ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
38 / 2,518

第38話 予想外過ぎ

しおりを挟む
 毎日、食堂で顔を合わせているが、2週間ぶりに訪れたダンジョンの訓練場では、いつもとは違う顔で訓練に取り組んでいた。厳しい訓練と食事の時間の顔が同じというのはおかしいだろうが、そういうことではなく纏っている雰囲気が違うのだ。

 もっと驚いていることといえば、娘たち全員が役割別訓練だけではなく、体術と短剣術を訓練していた。もともと、双剣を訓練していたマリーとチェルシーが中心になって短剣術を教えており、体術に関してはレイリーに教わっていた。

 予想以上にレイリーが万能でありがたい誤算であった。そのレイリーも、ダンジョンで娘たちの相手をしながら訓練しているため、自分自身もダンジョンの影響を受けて成長しているようだ。

 とりあえず、役割別訓練をしてない事が気になったのでレイリーに尋ねてみた。

「シュウ様、娘達はシュウ様の身を守るために全員が索敵と体術、短剣術を使えるようになりたいと言われ、1週間前程から役割別訓練と半々程で訓練しています」

「俺の身を守るために? 索敵と体術と短剣術が関わってくるのか?」

「シュウ様、街中で弓や魔法はご法度ですよね? 大型の武器も振り回すわけにはいきません。それならとこの娘たちは、街中でもシュウ様をお守りできるよう体術と短剣術を学びたいと言われたのです」

「街中を想定した体術と短剣術なのか? そこまでして守ろうと思ってくれてるのか?」

「そうですぞ。娘たちは、シュウ様に本当に感謝しているのです。それこそ自分の身をなげうっても守りたいと。それに、私もシュウ様を守るためなら火の中でも飛び込みましょう」

「ただ普通の生活とはちょっと違うけど、人並みの生活をできるようにはしてはいると思う。苦しい訓練をしてもらってるのに、そこまで慕われる理由が思いつかないな」

「やはりシュウ様は、世間のことに疎い様子ですね。ここで買っていただいた娘たちは、見て分かる通り容姿は整っていて、可愛い綺麗と言ってもおかしくないですよね?

 容姿の整った娘たちは、大体が貴族の慰み者にされてから飽きたら売られるか、部下や小間使いたちの慰み者になって捨てられることがほとんどなんです。

 ですから、自分たちの意志を尊重してくれて、美味しいご飯や綺麗な服、寝床、戦闘するための技術を教えてくださるシュウ様は、神様のような存在なんです」

「よく分からんが、レイリーが言ってるならそうなんだろうな。でも、神様扱いだけはやめてくれな。神の気まぐれでここの近くに強制的に飛ばされてきて、無駄に苦労したから機会があったら殴ってやりたいと思うくらいにはムカついてるんだ」

「了解いたしました。神への暴言は神殿の信者などには聞かれない様にしてください。面倒なことに巻き込まれる可能性が一気に高まりますので注意してください。家の中でとか身内だけでの話であれば何の問題もありませんが」

「おふ、ここにも宗教がらみのめんどくさい事があるのか……触らないようにしないとな」

 ここでもまたフラグを立ててしまったシュウである。

 娘たちの訓練姿を眺めて目の保養をしたのち、ノームに預けていたニコとハクの様子を見にダンジョンの奥へと向かった。

「(ぽよんぽよん)」

「キュゥッ! グルゥゥ」

 ニコはピョンピョン跳ねて、ハクは羽ばたいて近付いてきて鳴き声を上げている。

 シュウの近くまで来たニコは足元をクルクル回った後にまとわりつくように引っ付いており、ハクはシュウの腕の中におさまり顔をこすりつけて撫でて撫でてと要求している。しばらく2匹を撫でていると満足したのか落ち着いていた。

「ノーマン、2匹の成長はどうかな? ダンマスの力の一部を使えるようにして頼んでみたけど、任せっきりになってたから様子を見に来たんだけど、大丈夫か?」

 ちなみにノーマンはノームの事で、シルフはメイ、ウンディーネはアクアと名付けている。

「おぉ、主殿! ニコもハクも順調に育っていますぞ。スキルの宝珠を使って能力向上スキルを覚えているので、特に問題はありませんね。力押しにならない様に能力向上はDPで上げずに育てていましたが、2匹ともこの2週間でLv5まで上げてますね。自身のLvは、57まで上がっています」

「え? もう俺よりLv高いじゃん! ダンジョンでのLv上げがこんなに凄い効果があるなんて、娘たちもメキメキ実力をつけてるから、俺が一番弱くなる日も来るんじゃねえか?」

「それと気になることが一つあります。四大精霊と比べるのは酷ですが、ニコとハクのステータスが異様に高いと思われますので、見ていただけますか?」

「そんなに高いのか? ちょっと2匹のステータス見てみるか……なんだこれ?」

 シュウは、ニコとハクのステータスを見て目が点になっている。

 そこに映し出されていたのは、平均が1600を超える数字だった。数字だけを見れば明らかにAランクの魔物と一対一で戦えるのではないだろうか?

 この世界でSランクの魔物がどの程度の強さか……冒険者でSランクというとAランクの魔物を10匹相手にしても1人で倒せるらしい。そんなシングルの冒険者でも一対一で倒せないらしい。

 ニコとハクがSランクと同等の強さを手に入れられるのかわからないが、この世界に生み出されてまだ二週間程しか経ってないのに、Aランクに到達している2匹に末恐ろしいものを感じている。

 多分、今2匹に襲われたらまず勝てないと思う。2匹が俺に懐いてくれて、ペット扱いで喜んでいることは本当にありがたいことだ。

 ダンジョンを出てカエデのいる工房に向った。

「カエデ~いるか?」

「あれ? シュウじゃない。なに? やっとおそいに来てくれたの? って嘘だから頭つかむのはやめて、ここに来るのも久しぶりじゃない? 何か用事があるのかな?」

「ちょっと相談があってな、依頼してた戦闘メイド服はどんな感じだ?」

「そうね、一応全員分の原型と強化パーツは仕上がったわよ。後は細かい修正と強化パーツの取り付けで完成かな?」

「今から追加で、娘たち全員に手甲と短剣2本ずつ用意できるか? とりあえず数打ちでもいいから何とかならないかな?」

「数打ちと簡単なエンチャントなら、素材さえあれば問題なくできるわよ。だから素材だして、鉄100キログラムとCランク位の革をそれなり、エンチャントの素材があれば作れるよ」

「了解、適当に出しておいとくわ。あそこらへんに置いとくからよろしく。娘たちの装備品の調整が終わったら何か褒美をあげないといけないな、何かほしい物とかないか? 素材でもいいぞ、最近アダマンタイトが召喚できるようになったからそれでもいいぞ、っていってもコストがめっちゃ安いんだけどな」

「アダマンタイト? あんなものもらっても加工なんてできないよ。あれはどんなに熱しても叩いても形すら変えられないんだよ。ダンジョンや神が鍛えたと言われる魔剣以外に加工されたアダマンタイトは無いのよ」

「そういう理由でDPが安いのか、この世界の価値がそのまんまDPに影響されるだっけな。召喚できる様になったアダマンタイト製の武器防具は安い物でも、今まであった武器防具より二桁ほど高い物しかなかった。

 素材としてあるんだから、きっと特殊な加工法とかがあるんだろうな。そのうちチビ神が書いた本とかに載ったりしねえかな?」

「ほしい物か、なんでもいいの? 価値はあるけど高い物じゃないから安心して、シュウの初めてがほしいかな……ジュヴ、いだいがらやべて、ギブギブ……ふ~、今回はいけると思ったのに駄目だったか」

「物で考えてくれ、毎回アイアンクローするのもめんどくさいからな」

「めんどくさいならしなければいいのに! 貴重なものもDPで出せるんだから、私の武器にエンチャントするための手に入りにくい触媒にしようかな。アクアマリンの変異種のレッドマリンかサファイヤの変異種のレッドサファイヤとかある?」

「ちょっと待って、それ以外の宝石も変異種が結構な数ありそうだな、見てみるか?」

「どれどれ、ブラッドダイヤモンドまであるの? シュウこれがほしいできれば2つ欲しいんだけどいい?」

「少し高いけど、今のところ使う予定ないし問題ないよ。ブラッドダイヤモンド2つどうぞ。気になったから聞くけどそれでつけられるエンチャントって何なの?」

「血の宝石って言われてるブラッドダイヤモンドは、ドレイン系のエンチャントがつけれるの。つけようと思ってるのは、MP吸収とスタミナ吸収ね。

 シュウと冒険するようになって能力向上覚えさせてもらったじゃない? あれって魔力でブーストできるから、回復しながらブーストし続けられる戦闘中は、永久機関になれるって寸法ね」

「ふ~~ん、それは確かに使い勝手が良さそうだね。褒美もあげれたし、後は娘たちの装備よろしくね」

 カエデに娘たちの装備を頼んで自分の部屋に戻る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...