ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
71 / 2,518

第71話 ジリ貧

しおりを挟む
 フェンリルの雄叫びを聞いてシングルの三人以外は、少しの間体がすくんでしまった。その間にシングルの三人はすくんでしまった俺たちの為に前に出ていた。

 リーダーのリリスは本来タンクではないが、とびぬけたレベルと戦闘の経験を活かしてヘイトをしっかり稼いでから戦いやすい距離を探しているようだ。

 マーニャからの支援が加わりフェンリルの攻撃を何とかかわしていた。持久力の差が出てからでは立て直せない為、アントはバインド系や移動阻害系の魔法をあたりにばらまいていた。

 何でそんなことが分かったかといえば、アントが魔法を使う前に大きな声でばらまくことを宣言していたからだ。魔法のバインド系や阻害系は基本的に敵味方を識別して範囲に入っても敵にしか、かからない仕組みになっている、謎仕様だ。

 フェンリルの魔法耐性が高い為か、デバフの魔法のかかりが悪い上に、かかってもほとんど効果をなしていないようだった。アントの攻撃魔法もあまりダメージを与えているようには見えず、リリスの攻撃で傷も負っていないようだった。

 さすがにタンクがメインじゃない人間がタンクをしながら、ダメージディーラーになるのは難しいのだろう。いったんシュリにタンクを代わってもらい、ダメージを稼ぐ方法を検討しなくてはいけないだろう。

「シュリにありったけの支援を開始しろ。ヒーラーの二人は全員に速度上昇系と防御力上昇系の魔法をかけたらシュリを全力で支援しろ。シュリ、痛い役目を押し付けてしまってすまないが、どのくらいやれそうか試してくれ」

「ご主人様の為です。喜んで壁となります。皆さんフォローお願い致します。ご主人様の糧となりなさい犬ッコロ!!!」

 おぉ……挑発スキルに口の悪い言葉を乗せたな。

 リリスがマーニャにシュリの支援をするように指示を出してから、俺の方まで一気に下がってくる。

「シュウ、助かった。タンクをしながらではどうにも攻撃がうまくできなかった。ダメージを与えられる方法を検討しようにも、タンクをしながらではな。あの娘はどのくらい耐えれそうだ?」

「おそらく耐えるだけなら、支援さえあれば持久力の続く限りか、気持ちが折れない限りはいけると考えています。支援なしではそう長くは持たないでしょう」

「私も支援なしじゃそんな長く持たないから、タンクがメインだとさすがにタフなんだな。壁をしてもらってる間にスキをついて、ダメージが通りそうな攻撃を重ねていこう。

 効きやすい部位が分かるといいのだが、この際贅沢は言ってられないな。Aランクのパーティーに鈍器使いが合わせて三人いるから、打撃はそっちに任せよう。刺突系は私とAランクにパーティーに一人だからあなたたちで何とかなるかな?」

「弓が二人いるから、可能なら付与魔法で相性を調べてもらおう。うちは斬撃系には困ってないから、色々試させてもらうよ。本命はカエデの刀だけどな、頼むぞ」

 簡単な打ち合わせを終えた後、各人準備に入る。

 シュリの挑発に合わせて、弓を構えたメアリーとマリアが矢に付与術をかけはなっている。ここら辺の連携は問題なくこなしており、付与術の矢が当たった後にフェンリルの気がそちら側に向く。

 その瞬間を見計らって今度は、リリーが片手剣の【ソニックリープ】突進スキルを使って攻撃をしてすぐに離脱している。他にヘイトが移る前にシュリが盾スキルなどを使いしっかりとヘイトコントロールしている。

 付与魔法をした矢の効き目は、風付与が一番深いダメージになっていた。弓との相性がいいためか、小さいがしっかりとダメージになっているようだった。深いダメージとはいっても鏃の先が刺さったくらいのものなのだが……

 武器との相性の高い付与であれば娘たちでも、ダメージを稼げることが分かった。だが反対に、付与がなければスキルを使っても、おそらくほとんどダメージが与えられないということだ。

 鈍器系を使っているAランク冒険者たちは、支援をもらってもフェンリルの速さについていけず、突進系のスキルも鈍器にはない為、攻撃自体出来ない状態だった。

 リリスの攻撃はフェンリルをイラつかせるには十分なダメージを与えており、シュリのヘイトコントロールをたまに上回ってしまいタゲが飛ぶことがあったが、さすがシングルというべきかシュリがタゲを取り返すまで上手く動いてくれている。

 こっちが優勢に見えるが、フェンリルのスキルや魔法の余波を受けて、シュリ以外の討伐メンバーにもダメージが通っているため、今の状態ではじり貧になってしまうだろう。

 予想よりフェンリルの与えるダメージが高く、支援をもらっているシュリにもダメージが蓄積されつつあった。

 どこかで流れを変えないと、何もできないまま全滅の可能性も高くなってきている。フェンリルをイラつかせることができるダメージを与えても、あれくらいのダメージならそのうち回復してしまうだろう。

 うちのメンバーもシュリの挑発等に合わせて攻撃をしているが、まともにダメージを与えられているのは、カエデと俺だけだった。他の娘たちは、付与を使っても気持ちばかりのダメージしか与えられてい。おそらく武器の性能のせいだろう。

 カエデのは、自分で丹精込めて鍛造した迷刀【霞】で、俺のもカエデが俺に合わせて何度か調整を重ねてくれた薙刀なのだ。娘たちが持っている数打ちの量産品とは違うのだ。

 ダメージが与えられないと判断した娘たちにシュウは、下がって周囲の警戒に当たらせることにした。おそらくフェンリルの雄叫びを聞いてほとんどの魔物はここから離れたと思うが、邪魔が入って今の状態が崩れるのは非常にまずいのだ。

 時々シュリの負担を減らそうと、Aランクのタンクたちがヘイトを稼いでタゲを奪っているが、よくて三分程しか耐えれて無かったのだ。

 その点シュリは、戦闘が始まってから一時間が経過しており、その間に五十分以上タゲをとっているのだ。英雄症候群があるとはいえ、燃費の良くない体なのだ。どこかでしっかりと補給できるタイミングをつくらなくては。

 俺の攻撃は一応通るのだが、フェンリルが早すぎて雷付与以外で攻撃をあてられないという現実が。おそらく、風付与の突きや火付与の斬撃ならもっとダメージ出るはずなのだが、あてれないんじゃ意味がない!

 攻撃を加えながらインターバル中に、何か打開できるスキルが無いかスキル宝珠リストを流し読みしていく。二十分かけて何回か読んだが起死回生になるようなスキルは見つけられなかった。

 ただふと思い出した漫画で、右手に火魔法、左手に氷魔法をだして合わせて新しい魔法をうった、ポンコツ魔法使い改め大魔導士の少年を思い出した。

 誰が一つしか魔法やスキルを使えないと言った? 俺が勘違いしてただけだろ! やってできない事はないはずだ。体に雷魔法を付与して武器の薙刀に風魔法を付与すればいいだけだ……集中……集中……体に雷魔法を付与してからしばらくして、武器に風魔法が付与された!

 よし! いける! と思った瞬間に付与が強制解除されてしまった。二属性付与はやってできないことはないが、修練や特訓、慣れが必要だろう。今すぐに使いこなすことはおそらくできない。

 一番現実的なのは、フェンリルに届くであろう武器の召喚だ。

 話の通りであれば、蜻蛉切など日本や世界の伝説に出てきている武器であれば、ダメージを与えられるはずなのだ。DP的には問題ないが武器に頼るやり方なら、まずは試作したピースをつかってからだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

think
ファンタジー
ざっくり紹介 バトル! いちゃいちゃラブコメ! ちょっとむふふ! 真面目に紹介 召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。 そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。 ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。 皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは リビングメイルだった。 薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが マモリタイ、コンドコソ、オネガイ という言葉が聞こえた。 カイは迷ったが契約をする。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...