ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第67話 馬鹿はどこにでもいる

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 娘たちは連れていく予定はなかったが、ここまで準備していてヤル殺る気に満ちているみんなを前にすると、やはり残ってくれとは言えなかった。

 もし強引にでも残らせようとしたら、俺もこの屋敷から出られない可能性がある位、覚悟を決めている雰囲気をみんなが出していた。フェンリルを討伐してみんなの安全を確保するために、試作したゴーレムP90改めピースを持参するのだ。

 集合時間まで後三十分ほどあるが、準備ができたので集合場所まで行って待機することにした。ウォーホースを馬車につないで出発する。三台の仕立てのいい馬車が並ぶと、街中ではちょっとした見世物のようになるようだった。

 御者台や中に乗っているのが、メイド服を着た娘たちであれば更に興味がわいてくるのも頷けるが、よく見ると武装しているのがわかるので若干街の人たちがひいていた。

 何で冒険者風の装備じゃなく、戦闘メイド服なのかは気になるところだが、安全を考えると冒険者風の装備より戦闘メイド服の方が防御力の面では、圧倒的に上だったりするからだろうか。

 集合場所に到着すると、俺たち以外にも待機しているパーティーがいた。馬車を持っていないのか荷物が積まれていた。緊急クエストになるわけだから、そこらへんはギルドで準備するのかな? 俺たちは自分で管理できるから何の問題もないから気にする必要ないか。

 馬車を収納のカバンに入れて持ち運びできるし、馬車をそのまま寝床としても使えるし三台を三角形に配置すれば、内側に待機したり調理したりするスペースだって問題なくできるから便利である。

 今集まっている人たちは、シングルの冒険者三人・Aランクのパーティーが三組十五人の十八人だった。シングルの冒険者とAランクのパーティーが増えているのは、追加で王都から派遣された後発組らしい。

 重傷を負った冒険者は、冒険者ギルドに保管されていたランクの高いポーションとヒーラーのおかげで、問題なく戦線に復帰できるほどに回復していた。

 シングルの冒険者たちは全員、収納の腕輪持っているので身軽だが、Aランクのパーティーは持っていないので、馬車を持っていた俺たちに道中の荷物を運んでもらえないか交渉に来た。

 収納のカバンを持っているので、ある程度の荷物は運べる事を伝えると値段の交渉をしてきた。

 命令されて持っていくことになるかと思ったが、紳士的な態度で対応してくれたので、空いているスペースを使うのでお金はいらない事を話し、かわりに娘たちに気を配ってほしいとお願いすると喜んで引き受けてくれた。

 Aランクの三パーティーは男女混合なので、何かトラブルがあった際に味方に付いてくれるだろう、という下心込みで荷物運搬を引き受けているので、何かあった際には頼むよと心の中でお願いしておく。

 Aランクのパーティーも、もう少し荷物を持っていけることがわかると、近くの市場に食材を買いに走っていた。おそらく日持ちのする野菜あたりを買いに行っているのだろう。

 ぶっちゃけ、周りから見れば可愛いメイドの奴隷たちがいれば、よからぬことを考える輩は絶対といっていいほどいるので、その保険でAランクパーティーを引き込んだようなものだ。

 集合時間五分前になるとギルドマスターが馬車を何台か引き連れ、御者台や周りにはおそらくCランクパーティーの有志だろうか? 荷物運びを担当するポーターのような存在もちらほら見えた。

「まだ来ていないパーティーがあるが、先に話を進めておこう。今回のSランクの魔物討伐に参加するのは、シングルの3人・Aランクパーティーが3組15人が主力になる。

 サポートとしてBランクが7組49人。その他Cランクパーティーが数チーム馬車の管理の為に獣道の森の入り口で待機する。ポーターとして収納系の魔道具を持っているAランク冒険者が2名近くの街から来てくれたので付き添う形になる」

 遅れてきたパーティーが到着すると、一気に険悪な雰囲気になる。

「あーもう集まってた? 説明してただけだしいいよな? お? 別嬪さんもいるじゃねえか、これは楽しみだ」

 何が楽しみなんだか、うちの娘たちに目を付けていた。手を出すようなら殺す!

「集合時間過ぎてるぞ、きちんと謝れ」

 今回のリーダーに選ばれたシングルの一人の女性が注意すると

「女のくせに生意気だな、まぁ遅れたんだし謝ってはやるよ、すまんな」

 全然気持ちのこもっていない謝罪に、あからさまにイライラした様子を見せるギルドマスターだった。

 ギルドマスターは先ほど説明した内容を遅れてきたBランクパーティー四組に簡単に説明した。聞いてるのか聞いてないのか分からない様子で、うんうんと頷いている感じだった。

 合同で借りている馬車に勝手に荷物を積み込み始めたりと、自分たち中心に動いていると思っている馬鹿どもみたいなやつらだった。

 今回の討伐のリーダーは、リリスというシングルの冒険者だ。残りの二人のシングルも同じパーティーの一員らしい。王都で女性三人組のシングルパーティーといえば、誰もがピンッと来るほど有名とのことだ。

 おそらく前衛のリリス、中衛の遊撃兼ヒーラーのマーニャ、後衛の魔法使いアントのバランスのとれたパーティーだ。

 ギルドマスターの細かい説明が終わり、出発前の最終チェックを始める。俺は娘たちの安全を確保するためにギルドマスターに話を聞きに行った。

「ギルドマスター、今いいですか?」

 何かを察したようで、苦虫をたくさん潰したような表情をして答えてくる。

「何も言わないでくれ。まさか、他の街から来ていたBランクのパーティーが四組た、あんなにマナーの悪いやつらだとは思わなかったよ。無駄に絡んでくるようならリーダーに言ってどうにかしてもらえ。間に合わないようだったら各自の判断で出来る限り穏便に済ませてほしい」

「何となく起こりそうなことは理解してるんですね? もし彼女たちに危害がでるなら手加減なしで殺しますんで、それで何かしらの罪に問われるなら、こちらも遠慮しないですよ? 拒否権のない招集に応じてきてるのに、出先でトラブルに巻き込まれる感じがあるのに対応してくれないわけですからね」

 口調を強くしてギルドマスターに言い放った。

「できれば殺さないでほしい……こちらも色々と面倒になるから頼む」

「では、この招集に対しての拒否権をください」

「それはできない……わかってくれ」

「何かあったときには面倒事を引き受けてくださいね。リーダーにもこちらの対処については、はっきりと伝えておきますので」

「……」

 先ほど交友を深めたAランクのパーティーとシングルの三名に対して、起こりうる可能性の話をする。苦い顔をしていたが全員が全員思い当たる所があるらしく、何かあったら加勢すると言ってくれた。

 準備も終わり出発する段階になって、遅れてきたパーティーがマスターの持ってきた五台の内四台を占領しており、平等に利用できるようにリーダーに言われたが、「早い者勝ちだろ?」と言い放ち聞く耳を持たなかった。

 全員が馬車に乗れるわけではないが、それでもランクの高い冒険者を優先するのがマナーなのだが、それは通じなかった。シングルの三人とAランクのパーティーは、俺たちの馬車と残りの一台に分けて乗ることになった。ちょっと狭いが半日程の距離なので我慢しよう。

 分けて乗り込むと、マナーの悪いBランク共が「俺たちもそっちの馬車に乗せろや」と、娘たちの乗っている馬車へ来ようとしたが、リーダーに「あの馬車がお前らのだろ? 出発するからさっさと戻れ」と言われ青筋を立てて怒鳴っていたが聞く耳持たず出発する。

 マナーの悪いBランク共は、下品な下ネタを娘たちにしていたが、きっぱり無視を決め込んだため不発に終わったことを悔しそうにしていた。

 夜に何かあるのはもう確定だろう。一緒に乗っていたリーダーに声をかけると、早い段階で処理した方がSランク魔物討伐の為になると言いながら、殺意を込めて馬鹿どもを睨んでいた。最後に、聞き取りにくいほど小さな声で、

「殺るなら今夜だな……」
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