ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
191 / 2,518

第191話 迷惑な奴らの結末

しおりを挟む
 窓から飛び出た俺は、先に出ていた従魔たちに周りを守られ、俺の後に出てきた娘たちにさらにその周りを守られた。

 俺は集団戦になると必ず守られる立場になる事を学んだので、魔法で支援する方法をみんなにならっている。娘たちに任せっきりになるのはさすがに気分的によくないので、少しでも娘たちの危険が減るようにできればと思う。

 俺は守られている状況を利用して、マップ先生を確認する。五十m内に敵戦力が約四十人、七十メートル付近に約二十人、合わせて六十人程か。七十メートル付近にいるやつらは、きっと索敵にかからない範囲に待機しているのだろう。俺にとってそんなもの関係ないんだけどな。

 敵の兵士が集まってくる前に一応索敵の範囲外に敵がいる事を伝え、遠距離攻撃に注意するように言う。窓から俺たちと同じように飛び出てきた兵士たちに向けて、

「さて領主と商会長の兵士諸君、いくら上司の命令とはいえ犯罪行為であることは理解しているよな? 今ならまだ引き返せる……と言いたいところだが、今回が初めてという事はあるまい。俺たちを襲ったことを後悔して、犯罪者として裁かれるがいい」

「何を言うかと思えば、笑わせてくれるぜ。領主から娘たちをとらえれば壊れない程度に好きにしていいとの事だ。お前に仕えていたことを後悔させる程めちゃくちゃに犯してやるぜ。お前の前でな!

 まてよ? それじゃむしろご褒美になるか? まぁどっちでもいい、久々の上玉だお前ら多少のケガなら治せるから無力化するぞ!」

 隊長風の兵士が宣言すると周りの兵士が「おぉ~~!!」と叫び声をあげている。こいつら兵士というより盗賊の類だな。しかも娘たちを犯すとか言ってやがるぜ。殺してやろうかな? どう料理してやろう。

 ん? 周りから怒気が感じられる気がする。よく見ると、従魔も娘たちも青筋を立てているようだった。いや娘たちなら犯してやるってところに青筋立てるのはわからんでもないが、従魔よお前らは何に怒ってるんだ? 娘たちへの暴言か? 俺の事より娘達の事で怒る従魔か、まぁ仲が悪いよりはいいか。

「じゃぁ、俺から戦いの狼煙をあげよう。【スタンボルト】」

 スタンガンの対象を指定してその一帯に発生させる魔法だ。もともと近距離用の魔法なので、遠距離で広範囲に発動させようとすれば威力も落ちるし、消費魔力も激増する……が、目の前の雑魚どもの動きを少し止めるくらいは問題なくできる。

 動きの止まった兵士たちを見て娘たちがその隙を逃すことはなかった。前衛陣四人とピーチが一気に距離を詰め、拳をにぎり兵士たちの身に着けている鎧を思いっきり殴り飛ばす。胸の部分が陥没し少しもがいてから気絶した。

 ライムは俺の作った隙の間に魔力を多めに込めた、ウォーターショットガンを家の入口に残っていた兵士たちが向かってくる通路に打ち込んでいた。入口にいた十四人のうち前側にいた兵士七人が、全員体に受けた衝撃で昏倒した。

 最後にメアリーは、弓を取り出しており屋根上にいた四人に、目にもとまらぬ早業で屋根の上から撃ち落とした。

 護衛としてついてきた兵士の残りは七人、外から向かってきた残りは十二人。その内後ろ側に回り込んで奇襲を狙っている奴が八人、外側にいた二十人も一気に距離を縮めてきたな。とりあえず先に屋根の上に登ってきた四人と護衛の兵士七人を無力化するか。

「シュリ、兵士七人は任せた。ライム、メアリーは屋根の上の四人を、残りのメンバーはフォローするように! コウとソウは家の中に入って、領主と商会長が逃げないように確保してこい」

 俺の指示で娘たちは敵に襲い掛かる。七人の兵士はシュリのスキルによってつけられた鎖で強引に目の前まで引きずり出され、フォローに回った娘たちによって意識を刈り取られる。家の上にいた敵は突風にあおられ俺たちの目の前に落とされ、ニコによって締め上げられ気絶した。

 ニコのスペックが相変わらず謎だが、かなり便利なのは間違いない。

 残り二十四人……どうやら不意打ちを仕掛けるようで全員がタイミングを合わせているような気がする。すでに半数以上が無力化されたためか、焦っているようだ。索敵スキルの存在を忘れているようだ。まとめて出て来てもらった方が、あの魔法を効果的に使えると思うから油断を誘わせて一気に来てもらおう。

「みんな、お疲れさま。ちょっと集まってもらっていいかな?(ライム、もうすぐ残りの敵がくると思う。あの魔法の実験に付き合ってもらおうと思うから、敵が見えたらサイレントヴェールを発動させてくれ)」

 サイレントヴェールは、音を防ぐ魔法だ。本来は呪歌と呼ばれる歌や声に魔力を乗せた闇魔法などを防ぐ魔法だ。今回は別の目的で使わせてもらう予定だ。

 戦闘が終わったふりをしていると、娘たちもしっかりとそれに乗ってきてくれる。今から俺が発動する魔法がしっかりと理解できているようで助かる。

 しばらくすると……残りの二十四人がチャンスと判断して、全員が塀や屋根上から一気に突っ込んできた。半数以上を無力化され焦っているとはいえ、本当に全員でかかってくるとは思わなかったよ。

 右手を上げ組み上げていた三種類の複合魔法を発動する。火魔法で爆発音、風魔法で爆発音の増幅、光魔法で閃光、【スタングレネード】を発動する。フェンリル戦で使用したあれを、魔法的に発動させてみたものだ。

 この魔法にあてられた二十四人の敵は、何が起こったかわからず受け身もとれないまま頭から地面に突っ込んでいた。中にはエグイ角度で落ちている敵もいたが、この際関係ないだろう。自業自得だ。

 複合魔法といったのは、正式な魔法名が付いていないためそう表現しただけなのだ。わかりやすいところで言えば、ファイアストームは火魔法だが風魔法の要素を取り込んで威力をあげているので、両属性をもっていれば威力が跳ね上がるのだ。

 ファイアストームは風魔法が無くても発動できるが、火魔法が使えないと発動できないので火魔法として存在している。それとは違い今使用したスタングレネードは、全魔法適正が無いと発動できないため今のところ複合魔法と便宜上付けている。

 おそらく俺かライム以外発動できないのでオリジナルスペルと呼ばれるようになるだろう。なぜ魔法ではなくスペルというのかはよくわかっていない、昔からそういう風に言われているとの事だ。

 全員の動きを封じておこう。手足にミスリル合金で作られた手錠を付ける。魔法を使える敵にはツィード君とシルクちゃんの力作、封魔の首輪を装着させる。さて、この街の警察機構といえばいいのだろうか? それはあてにならないので、中立都市でも力のあるヴローツマインに介入を頼むか。

 リンドに無線で連絡し、ダリアに緊急でヴローツマインから今回の件に対応できる人材の派遣と兵士の派遣をお願いする。

 今回の見返りにワイバーンの番いと卵五個を約束する。ワイバーンは近くの山にいるので捕まえて調教する予定だ。卵は近くの巣にあることをマップ先生で確認しているのでかっぱらってくる予定だ。

 ダリアからは即答で竜騎士十六人とダリア自身が向かう事を決定したようだ。後始末は丸投げしてしまおう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...