ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
44 / 2,518

第44話 秘密を知った

しおりを挟む
「「「「「ただいま~」」」」」

 玄関から、ガヤガヤと娘たちが帰ってきた声がした。

 俺の部屋から玄関までは遠いので、食事の時にでもおかえりって声でもかけるかな。後で、どんなところに行ったとか聞いてみようか。若い娘たちがどこに行くとかよく分からないしな。王都みたいにもっと広ければ遊びに行く場所や見て回る場所も多いんだろうけど。

 コバルトが夕食の準備ができたと呼びに来た。

 コバルトについて食堂に入ると、いつものように娘たちがメイド修行の様に食事の配膳をしていた。

 準備も終わり、「いただきます」の掛け声をして食事を始める。

「遅くなったけど、みんな、おかえり。今日は楽しめた?」

「シェリルね、色んなとこ見て回ったの! 色んな食べ物があるところや、お洋服の売ってるとこや、武器防具の売ってるとことか、色んなところ見て回ったの!」

「へ~色々見て回ったんだね、楽しかったかい?」

「ん~楽しかったけど、ご飯はシルキーお姉ちゃんたちの方が全然おいしかったし、お洋服はご主人様がくれたお洋服の方が全然可愛かったし、武器防具もカエデお姉ちゃんが作ってくれたものの方が全然よかったの!」

 シェリルの発言を聞いて、他の娘たちの様子を見てみるとみんな苦笑していた。確かにシルキーたちの飯は美味い! この世界の食事と比べる必要もないくらいに美味い! 調味料の少ないこの世界で、地球の調味料や香辛料を使って作っているのだから不味いわけがない。こう考えると、満腹亭の食事ってレベル高かったな。

「ここの食事は美味しいもんな。それにあの洋服は、伝手で手に入れたもので、そんなに高い物じゃないんだよ。みんなに似合ってるからよかったけどね。武器防具に関してはカエデが作ったものがいいのは当然なんだよ。知らないものを知るっていうのは、大切なことだから色々経験するといい」

 楽しく食事が終わると、ピーチが俺に声をかけてきた。

「ご主人様、お聞きしたいことがあります。私たちは明日からどうすればよろしいのですか? 以前にダンジョンの中で、のうえん? や、ちくさん? を手伝ってもらうような話をしていましたがどういった物なのでしょうか?」

「先日言った様にメイド修行・冒険者活動・休日のローテーションで三つのグループに分かれてもらおうと思ってる。戦闘に問題がないのなら、農園や畜産はしてもらう予定は無かったりするんだけどね」

「ダンジョンの中で、のうえんやちくさんをするから戦闘技術が必要だったのではないですか?」

「そっか、みんなにはそういう風に見えてるわけか、これは失敗したな。どうするかな……ちょっとみんなは食事の片付けをしておいて、終わったらそのまま食堂で待っていてくれ」

 娘たちが返事をすると、カエデとシルキーを連れて廊下に出た。

「どうすっかな、カエデやシルキーはあの娘たちに本当の事教えてもいいと思うか?」

「私は、判断しかねるかな。あんまり深く話してたわけじゃないから何とも言えないかな」

 シルキーたちも何やら簡単に話し合ってスカーレットが代表で口を開く。

「私たちも、判断しかねますね。敵意があるか無いかまではさすがに完全に把握しきれるものではないですからね。判別する方法があれば問題ないのですが」

 敵意を判別する方法か……そういえば、ツルペタのチビ神が『もう! それ言わないでってば! ツルペタで何が悪いのよ! グスン』また覗いてやがったのか、神出鬼没なチビ神だな。

 っていうのは置いといて、チビ神が奴隷について何か言ってた気がするんだよな……解放しても悪意がない限りDPが得られないとかなんとかだっけ? ってことは開放すればわかるのか?

 最悪裏切られたら信用できる娘だけ連れて、どこかに逃げればいいか。そういうことがあれば、次はそうならない様に考えればいいだけだしやってみるか?

「悪意があるか無いかを判別する方法はある。チビ神に召喚されたときに、奴隷から解放しても悪意が無ければDPが発生しないって聞いたのを思い出した。だけど一つ問題がある。解放する方法が分からないんだがどうしたらいいんだ?」

「解放する方法は、首輪を外せばいいだけよ。でも、解放してもし裏切られたらどうするの?」

「そのことだけど、最悪この街を出ればいっかなって思ってる。精霊たちを連れて出るのは目立つだろうけど、この家は潰して世界樹は回収して、ダンジョンは入口塞いで少し深いとこまで移動させれば痕跡は消せるかな? って思ってる。外に出るのは、DPで地下通路でも作って埋めれば問題ないだろうしね」

「この家は気に入ってるけど、他のとこでも専用を作ってくれてシュウと一緒にいられるなら問題はないけどね」

「私達は、ご主人様に仕えることができれば幸せなのであります!」

「じゃぁ解放してDPのチェックしてみるか、それでダンマスの話もしてみてDPが発生するようだったらその時に改めて考えるか」

 カエデとシルキーたちは、俺の意見を聞いて首を縦に振った。話がまとまったので食堂へ戻り娘達を席につかせる。

「えっと、みんなに報告があります。今現在をもって君たちを奴隷から解放したいと思います」

 そう宣言すると、一斉に「私たち捨てられちゃうんですか?」「ご主人様の役に立てないと判断されたのですか?」「シェリル、ご主人様の近くにいたいよ~」などと騒ぎ始めた。

 解放されると聞いて喜んでいる娘は一人もいなかった。何故だろう?

「シュウ、その言い方だとこの娘たちが慌てるのも無理ないわ。この娘たちにとって解放されるってことは、死を意味するようなものだからもうちょっと詳しく説明してあげないとこういう反応になるわよ」

「お、おぅ、そうなのか。言葉が足らなかったようだ。君たちを解放して調べたいことがあるんだ。それで問題が無ければ俺の秘密も話して、今度は自分の意志で俺に仕えてくれると嬉しいな」

「あの、ご主人様。確認が終わったらまた奴隷に戻してもらう事はできないのですか?」

「え? 戻りたいの?」

「はい、ご主人様ほどの方の奴隷であれば、貴族なんかよりよっぽどいい待遇ですし、何より奴隷という身分があると連れ去られたりして奴隷にされる心配がないです。

 一度奴隷になったことある人間は軽く見られますが、奴隷として仕えている主がご主人様のようなお方であればむしろ奴隷という立場でも喜んで仕える人は多いと思います」

「そうなのか、みんなも同じ考えなのかな? 普通に俺に仕えるより奴隷の方がいいのか?」

 見渡すと全員が首を縦に振っていた。

「そうなのか、分かった。奴隷という身分があることで君たちを守れるなら、君たちの願い通りにしよう。でも、俺は奴隷として扱うつもりはないからな。今まで通り一緒に冒険する仲間であったり、一緒の家に住む家族として接するつもりだ」

 娘たちは、声を上げて喜んでいた。奴隷って本当は大変なんだろうな……奴隷商には連れ去られた人はいないから、闇市とかで売りに出されるのだろうか? 値段は解らんがいい扱いを受けないのは間違いないだろ。

 娘たちの首輪をとって奴隷から解放して、DPが発生していないか確認する。誰も発生する事は無かった。

 そのまま俺がダンジョンマスターであることを話すと、娘たちの目がキラキラと光って神様を称えるように恍惚とした表情をしていた。この話を聞いてもDPは0のまま、俺に悪意を持っている娘はいないようだった。

 気は進まないが、娘達が奴隷の首輪を付け直してほしいとお願いしてくるので仕方がなくつけることにした。だけど奴隷の首輪は可愛くないので、見た目の可愛いチョーカータイプの物を新しく召喚してつけることにした。

 首輪を付け直した娘たち全員が、愛おしそうに首輪を撫でていた……危ない人たちに見えなくもないな。

 ピーチから質問のあった農園と畜産について簡単に説明すると、自分たちが食べていたものに使われてる調味料や食材を作っている場所だと知って、「休日は自由な時間なんですよね? その時間で農園や畜産を手伝っても問題ないですよね?」と問われ、無理しない程度なら問題ないことを伝えた。

 あのダンジョンには魔物が出てこないことを伝え、みんなのために召喚していたことも話す。近いうちに、戦闘訓練をかねてレベルを上げるダンジョンも作る事を話したら、シェリルは弾けそうなくらいの笑顔で体全体を使い喜びを表していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...