ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
80 / 2,518

第80話 バク討伐?

しおりを挟む
 どう見てもかわいいとは言えないキショイ半透明な四足歩行獣の気配を全員で探っている。マップ先生では、たいして動いていないのに目に見えない状態になっているのだ。

 ステルス? 光学迷彩とかいうスキルでもあるのか? 光系統や闇系統の魔法か? それともスピリチュアル系の魔物の特性か?

「ノーマン、お前も姿を消すことができるのか?」

「ん? 何を考えてそんなことをきくんじゃ?」

「スピリチュアル系の魔物なら、姿が消せたりするのかと思って聞いてみたんだ」

「ふむ、我には姿は消せない。ついでに言うとゴーストやレイスなども、完全に姿を消す事はできないはずじゃ。バクというのは今回初めて見たが、偏った強さの為か特殊能力にひいでた魔物の様な気がするわい。相性がいい冒険者ならBランクあたりでも単独で倒せそうな気がするがの」

「ライムの様子を見てると倒せそうな気がしなくもないが、魔法攻撃は相性がよくない気がするんだよな。スピリチュアル系の魔物なのに魔法が効きにくい、付与でぶったたけってことなのか?」

 なんだろう、実体のない敵を相手に武器を振り回すのか、なんかこう……魔法や祈りで消滅させるようなファンタジーの展開を密かに期待してたんだけどな。

 ドゴッ

 鈍い音がして振り向くと、ライムが吹き飛ばされていた。実体がないのに物理攻撃だと!? どうなってるんだ?

「ノーマン、何で物理攻撃ができるんだ?」

「そんなの決まっておろう、攻撃の瞬間だけ魔力で実体化してるだけだ」

「魔力で実体化、こういうことばっかファンタジーだな。シュリ、注意をひけ」

 シュリの存在感が一気に強くなった。挑発ではなく威圧? この前覚えたであろうアンカーを同時に発動しているような気配がする。シュリの迫力に押されてバクがひるむが、アンカーの効果のせいでシュリしか攻撃できない状態になっている。

 その表現には語弊があるな、アンカーにかかった対象がかけたもの以外を攻撃しようとすると、攻撃が失敗して自分にダメージが入る上に、アンカーをかけたモノの前に引き寄せられてしまうのだ。

 その他にも効果時間中は対象から、一定以上離れると同じように引き寄せられてしまうらしい。実質効果が切れるまで逃亡ができないスキルだ。

 シュリに縛り付けられたバクは、姿を消す事が出来なくなったようでライムの土魔法をくらっているが、あまり応えている様子がなかった。ライムも魔力や精神のステータスを見ればバクと同じくらいなのだ。

 弱点属性だからダメージは与えられているはずだが、効果が薄いのは魔法耐性の様なものがあるのだろう。

 うちのエレメンタルスライムのニコには物理攻撃をしても大したダメージは与えられない、その上名前のエレメンタルの特性か属性魔法もきかない恐ろしい程タフなスライムだ。とはいっても苦手なものは存在するのだが。

「シュリ、土付与いけるか?」

「問題ありません、土・火・雷は攻撃にも防御にも使えますので必死に覚えました」

「さすがだ。今度攻撃が来たら盾に土付与して俺の方へはじいてくれ、ちょっと試したいことがある」

 シュリに何度も攻撃を防がれていてイライラしている様子のバクが、急に消えた。アンカーの効果が切れたな。今さっきの様子から完全に姿は消せるようだけど、攻撃するときには実体化をしなきゃいけないから、その瞬間は見えるようになる。

 アンカーにかかっている時も姿を消していなかった。単純に考えて、何かをする時、何かをされている時は姿を消せないのではないかと予想する。

 これならイリアを連れてくればよかったかな? 精霊魔法は攻撃より妨害が得意で広範囲に影響を及ぼせるものが多いのだ。

 広範囲に簡単にデバフをかけられる魔法やスキルっておおくないよな。

「ライム、広範囲にデバフをかけられる魔法ってないか?」

「えっと、私たちにも効果が出ても問題ないですか? 視認がしにくくなるフォグがありますがどうでしょうか?」

「悪くないな、広めに魔法をかけてくれ」

 俺の指示を聞くとライムは、条件反射のごとく魔法の詠唱に入っていた。詠唱とはいってもため時間みたいなものなのだが。

 MMORPG風に言えば、キャストタイムだろうか? ライムは一応、無詠唱も使えるが消費魔力が増えるため急を要するものではない時は、短縮を使ってため時間を短くしている。こっちは魔力消費量は増えないのだ。

 しばらくすると、霧が発生して少し離れたところにバクの姿が表れる。姿をあぶりだされたバクは、ライムにとびかかっていた。その動きは早いとは言えず、ライムにとびかかる前にシュリに阻まれ盾で俺の方に弾き飛ばされてきた。

 右手に刀、左手にメイスを持って両方の武器に土付与をする。飛んできたバクにめがけ刀を振り下ろす。抵抗なく体を通過したが、ダメージが入っている様子は見られなかった。続いて左手に持ったメイスで顔をめがけておもいっきり振り下ろした。

 鈍い音がして、バクが叩き伏せられ、地面が軽くへこんでいた。思ったよりダメージは入ったようだが、バクはフラフラしながらも、俺の近くから離れていた。歩いている姿が酔っぱらっているような状態だな。生身の肉体がないのに、脳震とうでも起こしたのか? ファンタジー世界はよくわからんな。

「おそらく、打撃系の攻撃が通る。理由は分からないが斬撃系や貫通系は効果が薄いと思う」

 その言葉を聞いたライムが無詠唱で結構な魔力を消費して、大岩をバクの上に作り出していた。重力に従ってそのままバクを押しつぶした?

 え? 実体化してなかった場合こういうときは素通りするんじゃないか? でも魔法で生み出した岩だしダメージ判定なのだろうか? どうやって確認するべきかな?

 いかんいかん、マップ先生をまた忘れるところだった。マップ先生ならある程度の情報を拾えるから、鑑定と違って視認する必要がないんだった。

 どれどれ、大岩の所に重なって表示が残ってるな。マップ先生だとステータスは見れるけど、ダメージが通ってるかわからないんだよな。

 だから現状、押しつぶされてるのか透過してその場にいるのか判断できないのだ。でも動く気配が全くない。これって潰されてると思うんだよな。しばらく様子を見てみよう。

「みんな、バクの表示は大岩と同じ場所にある。ダメージが入ってるかわからないけど、今のところ動く気配がない。警戒を怠らない様に」

 俺の指示に従って、娘達が岩のまわりに立って囲んでいる。ライムはいつでも魔法を発動できるように詠唱を先にすませて待機させていた。シュリは全身に弱く土付与を行っており、いつでも全力を出せるようにスタンバイしている。

 メアリーとピーチは、ノーマンに土付与を行ってもらっており待機している。そのノーマンは大岩の上で胡坐をかいてあくびをしていた。もっと緊張感もてよ精霊!

 5分経っても動く気配がない。おそらく魔法で出来た大岩は物理攻撃ではなく、魔法による攻撃になっているのだろう。同じように大岩を落としても同じ結果になったかわからないが。

 マップ先生を見ていると、不意にバクの反応が消えた。おそらく大岩に押しつぶされているスリップダメージをくらったのではないだろうか。みんなにバクの反応が消滅したことを伝えると、警戒をとかなかった。

 今度は俺の周囲に立って警戒を強めている。あっ、護衛としての役割を果たしているのか。勤勉だな、昔の俺とは大違いだ。中学の時とか先生の言うこともきかず、勉強もせずに怒られてたもんな。

「ノーマン、この石どかしてくんね?」

「了解した。むん!」

 ノーマンの変な掛け声とともに大岩が消滅した。ノーマン思ったよりやるじゃん! スピリチュアル系の説明といい、なかなか優秀じゃないか。密かにポンコツとか思っててごめんな。

 バクがいたと思われる場所に魔石を発見する。スピリチュアル系は、普通の魔物より質のいい魔石を落とすことで有名らしい。肉体のある魔物より質のいい魔石を落とす理由は分からないが、ドロップしたのだから取っておこう。そういえばこいつらに討伐部位ってないのか? 魔石が討伐部位になったりして。

 なんとも言えない感じでバクの討伐が終了した。

「みんな帰ろっか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...