんなで頑張ってしまったのだ。といっても一週間もかからずに、完成してしまうんだから魔法って怖いよな。

 あらかた防衛強化を終えた所で、マップを確認してもらっていたスプリガンに色々聞いてみたが今の所聖国には動きが無いようだったので、そのままグレッグにも同じ防衛強化をほどこすために足を進めた。

 それから三ヶ月。グレッグでもミューズでも特に何もなく、ディストピアの住人も順調に増えていた。が、俺に少し問題というか大変な事態が起こっていた……
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