ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
76 / 2,518

第76話 メルビン男爵再び

しおりを挟む
 冒険者ギルドと半分縁を切ってから二週間が経った。特に何もなく、農園や家畜の世話をしたりレベル上げ用のダンジョンに行ってみたり、新しくダンジョンを作ってみたりしていた。

 基本的に家の敷地内ですべてが完結してしまっているが、特に不自由なこともなくむしろノビノビと娘たちは生活していた。時々気まぐれに市場をにぎやかしに行ったりもしている。

 一週間前にシングル冒険者のリリスたちが、獣道の森から帰還したことを外出しているときに聞いた。ギルドからの街への報告は、『フェンリルの討伐に成功、討伐後に森の異変を調査するも何もなく魔物の数も減っていた』と大々的に発表されている。

 発表された中に、よその街のBランクたちの情報は全くなかった。活躍したのはシングル冒険者とAランクパーティーが中心だったとのこと。討伐で一番活躍したのはシュリなんだけどな、その情報を公表しないのだろう? それとも冒険者ギルドでの一件のせいなのだろうか?

 色々なことを考えていたが、四日前にリリス、マーニャ、アントが揃って俺の家を訪ねてきた。家を見た第一声『でかくない?』であった。

 リリスたちは、ギルドの発表について不満を持っていたが、世間的な事を考えて今回の発表を受け入れた事を話してくれた。

 リリスでもタンクをするのは厳しかったのに、Cランクのシュリがタンクを引き受けて長時間耐えきったというのは、かなり公表し辛い内容だとのこと。シングルも大したことないと思われるし、CランクでもSランクの魔物のタンクができると思われるのは絶対に避けたいのだ。

 無謀なことをして死ぬ冒険者が増えるかもしれないし、今回の緊急招集の際にシングルの冒険者に楯突く者が出たりするのを避けたいのだ。

 なので仕方がなく今回の発表は受け入れたと、苦しそうな火表情で話してくれた。

 今回の発表について真相がわかったので特に思う事は無かった。ついでにリリスたちは、預けていた荷物を受け取っていった。Aランクパーティーたちの荷物も一緒に受け取っていってくれた。預かっていた物は、全部なくなったので少し気が楽になった。

 二週間位であった変化はこの位だろう。大きな変化もなく平和な日々が続いていた。おっと、一つ忘れていたことが、牧畜用にドモヴォーイを三匹、海エリア用にメロウを三人召喚している。召喚できる精霊を探していたときにやっと発見したのだ。

 のんびり過ごしていた昼下がりに、俺の家に来訪者があった。

 一緒に獣道の森に行ったAランクパーティーの一チームだった。名前は覚えていないが、間違いなくそのパーティーだった。

「お? シュウじゃないか。今回依頼された奴隷の引き取りってあの娘たちなのか?」

「はぁ? 奴隷はともかくとして引き取りって何の話だよ」

「何の話って言われても、メルビン男爵がこの家の奴隷を買い取ったから、屋敷まで護衛して連れてきてほしいっていう指名依頼を受けたからな。売買書もきちんとここにあるからな」

「そもそも、いくら積まれても売るつもりはない! 娘たちがそれを望むならともかく、俺の意志で売ることなどない! 俺があいつらのこと奴隷扱いしてたか? してないのだろ? お前らはどんな権利があって言ってんだ? お前らのものじゃねえだろ?」

「そんなに怒るなって、でも指名依頼で売買書もあるんだから、連れてかないといけないんだが……話し合いは向こうでお願いしていいか? 連れてかないと俺たちがペナルティーくらうんだわ」

「そっか、娘たちを連れてくっていうのか……じゃぁ、今からお前らは俺の敵だな」

「そうそう、連れて……はぁ? 何で敵になるんだよ」

「簡単な話だ、娘たちがほしいメルビン男爵が何かをして、売買書とやらを作ったんだろう? 法的に効力があるっていうなら、そういう関係者を巻き込んでるわけだよな? 俺は絶対に認めない。国を敵に回しても認めるわけにはいかない。じゃぁ、戦うしかないだろ? なら、お前らは敵じゃん」

「何でそうなるんだよ……売った覚えがないのに何で売買書があるんだ? お前の言ってる通りに不法行為が行われてるのか……でも、ギルドを通した依頼だからな」

「たかが街の中の護衛にAランクって不自然だろ。戦わせるように仕向けてるだろこれ。まぁどうでもいいや、今問題なのはお前たちが俺の敵かそうじゃないかだ」

「敵になるつもりはないが、クエストを意図的に破棄すると高額のペナルティー……これが俺たちを戦わせようとしてるって事か。クエストを邪魔する者を実力で排除しても、問題にしないって特記があったな。そういう事だったのか」

「で、お前たちはどうするんだ? わかってると思うけど、俺たちをランクで判断するなよ。俺一人でもなんとかなるだろうけどな」

「おいおい、冗談はよしてくれよ。全員の相手は流石に無理だが、お前一人なら俺らが負けるわけないだろ? それより、敵になるつもりはないんだ。とりあえず、全員でメルビン男爵の所に来てくれねえか? ここで話しててもどうにもならないんだから」

「よし分かった、お前ら全員敵な。メルビン男爵の指名依頼受けたことを呪え。ガルド・ノーマン・アクア・メイ、周辺に防御結界」

 俺は共に戦ったAランクパーティーを敵と認識し戦闘態勢に入った。

「まてまて、なんでそこで戦闘することになるんだよ? メルビン男爵の所にいくだけでいいんだぜ?」

「そもそも、何で俺たちがあいつの所に行かなきゃいけないんだ? 用があるなら連れて来いよ。まぁどうでもいいや、お前らに残されたのはここで死ぬか、男爵の所に帰って報告するかの二つに一つだ。それ以外の返答はすべて戦闘の意志ありとみなす」

「くそが! 何で融通がきかねえんだよ。さすがに俺らも命は惜しい、今集まってきている全員相手に勝てるわけない。俺らは男爵の所にもどる」

「戻るついでに伝言頼むわ。次はないっていったよなって伝えておいてくれ」

 四大精霊に指示をして結界を解除させ、若干青い顔をしたAランクパーティーを見送った。

 さて、約束を破ったメルビン男爵はどうやって始末するか。直接手を出すのもめんどくさいしな……男爵のいる部屋に魔物召喚して襲わせるか。

 うむ、意外に名案なんじゃないか? 突発的な魔物の発生で男爵死亡。不吉な伝言を頼んだが、魔物が勝手に男爵を殺すわけだから、実際は俺が直接的な原因なんだが、俺との関係は一切証明できない。

 思い立ったら吉日! 男爵のいる場所を確認する……ちょうどムカつく豚と一緒だったのだ。騎士は一緒にいないようだったので都合がいい。

 召喚するのは、豚君も一緒にいるわけでLvを上げたオークにするか。万が一にも騎士たちが駆けつけるまで耐えたら意味がないので、Lvを上げて一気に制圧してもらおう。

 ポチっとな。

 この世から豚と害虫が合わせて二匹いなくなった。もし召喚が可能だったらホモークを召喚したかったが、召喚リストには出ていなかったのであきらめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...