ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
69 / 2,518

第69話 馬鹿たちの結末

しおりを挟む
「あなたたちって森の中で煮炊きするの?」

「人数が人数なので煮炊きできるようにしています。外から来たらわかると思いますが、匂いもほとんどなかったですよね? そういった特殊加工のできる仲間がいるので高級品です。俺たちは毛皮をたくさん集めただけですけどね」

「確かに料理の匂いはしませんでしたね。それとは別に、私たちにも分けてもらいたいのですが、可能でしょうか? 対価を払えば食べさせてもらえたりしますか?」

「材料はたくさん持ってきているので分けるのは問題ないのですが、対価を考えるのは難しいかと」

「ですよね。パッといくらって言ってもらえたら楽でしたのですが、主食のパンと乾燥肉はあるのでスープだけでも頂けると嬉しいのですが」

「じゃぁ、スープ一杯五〇〇フランでどうですか? スープだけですがこの値段でいかがですか?」

「そんなに安くていいんですか? わがままなお願いなのは重々承知ですが一人二杯は頂ければと思うのですが、かのうですか?」

「ピーチ、食材的には問題ないか?」

「ご主人様、問題ありません。夜だけ皆様の分を作ったとしても、三週間は問題なくスープを作れますね」

「そんなにもってきてたのか。夜だけでよければこれからもどうですか? それと相談があるのですが、聞いてもらえるなら食事の代金はいらないです」

「もしかして、あいつらの件ですか?」

「そうですね、俺にとってこの娘たちの安全が第一ですから」

「大切にしてるんですね、装備品もかなりのものですし。初めに言っておきますが、もうここのメンバーで話し合っていて、トラブルを起こすようなら処理するつもりです。フェンリルを前にして足を引っ張られたくないので、ここに放置するか処分するかはあいつらの出方次第ですね」

「そこまで話が進んでるとは、こちらからは俺とカエデ、レイリーが動けるようにしておきます」

「もともと処理する予定だったのに、それで食事をタダにしてもらうのは気が引けるな」

 リリスが口にすると、集まっているメンバーが全員頷いていた。

「安全を確保できるなら食事位安いものですよ。できれば娘たちにこんな事で人殺しをさせたくないので、それを了承してもらえればいいです。それでも気になるなら、持ってきた食材を提供してもらえればいいですよ」

「そこらへんが妥協点かな? 食材の一部を提供して今回の件には娘さんたちをかかわらせない、ってところを落としどころにしようか」

「助かります。食事はこの中でお願いしますね。見張りも交代でこなしながら食べる方向でお願いしますね。外に持ち出すとあいつらがもっとうるさくなりそうなので」

 全員が苦笑して俺のいう事に頷いた。

 テントの外では、クズどもが「今日はどいつにするかな?」「2人まとめてやるのもいいな」「味気ない食事は嫌だが夜が楽しめるのは最高だぜ」などとほざいていた。

 シングル冒険者の三人は声をそろえて「処分決定」と、もうクズどもが助かる道はなくなった。

 そんなときに、クズどもの一人が「俺らもいれろや」と、勝手に俺たちのテントの中に入ってきた。

「おぃ、てめえらだけ何、うまそうなもん食ってんだ? 俺らにも寄越せよ」

「対価が払えるなら食わせてやるよ。スープ一杯で金貨一枚な」

 各パーティーのリーダーたちに目配せをすると、俺の意図を組んでくれたのか、メンバー分の金貨を取り出して俺に渡してくれた。

「まいど~」

「「「「ごちそうになるよ」」」」

 今のやり取りをめにして憎々しげにこちらを見ている、クズが

「金貨一枚は高すぎんだろ! せめて銀貨一枚にしろ!」

「対価が払えないなら食うな」

 悔しそうな顔をして、「今夜は楽しませてもらうぜ」と言ってテントを出て行った。

「今夜が命日とも知らずにおめでたい奴らだ」

 お金を返していると、リリスがぽつりとつぶやいた。

 食事も終わり、クズどもの処理の手順を確認しはじめた。

 以下の通りだ。

一、処理するメンバーが隠れて待機。

二、リーダーがクズどもを呼び出し全員に警告をする。

三、問題がなくなれば何もしない。

四、反発したり、襲い掛かってきたりしたらその場で処理。

 以上、簡潔にまとまった。

 シングル三名、Aランク七名、俺、カエデ、レイリーの合わせて十三名。Bランクパーティーでも下位、Cランク程度の四組に対するには過剰戦力だろう。確実に処理するための布陣だ、逃げることすら許すつもりはないらしい。

 待機していると、リリスがクズども四パーティーを引き連れてきた。手筈通り警告を発した。

「お前たちの行動や言動は目に余る、改善する気はないのか?」

「俺たちの何がいけないっていうんだ? 奴隷のメイドたちは俺らを満足するための道具だろ? あの小僧もわかってるよな。ギャハハハ」

「それ以上口を開くな、お前らはフェンリル討伐の足かせになる。他のメンバーも危険に陥れるだろう。だから今からお前らを処分する。リーダーとしての決定だ」

「はぁ? いくらシングル様とはいえ二十四人も相手にして勝てるわけないだろ? 現実を見ろよ。それより俺たちがいい思いさせてやるからよ。女の喜びを教えてやるんだ、感謝しろよ」

「お前らのようなクズがいるから冒険者の品位が下がるんだよ。それに現実をわかっていないのはお前らだ。私一人でもなんとでもなるが、リーダーの決定といっただろ? 一人だけでやるわけがない。みんなもう隠れる必要ないぞ。処理を始めよう」

「てめえら、こんなことしていいと思ってるのか? ギルドに訴えてやる」

「自分に不利になれば、手のひらを反すように強いものの威を借ろうとする。残念だが今回の件を生きてギルドに訴えてもどうにもならないぞ。私が最後通告をしたときに聞いていればよかったのに、下種な事を言うんだからな。

 今回の様な緊急クエストでは、成功確率が著しく下がると判断された原因に対して、実力で排除してもいいと決まっているんだ。こういったときのリーダーは、シングル以上の冒険者がなると決まっていて、そういった権限も与えられているのだよ。無知な自分と下半身ばかり成長した自分を呪って死んでいけ」

 リリスの掛け声で蹂躙が始まった。二十秒もしないうちにクズどもが死んだ。

 自分の手で二人殺したのに何も思わなかった。この世界のルールに慣れてしまったのか、殺したのがクズだったからなのかわからないが、何も感じなかった。

 楽しく会話する気分でもなく、かといってちょうどいい話題があるわけでもなく、深い穴をアントが土魔法で掘ってクズどもの死体を放り込んでいく。会話をすることなく作業を終わらせテントへと戻っていく。そのまま全員がテントの中に入るとリリスが声を出した。

「クズどもを殺したのは何とも思わないが、緊急クエストをただのクエストと勘違いしている馬鹿が多いな。放置すると問題が大きくなるから緊急クエストなのにな。

 害悪は早めに取り除けて良かった、フェンリルの討伐は文字通りの死闘になるだろうけど全員で生きて戻ろう。今日の見張りはAランクパーティーの君たち三チームに任せていいか?」

「俺らは問題ないぜ。そっちは?」

 各リーダーは問題ないと頷いていた。

「すいません、これだけ大きなテントを建てたので空いてる場所を使いませんか? あまり広範囲に広がっても見張りがめんどくさいですよね?」

「うちらとしては、とても助かる申し出だけどいいのか?」

「あのクズどもがいなくなったので問題ないかと、朝食の準備とかするので多少朝方うるさくなっても問題ないのでしたらいいですよ、なぁピーチ」

「はい、身の安全を守ってもらえたので問題ないです。それと朝食用にパンを出しておいてくだされば、フレンチトーストを作りますがいかがしますか?」

「「「「フレンチトースト?」」」」

 俺たち以外はみんなハテナマークが浮かんでいた。

「まぁ騙されたと思ってパンを出しておいてください。日持ちのする固焼きパンだと思いますが、柔らかくなりますので食べやすくなりますよ」

 こんなところで嘘はつかれないと思い全員がパンを出して娘たちに預けた。Aランクのリーダーたちは順番を話し合っていた。一番目と三番目を長め二番目は中起きなので、短く時間設定をしているようだった。

 俺はピーチに軽い夜食と暖かい飲み物を用意するように耳打ちした。

 それにしても、日持ちのする固焼きのパンってしょっぱいけど、どうやってフレンチトーストにするんだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...