ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
72 / 2,518

第72話 現代兵器登場

しおりを挟む
 俺やカエデ、リリスの攻撃で何とかダメージを与えられている状況だがじり貧に陥っている。とりあえず、シュリの状態を確認しておかないと、英雄症候群で上がっているパフォーマンスが下がる前に手を打たないと。

「リリス、しばらくでいいからタンクをシュリと代わってくれ。シュリは、強いけど燃費が悪いから様子を確認させてくれ」

「分かったわ、ふぅ……こっち向きなさいフェンリル!」

 リリスの挑発スキルに乗った殺気に反応して、すぐにターゲットが変わった。シングル冒険者のスキルって威力が上がるのか?

 シュリがしっかりとヘイトを稼いでいたのにすぐにタゲが変わるとは、それともリリスがダメージコントロールしてヘイトをとらないようにしていた? 今はどっちでもいいか、シュリの状態が気になるんだ。

 シュリの動きが少しずつ悪くなってきたので状態を確認すると、空腹(初期)となっていたのだ。ステータスにもマイナス補正がついていたので、かなり焦った。

 フェンリルが迫ってきていることが分かってから食事をとらせたのだが、全然足りなかったようだ。戦闘となると使うエネルギーも普段の数倍は増えるのだろう。

 こういうときの為に、高カロリーの保存食もシルキーたちに作らせておいてよかった。

「シュリ、どうやら食事が足りてないようだ。戦闘で大量にエネルギーを消費したみたいだから作ってもらったアレを食べろ。飲み物も準備してくれてるから一緒に取るんだ。

 甘ったるい飲み物かもしれないけどしっかりと補給はしてくれ、大変な役目だけどお前が崩れるとおそらくみんな死ぬ可能性が高くなる。代わってやれるなら代わってやりたいが、タンクは練習して無かったから代わってやれない……すまん」

「モグモグ……いいえ、私の存在意義は盾としてご主人様の安全を守ることです。痛い苦しいなんて、ご主人様の安全を確保できるのであれば塵に等しい感情です。大食らいの私なんかの為に色々して下さったご主人様にやっとできた恩返しなんです。

 私の身が朽ちようとも守り切ってみせます。では、行ってまいります。リリス様お待たせしました、タンクを代わります。こっちへきなさい!」

 シュリの思いが重いが今はそれで本当に助かっているのだ、甘んじて受け入れよう。俺はシュリが抑えてくれている間に打開策を考えなくては。

『GUROOOOOOOOO』

 初めに行った雄叫びとは全く異質の咆哮がフェンリルから放たれた。大音量による感覚の混乱、王者の雰囲気を醸し出した威圧、咆哮の物理的な衝撃波。タンクをしていたシュリは支援魔法による保護があり何とか防ぎ切ったが、それ以外のメンバーはシングルの冒険者を含めみんな一時体が硬直してしまった。

 フェンリルは、その隙を見逃すほど甘くなかった。

 フェンリルはこの時、一番厄介な人物に痛手を負わそうとして地雷を踏み抜いてしまった。

 シュリの攻撃ではダメージはくらわないのは分かっており、挑発によって上がっていたヘイトをさっきの咆哮でキャンセルして、隙だらけの俺に向かって攻撃を仕掛けようとしていたのだ。

 やばい……俺死ぬんじゃね? 咆哮のせいでまともな防御態勢も取れる状況ではないのだ。当たり所が悪ければ即死、よくても瀕死どちらにしても危険だという事だ。だけど、体が動かずに何もできないのだ。

 もう目の前にフェンリルがいる……時間が細切れになったように鮮明に状況が見えている。音は聞こえなくなった。

 噛みついて一気に息の根を止めるようだ……

 瀕死はなくなった……噛みつかれればおそらく助からない……

 みんな、俺がいなくなっても幸せに生きてほしいな……

 来る苦痛の瞬間を見たくなかったため、目を閉じる……

・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


 痛みが来ない、恐る恐る目をあけると目の前にシュリがいて、全身に電気がほとばしっていた。フェンリルは十メートル程離れたところにいた。

 状況を考えると、おそらく全身に雷付与をしてフェンリルより早く動き俺とフェンリルの間に入り、吹き飛ばした、もしくは退かせたのだろう。

「ご主人様に手を出すなぁあああああ!!!!」

 シュリが咆哮を上げた。先ほどのフェンリルと同質の咆哮の様だ。まともに受けたフェンリルは一瞬下がるがすぐに、雄叫びで応えた。

 いくら雷付与を全身にしていても、圧倒的にフェンリルが有利なのは変わらないし、付与の時間が長引けば魔力が切れてしまう。不利な状況は一切変わっていない、殺意のこもった咆哮の後の絶望が少しいい方向に向いただけだ。

 くそ……フェンリルの咆哮で耳にダメージが入ってしまったようだ、キンキンと耳鳴りがしている。バカでかい声をだしやがって……

 ん? バカでかい音か、確か軍事オタクが強い光と大音量で、相手を行動不能にさせる爆弾があるって言ってたな。段ボールマニアのゲームにもそういった爆弾あったな、確か、スタングレネードだったはず、効果があるかわからないが召喚リストに確かあった。

【M84スタングレネード】

 あった、二本召喚して収納の腕輪にしまっておく。後は使うタイミングだろう。効いたとして一回だけだろう、二回目は無い。慎重に作戦を練らなくてはいけない。

「カエデ、今打開策を思いついた。大音量と強い光で相手をひるませる武器があるんだ。おそらく目も耳も使えなくなるから、その隙にピースを足に打ち込む予定だ。だから、合図したら耳を塞いで目を閉じてほしい。全方向に影響が出るから使いにくい武器だけど、決まれば効果は絶大だと思う」

「確かに、今さっきの咆哮で耳がしばらくやられて何も聞こえなかったね。強い光で目が見えなければ何とかなる? だけど相手はフェンリ、鼻でも敵の位置わかるんじゃない? 蛇とかみたいに特殊な器官はないと思うけど」

「鼻か、確かに狼だとすれば鼻もいいはずだな、催涙弾みたいなのだと攻撃できなくなるから、狼は分からんが確か犬は、アルコールや柑橘系のにおいが嫌いだったような? 強いにおいが苦手なら、アンモニアでもいいのか?」

 アンモニアを瓶で召喚した。アルコールだとスタングレネードで燃える可能性があるし、柑橘系だと効果が薄そうなイメージなので、刺激臭のするアンモニアに決めた。

「おそらくフェンリルの鼻はこれで何とかなる。魔力で動きを感知されるなら今の状態じゃどうにもできないな、とりあえずやるだけやってみよう。娘たちは俺が指示すれば何も疑わずに目や耳を閉じるだろうけど、シングルやAランクの人たちにどう説明するか」

「説明しなくてもいいんじゃない? どうせ信用してもらえないし、一応注意は飛ばして従わなかったら自分の責任ってことでいい。パーティーの隠し技を見せるって形だから、信用しきれなかった自分たちが悪いってね」

「時間がかかりすぎてもっと不利になる前にやらないといけないからな。とりあえず準備ができたら開始しよう。ピーチ、キリエ、シュリに防音と光遮断の効果のある魔法をありったけかけてくれ、多少でも効果があれば違うからよろしく」

「「了解です」」

 シュリの準備が整ったところで、

「みんな、奥の手を出す。合図をしたら目と耳を閉じろ。魔導具で大音量と強い光をだす。直接見るなよ、一時的にでも目が見えなくなるぞ。シュリは、カウント終わりに防御態勢! 3・2・1、閉じろ!」

 カウントをして、スタングレネードを二本投げる。

 娘たちとシングル三人は、俺の忠告を聞き目と耳を閉じたようだった。

 キーーーーンッ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

処理中です...