ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第147話 ヒキガエル共の爪痕

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 ジャルジャンに戻ってきてから一週間が過ぎた。シビルはというと、倉庫の事務所の横にある空き部屋にベッドを持ち込んでいた。ここまで言えば分かると思うが、住み込みを始めていたのだ。

 簡単な話だよね、毎食美味しいご飯がでるしおやつも美味い、寝に家に帰るのがめんどくさくなり、ベッドを持ち込みを許可してほしいと言われ住み込みが開始された。

 シビルは俺が見込んだ通り、やはり優秀な人物だった。リブロフでいただいてきた慰謝料の商品は半分程の選定が終わったようだ。売る物、残す物、を判別し終わった物の処分も手配済みとの事。シビルの仕事は最高だったが、フェピーからの報告が最悪に近かった。以下の内容が報告で上がってきた。

『リブロフの影響で奴隷に落ちた商人の家族や護衛者の家族の内、八割以上がリブロフの商人に買われてリブロフに連れられて行かれています。奴隷商で、買った商人と奴隷で売られた人の名簿を作成してもらいました。一緒に入れておきますので確認してください。

 後、奴隷商に残っていた人たちとこの街で買われた人達は既に保護しています。すぐにでも前の生活を始める事が出来ますが、奴隷商にいたという事もあり働き口が見つからないため、シビル君が用意してくれた資金を使って、保護している状態です。

 おそらくリブロフから連れ戻れたとしても同じ状況が予想されます。今後、対策が必要と思われます』

 ん~、頭の痛い内容だ。奴隷に落ちた人たちがみんな善良であれば、全員俺の街へ連れて行ってもいいのだがそういうわけにもいかないよな。

 こんな時はハクでも愛でよう、そういえば何処にいるんだろ? この時間はいつも俺の近くで寝てることが多いのに、娘たちに聞いてみるか。自分の部屋から出て誰かいないかを探す。発見したのは、シェリルとイリアだった。

「シェリル、イリア、いいところにいた。ハクがどこにいるか知らないか?」

「『あ!ご主人様!』イリア、ハク見たよ! あっちの方で、シュリお姉ちゃんに怒られてた! なにかね、寝ちゃいけないところで寝てたみたいなの!」

 イリアが元気に答えてくれた。それにしてもシュリに怒られてるのか、ハクさんやあなた一体何をしたんだい? とりあえず、イリアに教えてもらった場所へ行こうか。

 うん、シュリの声が聞こえるね。確かに怒っているけど、きつい感じで怒られている感じではなかった。だって「ご主人様のイスで寝るとは何事ですか!」って聞こえてくるんだもん。後は、「抱き枕にしてもらえるとか羨ましい」とか「膝の上で寝れてずるい」とか言っている……

 これ怒られてるんじゃなくねえか。若干頭痛がした感じがしてこめかみをおさえてしまった。シュリ、抱き枕にしてほしいのか? さすがに俺は年頃の女の子を抱き枕にして自制できるだけの精神は持ってないぞ……

 さすがに声をかけづらかったので、ちょっと離れたところからハクの名前を呼んでみる。すると、キューっと鳴き声が聞こえてきたのでシュリのいるところに向かってみると、怒っている様子もなく隙もなく俺が到着するのを待っていた。

「ご主人様、どうなさいましたか?」

「ちょっとな、フェピーからの報告を受けてどうしたもんか悩んでて、落ち着くためにハクでも撫でようかと思って探してたんだ」

 シュリに話しかけながら、涙目に見えるハクを抱き寄せ撫でる。一瞬シュリが目を見開いたがシュウが気付く前に元通りの顔になっていた。

「フェピー様からの報告は、ご主人様がそこまで悩む内容でしたか?」

「ん~なんて言ったらいいのかな。簡単に言えば、リブロフの件で奴隷になった人たちの八割がリブロフの商人が購入して行ってるんだ。残った二割程の人たちは、元奴隷という事で仕事がね。だから、リブロフから連れて帰れても仕事の斡旋も難しい状況だね。

 脅してもいいから買いなおせ、とは言ったけどね……国が違うと難しいみたいだし。それに、よくわからない人をあの街に連れていくわけにはいかないかなと思って、どうしようか悩んでたんだよ。だからハクでも撫でて癒されようかと思ってたんだよ」

「ご主人様? そこまで気にされる必要はないのでは? おそらくですが、働き口ですら困る人があの街にいって普通に働けるのであれば難しい事考えないと思いますよ?

 それに、奴隷という身分から解放してもらって仕事も住む場所ももらえるのであれば、きっと一生懸命働いてくれます。もし何か不都合があれば、処理すればいいだけでしょう」

 おうふ……シュリが久々に黒いこと言ってる。よく考えたらその通りか、

「それもそっか、悩みすぎてもいいことないな。それよりリブロフの街に連れていかれた人たちをどうするか考える方がいいか。どこにいるかは、名簿で名前をもらったからマップ先生ですぐに見つけられるんだけどな」

「何に悩んでるんですか?」

「いや、だってリブロフの街にいるんだよ? 強引に連れ出すのも難しいでしょ?」

「ご主人様って時々変な所で足踏みしますね。リブロフはライチェル王国の街です。私たちは国家反逆罪として通達が出ているはずです。

 なら国家反逆罪を逆手にとって、リブロフの街に本当の戦争を仕掛けて制圧してしまえば問題ないです。今更あの国に遠慮する必要はないですし、王国が私達の事をはめたので、いちいち宣戦布告する必要もないです」

 あ~そっか、そういえばあの国の王ぶっ飛ばしたいと思ってたんだった。それならあの国の街の一つくらい襲っても問題ないじゃん。

「でも、リブロフの街から買った奴隷だけを連れてくれば、さすがにこの街に迷惑かかる気がするな。とりあえずフェピーに相談してみればいっか。フェピーもリブロフの街に連れてかれた人たちをどうやって連れて戻ってくるか、方法が出せないでいるんだしな」

 シュリから名案をもらった俺は、その足でフェピーの家に乗り込んだ。フェピーは『一応』領主だから気軽に入れる方がおかしいが、シュウはまったく気にしていない。

 フェピーの書斎まで顔パスで入っていくと、苦虫を何匹も潰した顔で見られた。

「よ! リブロフに連れてかれた人たちについてちょっとした案を持ってきた。ついては、フェピーに意見を聞きたいというか、ジャルジャンの街に迷惑がかかるかもしれないと思って相談しに来た」

 そういって話を切り出した。先ほどシュリと話していた内容をそのままフェピーに伝え、街を作っていることまで話した。どこにどうやって作っているかは秘密にしている。まぁ分かった所で簡単にこれる場所でもないんだけどな。

 地下通路がばれてもダンマスのスキルで作っているから潰すのは簡単だ。地下を掘って進むという知識を与えてしまうが、これができるスキル持ちはほとんどいないだろう。できても街までの距離を掘るのに年単位はかかるだろう。それ以前に場所が分からないのに掘る意味があるのかという問題もある。

「シュウ君の言いたいことは解った。結論から言おう。あの街一回潰してくれない? 生活必需品に関しては、問題ないと思うよ。商人たちは、リブロフで手に入ってたジャルジャンの商品が手に入らなくなるなら、この街まで足を運んでくるだろうさ。

 往復の時間はかかるけど、利益率は良くなるから喜んでこっちに来るよ。それに王国の報復の事を考えているのだろ? 樹海近くの中立地域はヴローツマインの竜騎兵に守られてるから気にする必要はないさ。

 この街に戦争を仕掛けようものならAランク上位のワイバーンの飛行部隊が一個中隊程飛んでくるよ。だから気にせず潰してくれ。もしかしたらこっちに移住してくる人も増えるかもしれないしね」

 そこが本音か。住民が増えるなら捨てたもんじゃない。それにこの街からリブロフに行かなくても、ここの商品を求めて向こうから商人たちが来るなら願ったりかなったりか。リブロフにいるジャルジャンの密偵に迷惑がかからないようにだけはしないとな。

 やることは決まったから、計画を立てないとな。さすがに連れてきているメンバーだけで戦争するのは手間がかかるから、直前に向こうに残っている娘たちに来てもらうべきかな?
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