ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
60 / 2,518

第60話 娘たちの決断

しおりを挟む
 お風呂から上がって、何となく作ってしまった片手剣を手にもって、ちょっとプチダンジョンの外に出てみる。それっぽい型みたいなのを試してみるが、片手剣のスキルは一応とってある程度でまったく使わないので上げていなかった。そのせいか、何かぎこちない。

 慣れない武器で強い敵と戦うのは遠慮したかったので、魔物が寄ってくる前にプチダンジョンの中へ退避する。

 寝室に行こうとしたところで、カエデに声をかけられた。

「シュウ、その片手剣なに?」

「あークリエイトゴーレムっていう魔法があって、試しに覚えて使ったら作れた剣だよ」

「ちょっと見せて、ふんふん……かなり出来がいい気がするけど何で? それにこれって鉄や鋼鉄じゃないよね、この素材って何?」

「ん~クリエイトゴーレムは、イメージで形を作って魔核で行動プログラムを組んで動かすことができるんだけど、前にやったゲームの片手剣をイメージして作ったらできたんだよね。ちなみに素材は、アダマンタイトだよ」

 ガチャンッ

 カエデが手に持っていた片手剣を落とした。

「シュウってアダマンタイトを加工できるってこと? ドワーフの誰もが加工に成功したことがないって言われてるあの金属を」

「一応、そういう事になるのかな? 使えるか使えないかは別として加工はできるけど、問題は多いね」

「シュウってやっぱりすごいね、私の惚れ込んだ男だけあるね! でも加工するのってやっぱり大変なんだね、どんな問題があるの?」

「魔力をものすごい使うんだ。このサイズの剣を作るのに、俺の魔力の九割ほどを消費してやっと作れたんだよ。大きいものになれば今の魔力じゃ全然足りなくなるから大変だよ。何回かに分けて加工すれば何とかなるのかな? って感じだよ」

「技術より魔力を使うのね、でもその作り方だとエンチャントってあまりつけられないよね? どんな武器でも完成品には、多くて二個くらいしかつけられないからね。

 今確認されてるので、ミスリルを鉱石から素材に加工する時に最大三個、素材から武器に加工する際に最大三個、完成品に最大二個の合計八個が一番多いエンチャントの数だって聞いてるけどね。

 オリハルコンとかは加工に労力を割いてしまうためか、六個くらいが限界になってるって話を聞いたことがあるね。鍛冶の技術が上がればもっと多くのエンチャントがつけられたりするのかな?」

「完成品にも二個くらいならエンチャントつけられるんだ。思ったんだけど、エンチャントって鍛冶の技術より魔法のスキルや技術に影響を受けそうな気がするんだけど気のせいかな?」

「そういわれると、金属でも布でも革でもエンチャントって同じものをつけられるよね、それにエンチャントって鍛冶スキルではなかった。どうやって付けてるんだろ?」

「いや、俺に聞くなって。実際にエンチャントを付与しているお前が知らんのに、エンチャント技術のない俺に分かるわけないだろ」

「それもそうね、今度ゆっくり考えてみよっか。あ、みんなが呼びに来たみたいだよ」

 話が終わった様子で、ピーチが俺のことを探しに来たようだった。食堂へ戻り話し合いの結果を聞くことにした。

 ピーチに呼ばれ食堂に入っていくと、若干暗い顔をした娘たちが座っていた。

 話し合いの結果を聞いて流れを聞いたら暗い顔をしている理由に見当がついた。

 話し合いの結果は、クエストを中断して街へ戻るというものだった。ここに入ったときは何が何でも続行しそうな様子だったのに、何があったのか気になるところだが、話の流れを説明してくれた。

 初めはみんながクエストを続行するつもりでいた。どうやって格上の魔物を倒すかの議論に入っていたが、それまで黙っていたシェリルが「ご主人様がクエストを中断しようと思ってるのに、何で続けようとしてるの?」と質問したところで流れが変わったらしい。

 年長年中組は「戦闘をしてもらうために私たちを買った」「戦闘のできない私たちには価値がないから捨てられてしまう」という主張だった。

 だがシェリルをはじめとした年少組の数名は「ご主人様は、私たちのことを心配して中断しようとしてる」「優しいご主人様がこんなことで私たちを捨てるはずがない」と大きく主張したらしい。

 少し感情的な言い合いになった所にスカーレットが紅茶を持ってきて

「ご主人様はあなたたちのことが大切だから……あなたたちに伝えた後すごく苦悩しているようでした。望まない戦闘を強制してるのではないか、あなたたちの意思で戦闘に参加していることを話しましたが、納得されている様子はうかがえませんでした。

 あなたたちのことを大切にしているからこその考えなのですよ。ご主人様とカエデ様、従魔たちの力があればこの森でも戦闘できるでしょう。これを聞いてあなたたちは、どうするべきだと思いますか?」

 スカーレットからもたらされた情報は、娘たちも感じている所はあったようだ。シュウから言葉で聞いていなかったので、自分たちは戦闘のために買われたから戦闘できないなら必要としてもらえなくなると、強迫観念に近い気持ちに突き動かされたことを認めるきっかけになった。

 戦える力をもらったのに戦えないのは悔しいけど、ご主人様の気持ちを考えると引き返すべきと娘たちの意見が一致することになった。

「冒険者はときに冒険をしなくてはいけないこともあるが、それは今じゃない。この森に異変がおきてるのは確認できた。でも、俺たちの手に負えない魔物が出てきた。無謀な戦闘はする意味がない、撤退する勇気も必要だと思う。

 こんなこと言ってるけど本音は、君たちが今の状況で傷付く必要はない。過保護だと思われてもいい、今はいろんな経験をすることが大切だから、街に戻って今回の事を報告しよう。今日は休んで、明日は街へ帰ろう」

 娘たちが頷いて、寝る支度を始める。今日は年少組の予定だったが、明日には街に帰ることになったので年長組が一緒に寝ることになった。年中組と一緒で、若干距離をあけていたため、ニコとハクが隙間にはまりホクホク顔である。ニコに顔ないけどな。

 翌朝、朝食を食べた後娘達に声をかけて帰り支度をする。支度と言っても、自分の荷物を腕輪に収納してシルキーたちに家具を収納してもらって終わりなんだけどな。後は馬車でも入れるサイズに通路を拡張して、一つ目のベースまで通路をひいてみた。

 ウォーホースに馬車をつけて走ってもらった。娘たちは少し落ち込んでいる様子を見せたが、気持ちを切り替えて戦闘の事を話し合っていた。自分たちに足りないものや、強化すべき点等色々なことを話し合っていた。

 偉そうなこと言ってるけど、俺ってステータスとスキルで娘たちより強いだけで実は戦闘経験って少ないんだよな。元の世界でも武道を習ってたわけじゃないし、バトルもののアニメや漫画は好きだったけどな。

 俺も訓練しないとな、亜人系の魔物で戦闘技術が高いのとかいれば召喚して訓練できるんかな? DPで強引にレベルを上げて召喚できる魔物を強くするのもありか?

 色々考えていると、一つ目のベースにたどり着いていた。馬車をしまって、森の外へとみんなで向かって歩いていく。初日とは違い全く魔物に会う事もなく森の外へ出れた。そこからはまた馬車を使い街の帰路へとつく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...