ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第37話 娘たちの戦闘訓練

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 役割毎に分かれて戦闘訓練が始まり5日が経った。

 シュウは、娘達の戦闘訓練を見学しにダンジョンに来て首をかしげざるを得なかった。

 娘達がみんな何でここまで動けるのか疑問しか出てこない。

 タンクの訓練をしている4人+1人(避けタンク)の場所では、素人が訓練をしている音ではなかった。武器は、木剣と鉄の盾でタンクの訓練をしているのだが、発している音がおかしかった。

 ドゴンッ! ガキンッ! ドカンッ!

 木剣を鉄の盾で受け止めているとは到底思えない音をしているのだ。まだレベル2とか3の娘が、騎士団の訓練とひけをとらないような激しい訓練をしていたのだ。今まで戦闘したことが無く、体験を含めて6日しか戦闘にかかわってなかったのに熟練者と言わんばかりの動きをしている。

「レイリー、ちょっといいか」

「何でございましょう?」

「いや、何でございましょう? ってこの状況っておかしくない? まだ5日目だよ? 何でこの娘たちがこんなに動けるようになってるの? 素人の動きじゃないし、何よりこの音おかしくないか? 木剣で鉄の盾叩いてる音じゃないよ」

「えっと……シュウ様は、ダンジョンの中では成長が早くなるというのを利用して、ダンジョン内を訓練の場に選んだのではないのですか?」

「ダンジョンにそんな効果があるのか……でも、それにしてもこれは早すぎるんじゃねえかな?」

「そう思わなくもないですが、ダンジョンの中で鍛錬したことのある素人というのが、多分彼女たちが初めてかと思います。なので比べられるものがなく、遅いのか早いのか分かりませんね」

「そりゃそうか、戦闘を始めたばかりの人間がダンジョンで戦闘訓練なんてしないもんな。普通に訓練や魔物狩りをして、ここまで動けるようになるのは何年くらいかかる?」

「そうですね。私の種族でいえば、15歳で訓練を始めたとして半年でしょうか?」

「半年の訓練が6日間ですんでしまったのか、すごい成長速度になるな。成長速度が速くても、経験が追い付かないと痛い目に合うんだよな。俺はそれ以前に覚悟が足りなくて死にかけたからな」

 シュウとレイリーは、ドラゴニュートが戦闘に特化している種族だということを忘れて、半年という数字を疑うこともなく受け入れてしまっていた。

 実際、人間であれば才能のある人間で3年はかかるレベルに、6日で突入してしまっていた。

 実のところ、ダンジョンの中ではすべての種族・精霊・魔物などの成長速度がかなり高い水準まで引き上げられるのである。だから種族による成長の違いがなく、娘たちはほぼ同じ速度で成長しているのだ。

 娘たちのモチベーションは、シュウの役に立ちたいという点と可能なら一緒に冒険をしたいという2点に集約される。そのせいもあって成長速度がさらに高まっている。才能のある人間の訓練3年分が、6日間で済んでしまっていたのだ。

 訓練で得られる強さは、ある程度の限度がある。やはり本当の意味で強くなるためにはレベルやスキルを上げて、それらを使いこなせるようになり経験を積まなければならないのだ。使いこなせる下地を作るための訓練ではあるのだが、ぶっとんだ効果が出てしまっているのは嬉しい誤算だろう。

 次に物理アタッカー・斥候・シーフ・物理デバッファーのグループは9人。ここは、木で作った武器を持って動かない人形(鉄鎧着用)を切りつけたりフェイントを入れての攻撃を行ったりしていた。

 それをみていた同じ組のメンバーが良さそうな所改善した方が良さそうな所を出し合って、攻撃の仕方を修正していた。それを3人1組になりメンバーを交代して、繰り返しているようだった。

 うん、6日目の訓練で行うようなことじゃないな。それが当たり前と言わんばかりに娘たちは、楽しそうに充実したように訓練に励んでいた。

 ここでも木の武器で鉄を叩いているとは思えないような音がしていた。訓練を見に来たときには、鎧がボコボコへこんでおり、レイリーが交換するか悩んでいたのを追記しておく。

 遠距離攻撃の魔法4人と物理2人の6人組を見に行く。弓を使っている2人は、40メートル先にある的、ストラックアウトの様な番号の書いてる板を射抜いていた。

 そして、恐ろしいことに全員が魔法を使えるようになっていた。

 この世界の魔法は、

 火・水・風・土・氷・雷・光・闇・回復の9属性に、重力・空間の特殊属性と精霊魔法にわけられる。他にも特殊魔法はあるが今は秘密にしておこう。

 全員が四属性を扱えるようになっており、その内一つは雷魔法だった。俺が雷魔法を使えるということを知って全員が一番初めに覚えたい、と魔法理論を教えていたアマレロに懇願したとのことだ。

 アマレロは、もともと攻撃魔法が使えたので属性は置いといて、魔法理論と使い方をレクチャーしてもらっていた。もちろんDPで教材になる本を出してお願いしたけどな。

 単体魔法は全員が使えるようになっており、ライムとイリアは経験の差か範囲魔法も使えるようになっていた。

 最後にヒーラーの2人は、初級回復魔法に初級状態異常回復を使えるようになっていた。他にも、初級の能力向上魔法や初級バリアまで使えるようになっていた。ヒーラーのいなかった年少組からイリアが回復魔法も覚えていた。

 魔法に適性が高かったエルフのイリアは、難なく覚えてしまっていた。それに精霊魔法を使えるようになっており、精霊召喚もできるようになっていた。

 一通り見回ってから、娘たち全員に集合をかけた。

「みんな、六日間お疲れ様。普通じゃありえないほどの成長ぶりでビックリしています。強くなっていると実感できても、油断をして一瞬で死んでしまうこともある。おごらずに訓練に励んでほしい。

 予想以上の成長ぶりだけど、当初の予定通り一ヶ月はここで訓練する予定だ。嫌かもしれないが基礎は大事だから、重点的に行おうと思ってるのでよろしく」

「わかりました」

 娘たち全員の声がシンクロしていた。シェリルあたりから文句というかブーブー言われるかと思ったが、そんなこともなかった。

「それと明日で一週間経つから頑張ったご褒美として、冒険者になったときにも使えるような防具をカエデが作ってもらったから、大事に使ってくれ。簡単なエンチャントもかけてあるから、カエデにお礼言っておくように」

「はい」

 シンクロした返事を聞いて、この娘たちはどこへ向かっているのだろうと疑問に思った。俺が一人で行動して危険におちいらない様にするためのパーティーメンバーを集めたのだが、騎士団みたいなのができてしまうのではないだろうか。メイド騎士団……なんてね、そんなのできるわけないか。

 再び、フラグを立ててしまったシュウであった。

 その日の訓練も終わり、食堂で夕食をとった後にまだ紹介できていなかったニコとハクを紹介した。意外だったのが、フェアリードラゴンのハクよりエレメンタルスライムのニコの方が娘たちに人気があった。

 ハクは、ふわふわの体を撫でられグルグル鳴いて手に頭をこすりつけて、もっと撫でて撫でてと要求しているようだった。ニコの方は、娘たちに色んな方向から突っつかれプルプル震えて喜びを表していた。

 ちなみにペット2匹は、俺と毎日お風呂に入って綺麗に洗ってやっているのだ。

 スライムを綺麗に洗うって不思議な感じだが、俺が体を洗っていたら足元で泡に体をこすりつけていたのを見てついでにこすってやったらピカピカになったので、毎日一緒にお風呂に入って体を綺麗に洗ってやっている。

 すったもんだで3週間が過ぎてまた訓練の様子を見に行った。この娘たちは、どこを目指して訓練しているのだろうか。
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