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第120話 苦戦
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扉を抜けて戦闘態勢に入った俺の初撃は、
【アシッドレイン】
から始まった。
奴隷兵たちは、痛みを感じている様子は見られるが、声を上げるほどやわではなかったようだ。騙し打ちみたいな形で先制をとれたのは好都合だった。後ろから来る奴隷兵には、通用しないんじゃないだろうか? そんなこと考えている余裕はないな、今はとりあえず押し切る!
「生かす必要はない、殲滅するぞ」
六人の遠距離アタッカーが、俺に続いて広範囲の魔法やスキルを使っていた。
【アローレイン】
【木精霊魔法 樹木拘束】
【バーストアロー】
【フリーズストーム】
【スーパーセル】
【ウィンドブラスト】
相手がまとまっていた所にこの範囲スキルと魔法が決まったため、南門の外にいた奴隷兵たちは瀕死の状態だった。そこに近付いた近接組が次々と命を刈り取っていく。
次に来るのはおそらく、街の中にいる特別チームだろう。
「シュリ、南門側へ移動。タンク組はシュリを真ん中に左右に2人ずつ十メートル程の間隔で待機。外側の二人は西門東門からの奴隷兵たちを注意しろ。遠距離組・ヒーラーは後方待機、近接は左右に展開、全力で奴隷兵を倒せ。馬車はできる限り離れろ、防衛しきれない可能性が高い。無線で指示するからとにかく離れろ」
馬車は倒した奴隷兵を避けて南の街道を進む。全部の馬車が見えなくなった辺りで、南門から特別チームだと思われる、マップ先生に反応のない奴隷兵が到着していた。
シュリは危険を承知で奴隷兵たちに挑発を行う。
「深夜に人の家を襲うカス共が! この国の王は女性の誘い方が下手だと見える。後悔させてやるからかかってこい」
シュリの言葉遣いが教育に悪いことになってるな。あえて王を馬鹿にすることで、スキル以外にも挑発しているのだろうか? 動きの遅いリビングアーマーが到着するまでは、タンク三人で頑張ってもらおう。もちろん俺も牽制にはいるけどね。
奴隷兵がシュリたちに向かって、ナイフを投擲してきた。俺は即座にタンクたちの前に風魔法の【ダウンバースト】を発生させてナイフを叩き落とす。
弓使いのメアリーとマリアから【スナイピング】が放たれるが、難なくかわされてしまっている。見えにくくするためにツィード君に闇をまとわせてもらったが回避されてしまったのだ。
予想以上に厄介な相手だな。魔法による攻撃も、キャンセルされたり相殺されたりしている。こいつらもダンジョンの恩恵をもらっているなら、魔法も使えて当然か。
奴隷兵の武器に長物は無かった。ナイフや短剣、長くても長剣というところだろう。素手のやつもいるから娘たちと同じ感じで育てられている気がしないでもない。
ダンジョンを利用したトレーニングは、向こうの方が圧倒的に長い時間だろう。ステータスが同等か少し下であっても娘たちなら一対一では、圧倒されてしまうだろう。
俺は薙刀を握りしめ、最近覚えた肉体活性のスキルを使い強化を行う。肉体活性は能力向上とは違い、魔力による純粋な強化を行うスキルだった。宝珠で覚えられないスキルで、俺もなぜ覚えたかよくわからないが、能力向上で上げるより効率のいいスキルなので結構重宝している。
後方にいる奴隷兵に向かって迂回しながら一気に接近する。雷付与を行った薙刀で神速で切り付けるが、持っていた短剣をクロスして受け止められていた! まじか! あのスピードに何で反応できるんだよ! そして何で武器に傷がついていない。
離れる前にスキルで鑑定しておく、レベル四五五……おっと、これは予想以上にヤバい。ステータスは、肉体活性を使った俺よりも高い。スキルで強化している俺より上って事は、向こうも能力向上や肉体活性の様にステータスを上げるスキルを持っているのだろう。
こいつら以外の奴隷兵は持ってなかったから失念していた。全身に雷付与を行い直線で娘たちの方へ突っ込む。途中で攻撃を仕掛けてみるがやはり防がれてしまった。
「全員に通達、おそらく全員がシュリクラスのステータスを持っている。一対一ではおそらく勝ち目はない、他の門から来る奴隷兵は可能な限り早く倒せ。もうすぐリビングアーマーたちが到着する。拮抗した状態までは持ち込めるだろう」
ニコとハクは特別チームの二人を相手取って危なげなく戦っているが、戦闘技術が高いため押し切れず拮抗している。クロとギンは左右に広がった娘たちの前に立ち、他の門から来る奴隷兵を警戒している。
前面はリビングアーマーがくれば、膠着状態に持ち込めるだろう。だけど他の門から来る奴隷兵はこっちより多い。おそらくだが数で負けるとなると不利になるだろう。
そうこうしているうちに、南門からリビングアーマーたちが出てきた。それに続くように他の門から増援の奴隷兵二チームが到着した。
近接戦闘の人数ではこちらの方が少なかったが、クロとギンが二人ずつ引き付けレイリーとカエデが参戦して、数が同数になっている。後方支援はこっちの方が多いので手数では負けていないだろうが、戦闘経験の差と後もう一チームの奴隷兵が来たら苦戦は必至だろう。
ヒーラーからはバフが飛んできているが、魔法や弓の攻撃はやはりほとんど命中しない。回避されたりキャンセルされたり相殺されてしまっている。鉱山で襲ってきた奴らより練度が高いのだろうか?
娘たちが一対一でも押し切れていない。あいつらは同等とか言っていたのに嘘だった? いや本当に知らなかっただけかもしれない、チャームがかかっていたのならおそらく嘘はつけなかったはずだ。
初めの一チームをすぐに処理できたのは良かったな。全員残っている状態で戦闘に入ったら挟撃されて、増援にさらに挟まれて逃げ出すこともできなかったはずだ。
残りの一チームが来る前に何とかしないと、もうすぐ東門側から到着する。ここで出し惜しみしても意味がないな。
「東側少し押し込んでからひいてくれ、ピースを使う」
俺の声を聴いた東側の娘たちは、強引に押し込み敵をはじいてから距離をとった。
弾丸が空気を切る音もせず奴隷兵に突き進んでいく。
奴隷兵たちは次の瞬間に自分たちに向かって、何か飛んでくるのを察知できたが、銃という存在を知らなかったため反応が遅れてしまった。奴隷兵は、反応が遅れても必死に避けたが六人がそれなりの傷を負っていた。
反応が遅れたにもかかわらず四人も避けたって事か! どういう反射神経してるんだ? それともスキルによる感知があったりするのか? だけど、数で有利に立った東側は残りの奴隷兵が来る前に、何とか処理が終わりそうだな。
今度は西側に向けてピースを発射するが、誰一人として被弾することはなかった。魔法や装備しているもので器用に弾いていた。銃という現代兵器は、この世界のトップクラスには全く通用しないのだろう。
なのに近接戦で拮抗するのはなんでだ? 娘たちも、もしかして銃弾を避けられたりするのか? 音速の七倍は出ている弾を避けるってどういうことだよ? スキルか何かしらの魔導具があるのかもしれない。
避けられるのはもっと簡単な理由だった。銃の存在を知らなかったが、それに近い飛び道具を見たことある奴隷兵たちは、銃口が向くときには避けていたのだ。銃弾の通る位置に体を置かないようにしたのだ。
戦闘時における観察眼の恐ろしきことこの上ない。この世界の身体能力だからこそ可能な回避方法なのだろう。
この時、シュウが立ち止まって銃を撃っていなければ奴隷兵たちも避けきれずに被弾が増えたであろう。
銃はもう効かないと判断したシュウは、ピースをしまい次の手札を切る検討をしていた。
【アシッドレイン】
から始まった。
奴隷兵たちは、痛みを感じている様子は見られるが、声を上げるほどやわではなかったようだ。騙し打ちみたいな形で先制をとれたのは好都合だった。後ろから来る奴隷兵には、通用しないんじゃないだろうか? そんなこと考えている余裕はないな、今はとりあえず押し切る!
「生かす必要はない、殲滅するぞ」
六人の遠距離アタッカーが、俺に続いて広範囲の魔法やスキルを使っていた。
【アローレイン】
【木精霊魔法 樹木拘束】
【バーストアロー】
【フリーズストーム】
【スーパーセル】
【ウィンドブラスト】
相手がまとまっていた所にこの範囲スキルと魔法が決まったため、南門の外にいた奴隷兵たちは瀕死の状態だった。そこに近付いた近接組が次々と命を刈り取っていく。
次に来るのはおそらく、街の中にいる特別チームだろう。
「シュリ、南門側へ移動。タンク組はシュリを真ん中に左右に2人ずつ十メートル程の間隔で待機。外側の二人は西門東門からの奴隷兵たちを注意しろ。遠距離組・ヒーラーは後方待機、近接は左右に展開、全力で奴隷兵を倒せ。馬車はできる限り離れろ、防衛しきれない可能性が高い。無線で指示するからとにかく離れろ」
馬車は倒した奴隷兵を避けて南の街道を進む。全部の馬車が見えなくなった辺りで、南門から特別チームだと思われる、マップ先生に反応のない奴隷兵が到着していた。
シュリは危険を承知で奴隷兵たちに挑発を行う。
「深夜に人の家を襲うカス共が! この国の王は女性の誘い方が下手だと見える。後悔させてやるからかかってこい」
シュリの言葉遣いが教育に悪いことになってるな。あえて王を馬鹿にすることで、スキル以外にも挑発しているのだろうか? 動きの遅いリビングアーマーが到着するまでは、タンク三人で頑張ってもらおう。もちろん俺も牽制にはいるけどね。
奴隷兵がシュリたちに向かって、ナイフを投擲してきた。俺は即座にタンクたちの前に風魔法の【ダウンバースト】を発生させてナイフを叩き落とす。
弓使いのメアリーとマリアから【スナイピング】が放たれるが、難なくかわされてしまっている。見えにくくするためにツィード君に闇をまとわせてもらったが回避されてしまったのだ。
予想以上に厄介な相手だな。魔法による攻撃も、キャンセルされたり相殺されたりしている。こいつらもダンジョンの恩恵をもらっているなら、魔法も使えて当然か。
奴隷兵の武器に長物は無かった。ナイフや短剣、長くても長剣というところだろう。素手のやつもいるから娘たちと同じ感じで育てられている気がしないでもない。
ダンジョンを利用したトレーニングは、向こうの方が圧倒的に長い時間だろう。ステータスが同等か少し下であっても娘たちなら一対一では、圧倒されてしまうだろう。
俺は薙刀を握りしめ、最近覚えた肉体活性のスキルを使い強化を行う。肉体活性は能力向上とは違い、魔力による純粋な強化を行うスキルだった。宝珠で覚えられないスキルで、俺もなぜ覚えたかよくわからないが、能力向上で上げるより効率のいいスキルなので結構重宝している。
後方にいる奴隷兵に向かって迂回しながら一気に接近する。雷付与を行った薙刀で神速で切り付けるが、持っていた短剣をクロスして受け止められていた! まじか! あのスピードに何で反応できるんだよ! そして何で武器に傷がついていない。
離れる前にスキルで鑑定しておく、レベル四五五……おっと、これは予想以上にヤバい。ステータスは、肉体活性を使った俺よりも高い。スキルで強化している俺より上って事は、向こうも能力向上や肉体活性の様にステータスを上げるスキルを持っているのだろう。
こいつら以外の奴隷兵は持ってなかったから失念していた。全身に雷付与を行い直線で娘たちの方へ突っ込む。途中で攻撃を仕掛けてみるがやはり防がれてしまった。
「全員に通達、おそらく全員がシュリクラスのステータスを持っている。一対一ではおそらく勝ち目はない、他の門から来る奴隷兵は可能な限り早く倒せ。もうすぐリビングアーマーたちが到着する。拮抗した状態までは持ち込めるだろう」
ニコとハクは特別チームの二人を相手取って危なげなく戦っているが、戦闘技術が高いため押し切れず拮抗している。クロとギンは左右に広がった娘たちの前に立ち、他の門から来る奴隷兵を警戒している。
前面はリビングアーマーがくれば、膠着状態に持ち込めるだろう。だけど他の門から来る奴隷兵はこっちより多い。おそらくだが数で負けるとなると不利になるだろう。
そうこうしているうちに、南門からリビングアーマーたちが出てきた。それに続くように他の門から増援の奴隷兵二チームが到着した。
近接戦闘の人数ではこちらの方が少なかったが、クロとギンが二人ずつ引き付けレイリーとカエデが参戦して、数が同数になっている。後方支援はこっちの方が多いので手数では負けていないだろうが、戦闘経験の差と後もう一チームの奴隷兵が来たら苦戦は必至だろう。
ヒーラーからはバフが飛んできているが、魔法や弓の攻撃はやはりほとんど命中しない。回避されたりキャンセルされたり相殺されてしまっている。鉱山で襲ってきた奴らより練度が高いのだろうか?
娘たちが一対一でも押し切れていない。あいつらは同等とか言っていたのに嘘だった? いや本当に知らなかっただけかもしれない、チャームがかかっていたのならおそらく嘘はつけなかったはずだ。
初めの一チームをすぐに処理できたのは良かったな。全員残っている状態で戦闘に入ったら挟撃されて、増援にさらに挟まれて逃げ出すこともできなかったはずだ。
残りの一チームが来る前に何とかしないと、もうすぐ東門側から到着する。ここで出し惜しみしても意味がないな。
「東側少し押し込んでからひいてくれ、ピースを使う」
俺の声を聴いた東側の娘たちは、強引に押し込み敵をはじいてから距離をとった。
弾丸が空気を切る音もせず奴隷兵に突き進んでいく。
奴隷兵たちは次の瞬間に自分たちに向かって、何か飛んでくるのを察知できたが、銃という存在を知らなかったため反応が遅れてしまった。奴隷兵は、反応が遅れても必死に避けたが六人がそれなりの傷を負っていた。
反応が遅れたにもかかわらず四人も避けたって事か! どういう反射神経してるんだ? それともスキルによる感知があったりするのか? だけど、数で有利に立った東側は残りの奴隷兵が来る前に、何とか処理が終わりそうだな。
今度は西側に向けてピースを発射するが、誰一人として被弾することはなかった。魔法や装備しているもので器用に弾いていた。銃という現代兵器は、この世界のトップクラスには全く通用しないのだろう。
なのに近接戦で拮抗するのはなんでだ? 娘たちも、もしかして銃弾を避けられたりするのか? 音速の七倍は出ている弾を避けるってどういうことだよ? スキルか何かしらの魔導具があるのかもしれない。
避けられるのはもっと簡単な理由だった。銃の存在を知らなかったが、それに近い飛び道具を見たことある奴隷兵たちは、銃口が向くときには避けていたのだ。銃弾の通る位置に体を置かないようにしたのだ。
戦闘時における観察眼の恐ろしきことこの上ない。この世界の身体能力だからこそ可能な回避方法なのだろう。
この時、シュウが立ち止まって銃を撃っていなければ奴隷兵たちも避けきれずに被弾が増えたであろう。
銃はもう効かないと判断したシュウは、ピースをしまい次の手札を切る検討をしていた。
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