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第3話 街の中へ
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色んな話を聞いていると、自分の順番がきていた。
「ボウズ、この街に何しに来たんだ?」
「えっと、冒険者になりたくて村を飛び出してきました」
「村の名前はわかるか?」
「小さな村だったので、名前はついてなかったです。国の方ではつけていたかもしれませんが、自分は知らないです」
「今時珍しいな。まぁいい、その様子だと街に来るのは初めてだな。この街に入るためには、メルビン男爵領の通行書かギルドカードが必要だ。大銀貨1枚あれば作れるんだが、お金がなくても冒険者ギルドに登録するなら、ギルドからお金を借りれるし問題はないだろう。その前に確認したいことがあるからついてきてくれ」
門の外の詰め所のようなところの入り口を入ってすぐ右手側に不思議な形をした石がある。楽譜を置く台のようなものに石の本が乗っている。
「田舎から出てきたならこれを見るのは初めてだろう。これはな、真実の目って言って名前と歳と称号を確認するための魔導具だ。ある程度大きい街には必ず置いてあるんだぞ。そこの石の本みたいなのに手をのせてくれ」
言われたとおりに石の本へ手をのせる。
「シュウっていうのか、16歳? もっと若く見えるのにな。犯罪の称号もなしっと。特に問題はないな。通行書を発行できるが大銀貨は持っているか? 無いなら冒険者ギルドに一緒に行くことになるけど」
「あ、お金はあります。えっと、大銀貨ってこれですよね。でも、冒険者ギルドには行きたいのでどの辺にあるか教えてもらってもいいですか?」
「それであってるぞ。通行書を作るからちょっと待ってくれ」
しばらくすると、銀色の小さなプレートを持ってくる。
「この部分に血をたらしてほしいから、この針を指先にでもさして血を出してくれ」
針を受け取り、恐る恐る刺す。
「いちっ! 思ったより痛かった」
「ハッハッハ、戦闘で傷つくのとは違うから、痛く感じるんだよな。よし、登録できたな。これで君の通行書は完成だ。無くすとまた大銀貨1枚必要だから気を付けろよ。冒険者ギルドの場所だったな。この門を入ってまっすぐ行った突き当りの大きな建物が冒険者ギルドだ」
「ありがとうございました!」
兵士に礼を言って街の中に入っていく。
街並みは、城壁の中だけあって結構整っている気がする。デザインがバラバラ過ぎて微妙な感じにはなっているが、悪くないんじゃないかな。日本の新旧住宅が入り乱れてるところよりはきれいだしな。
歩いていて思うのは、かすかに糞尿のにおいが漂っている原因が気になる。メインストリートはきれいみたいだが裏道に入ったら臭いが酷いのではないだろうか? 地球でも昔は道にしているところがあったような気がするけどどうだったっけ?
ただ衛生環境はよくないだろうな……現代日本って素晴らしい。特にトイレについては、外国の人が驚くくらいの設備だと聞くしな。
気を取り直して冒険者ギルドに行ってみるか。
しばらく歩くと、冒険者ギルドを発見する、デカいな。なんか衛生環境と建築技術がアンバランスで不可解な感じがする。そういえばここら辺は匂わないな? 街の外側は所得の低い人達の住まいみたいな感じで、トイレの設備も不十分なのだろうか?
両開きの扉を押しあけて中へ入っていく。
時間が分からないが、冒険者の数は少ないと思っていいだろう。広い空間に10人程度の冒険者風の人たちが2~3人のグループで話している。
少ないことはいいことだし、さっさと登録だけ済ませちまうか。今は五つあるカウンターのうち2つしか空いていない。片方は40代くらいのナイスミドルなおじさん、もう片方は20前後の獣耳(猫)がついている!
しかも、めちゃくちゃ可愛いときた。カウンターに可愛い娘を置くのは冒険者のやる気を上げる意味合いでもあるんじゃないかと疑うレベルだ。
カウンターに近付き職員に話しかける。もちろん獣耳のお姉さんだ。
「すいません、冒険者の登録をしたいのですがここでできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。冒険者への登録ですね。少々お待ちください」
そういって、奥へ何かを取りに行って戻ってくる。
「お待たせしました。登録を始める前に自己紹介させてもらいますね。フレデリクの街の冒険者ギルド職員、ミリーといいます。以後、よろしくお願いします。初めに、通行書を出していただいてよろしいですか?」
「あっ! 自分はシュウって言います。よろしくお願いします。えっと、これですよね」
ポケットから通行書を取り出しミリーへ渡す。
「はい、これであっていますよ。情報を書き写しますので少しお待ちください」
通行書と通行書に似たカードを機械にセットして、何やらしている。こういったところは無駄に技術力が高いな。ファンタジー独自の技術なのだろう。おそらく、元の世界で再現できる技術ではないんじゃないだろうか。
「えっと、書き写ししている間に簡単に冒険者について説明していきます。守ってもらうことはそう多くありませんが、法律に触れるようなことはもちろんアウトですので何をしていいわけでもありませんよ」
一つ、冒険者はその地位を使って一般人を脅してはいけない。
一つ、冒険者としてのマナーある行動をすること。
一つ、冒険者同士での争いには、冒険者ギルドは一切関与しない。
一つ、依頼中に法律に触れるような仕事内容が発覚した場合は、速やかにギルドへ報告する。
ミリーさんの話したことをまとめると、おそらくこんな感じの内容で間違っていないだろう。悪さをするな、喧嘩するな、依頼の不正を報告しろってことだな。
「こんな感じですね。分かりましたか?」
「はい、大丈夫です。そういえば講習みたいなことをやっていると聞いたんですが、どういった内容のものがあるんですか?」
「ふふっ、気が早いわね。これから説明しますので焦らなくても大丈夫ですよ」
「講習の内容は、薬草学・魔物の生態・魔法の知識・護衛任務の動き方などがあります。細かいことを話すとたくさんあるのですが、冒険者として持っていてほしい知識としてこれらの講習は受けることを勧めています。登録したての新人の方の死亡率が高かったためギルドの方針として無料で講習を開いています。
もちろん、ただの善意からではありません。死亡率が低くなって優秀な冒険者が増えればギルドとしても稼ぎが増えます。ただ、これとは別に戦闘訓練もありますがこちらは一部有料になっています。
一部というのは、有名な冒険者との訓練の際に発生します。先輩たちの冒険譚や戦闘技術に触れてもらい高みを目指してもらおうという試みの一環です。ギルド職員の戦闘訓練はもちろん無料なので時間がある際には受けてみてください」
ギルドが中心に行っていることは基本的に無料なのか。善意だけじゃないって、そりゃ当たり前だな。色々学べる機会があることは助かるな。
「以上です。朝や夕方の人の多い時間ではできませんが、今のような時間帯であれば色々な事を聞いてくださってかまいません。ただ、専門的になってしまうと私どもも分かりませんので、講習の際に講師の方に質問してください」
「大体理解できたと思います。講習の時間割みたいなものはありますか?」
「言ってませんでしたね、講習は2階で行われています。階段の前にボードがありますのでそこに書いてあります。あっ、書き写しが終了しましたね。
シュウさん16歳!? え? もっと若いかと思ってました。私と2つしか違わないのですね。失礼しました。えっと、通行書を作る際に血を垂らしてもらったと思いますが、またお願いします」
そう言われて針を受け取り、刺す。
「うっつ! やっぱり痛いですねこれ。もっと痛いおもいもしているはずなのに不思議ですね。というか、そんなに幼く見えますか?」
「それ私も分かります。自分でやるのって怖いですよね。シュウさんは、ここら辺では珍しい黒髪黒目で童顔のせいか11~12歳といっても通じますね」
「マジですか……5つもサバよんでも通じるのか、見た目なんて変えられないし、気にしてもしょうがないか。失礼ですが、その耳って動くんですか?」
「え? 獣人にあうのは初めてなのかな? もちろん動きますよ。ほらこの通り」
ピコピコと可愛く猫耳が動いている。
「おぉ……すごい……初めて見たので感激です!」
「おおげさね、この辺りにはいないけど獣人を忌避する人も多いから新鮮な感じね」
「え? 忌避されてるんですか? おのれ、獣耳の良さもわからん連中には、いずれ正義の鉄槌を下してやる!」
「アハハ、そんなこと言う人初めて見たわ。人間の中にも人間の方が偉いという人もいれば、獣人にも同じ考えの人もいるからね。そんな対立が嫌で、共存してる街に来ているのよ。よそから来た冒険者の中には罵声を浴びせてくる人もいるけど、ここをホームにしてる冒険者の人たちが守ってくれるわね」
「そういう人ってどこにでもいるんですね、すいません。嫌な話をさせてしまったみたいで。色々教えてくれてありがとうございました。ついでにというのは変かもしれませんが、食事のおいしい駆け出し冒険者でも泊りやすい宿って知りませんか?」
「ううん、気にしないでいいのよ。こんなに純粋な好意は初めてだから嬉しいわ。そうね、少し高くてもいいなら、ギルドを出て左手に進んで3つ目の宿の満腹亭がおすすめよ。そこが高かったらもう1つ先の森の露っていう宿がいいかな」
「色々ありがとうございました。講義を確認したら行ってみます」
「はい、気を付けてね」
「ボウズ、この街に何しに来たんだ?」
「えっと、冒険者になりたくて村を飛び出してきました」
「村の名前はわかるか?」
「小さな村だったので、名前はついてなかったです。国の方ではつけていたかもしれませんが、自分は知らないです」
「今時珍しいな。まぁいい、その様子だと街に来るのは初めてだな。この街に入るためには、メルビン男爵領の通行書かギルドカードが必要だ。大銀貨1枚あれば作れるんだが、お金がなくても冒険者ギルドに登録するなら、ギルドからお金を借りれるし問題はないだろう。その前に確認したいことがあるからついてきてくれ」
門の外の詰め所のようなところの入り口を入ってすぐ右手側に不思議な形をした石がある。楽譜を置く台のようなものに石の本が乗っている。
「田舎から出てきたならこれを見るのは初めてだろう。これはな、真実の目って言って名前と歳と称号を確認するための魔導具だ。ある程度大きい街には必ず置いてあるんだぞ。そこの石の本みたいなのに手をのせてくれ」
言われたとおりに石の本へ手をのせる。
「シュウっていうのか、16歳? もっと若く見えるのにな。犯罪の称号もなしっと。特に問題はないな。通行書を発行できるが大銀貨は持っているか? 無いなら冒険者ギルドに一緒に行くことになるけど」
「あ、お金はあります。えっと、大銀貨ってこれですよね。でも、冒険者ギルドには行きたいのでどの辺にあるか教えてもらってもいいですか?」
「それであってるぞ。通行書を作るからちょっと待ってくれ」
しばらくすると、銀色の小さなプレートを持ってくる。
「この部分に血をたらしてほしいから、この針を指先にでもさして血を出してくれ」
針を受け取り、恐る恐る刺す。
「いちっ! 思ったより痛かった」
「ハッハッハ、戦闘で傷つくのとは違うから、痛く感じるんだよな。よし、登録できたな。これで君の通行書は完成だ。無くすとまた大銀貨1枚必要だから気を付けろよ。冒険者ギルドの場所だったな。この門を入ってまっすぐ行った突き当りの大きな建物が冒険者ギルドだ」
「ありがとうございました!」
兵士に礼を言って街の中に入っていく。
街並みは、城壁の中だけあって結構整っている気がする。デザインがバラバラ過ぎて微妙な感じにはなっているが、悪くないんじゃないかな。日本の新旧住宅が入り乱れてるところよりはきれいだしな。
歩いていて思うのは、かすかに糞尿のにおいが漂っている原因が気になる。メインストリートはきれいみたいだが裏道に入ったら臭いが酷いのではないだろうか? 地球でも昔は道にしているところがあったような気がするけどどうだったっけ?
ただ衛生環境はよくないだろうな……現代日本って素晴らしい。特にトイレについては、外国の人が驚くくらいの設備だと聞くしな。
気を取り直して冒険者ギルドに行ってみるか。
しばらく歩くと、冒険者ギルドを発見する、デカいな。なんか衛生環境と建築技術がアンバランスで不可解な感じがする。そういえばここら辺は匂わないな? 街の外側は所得の低い人達の住まいみたいな感じで、トイレの設備も不十分なのだろうか?
両開きの扉を押しあけて中へ入っていく。
時間が分からないが、冒険者の数は少ないと思っていいだろう。広い空間に10人程度の冒険者風の人たちが2~3人のグループで話している。
少ないことはいいことだし、さっさと登録だけ済ませちまうか。今は五つあるカウンターのうち2つしか空いていない。片方は40代くらいのナイスミドルなおじさん、もう片方は20前後の獣耳(猫)がついている!
しかも、めちゃくちゃ可愛いときた。カウンターに可愛い娘を置くのは冒険者のやる気を上げる意味合いでもあるんじゃないかと疑うレベルだ。
カウンターに近付き職員に話しかける。もちろん獣耳のお姉さんだ。
「すいません、冒険者の登録をしたいのですがここでできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。冒険者への登録ですね。少々お待ちください」
そういって、奥へ何かを取りに行って戻ってくる。
「お待たせしました。登録を始める前に自己紹介させてもらいますね。フレデリクの街の冒険者ギルド職員、ミリーといいます。以後、よろしくお願いします。初めに、通行書を出していただいてよろしいですか?」
「あっ! 自分はシュウって言います。よろしくお願いします。えっと、これですよね」
ポケットから通行書を取り出しミリーへ渡す。
「はい、これであっていますよ。情報を書き写しますので少しお待ちください」
通行書と通行書に似たカードを機械にセットして、何やらしている。こういったところは無駄に技術力が高いな。ファンタジー独自の技術なのだろう。おそらく、元の世界で再現できる技術ではないんじゃないだろうか。
「えっと、書き写ししている間に簡単に冒険者について説明していきます。守ってもらうことはそう多くありませんが、法律に触れるようなことはもちろんアウトですので何をしていいわけでもありませんよ」
一つ、冒険者はその地位を使って一般人を脅してはいけない。
一つ、冒険者としてのマナーある行動をすること。
一つ、冒険者同士での争いには、冒険者ギルドは一切関与しない。
一つ、依頼中に法律に触れるような仕事内容が発覚した場合は、速やかにギルドへ報告する。
ミリーさんの話したことをまとめると、おそらくこんな感じの内容で間違っていないだろう。悪さをするな、喧嘩するな、依頼の不正を報告しろってことだな。
「こんな感じですね。分かりましたか?」
「はい、大丈夫です。そういえば講習みたいなことをやっていると聞いたんですが、どういった内容のものがあるんですか?」
「ふふっ、気が早いわね。これから説明しますので焦らなくても大丈夫ですよ」
「講習の内容は、薬草学・魔物の生態・魔法の知識・護衛任務の動き方などがあります。細かいことを話すとたくさんあるのですが、冒険者として持っていてほしい知識としてこれらの講習は受けることを勧めています。登録したての新人の方の死亡率が高かったためギルドの方針として無料で講習を開いています。
もちろん、ただの善意からではありません。死亡率が低くなって優秀な冒険者が増えればギルドとしても稼ぎが増えます。ただ、これとは別に戦闘訓練もありますがこちらは一部有料になっています。
一部というのは、有名な冒険者との訓練の際に発生します。先輩たちの冒険譚や戦闘技術に触れてもらい高みを目指してもらおうという試みの一環です。ギルド職員の戦闘訓練はもちろん無料なので時間がある際には受けてみてください」
ギルドが中心に行っていることは基本的に無料なのか。善意だけじゃないって、そりゃ当たり前だな。色々学べる機会があることは助かるな。
「以上です。朝や夕方の人の多い時間ではできませんが、今のような時間帯であれば色々な事を聞いてくださってかまいません。ただ、専門的になってしまうと私どもも分かりませんので、講習の際に講師の方に質問してください」
「大体理解できたと思います。講習の時間割みたいなものはありますか?」
「言ってませんでしたね、講習は2階で行われています。階段の前にボードがありますのでそこに書いてあります。あっ、書き写しが終了しましたね。
シュウさん16歳!? え? もっと若いかと思ってました。私と2つしか違わないのですね。失礼しました。えっと、通行書を作る際に血を垂らしてもらったと思いますが、またお願いします」
そう言われて針を受け取り、刺す。
「うっつ! やっぱり痛いですねこれ。もっと痛いおもいもしているはずなのに不思議ですね。というか、そんなに幼く見えますか?」
「それ私も分かります。自分でやるのって怖いですよね。シュウさんは、ここら辺では珍しい黒髪黒目で童顔のせいか11~12歳といっても通じますね」
「マジですか……5つもサバよんでも通じるのか、見た目なんて変えられないし、気にしてもしょうがないか。失礼ですが、その耳って動くんですか?」
「え? 獣人にあうのは初めてなのかな? もちろん動きますよ。ほらこの通り」
ピコピコと可愛く猫耳が動いている。
「おぉ……すごい……初めて見たので感激です!」
「おおげさね、この辺りにはいないけど獣人を忌避する人も多いから新鮮な感じね」
「え? 忌避されてるんですか? おのれ、獣耳の良さもわからん連中には、いずれ正義の鉄槌を下してやる!」
「アハハ、そんなこと言う人初めて見たわ。人間の中にも人間の方が偉いという人もいれば、獣人にも同じ考えの人もいるからね。そんな対立が嫌で、共存してる街に来ているのよ。よそから来た冒険者の中には罵声を浴びせてくる人もいるけど、ここをホームにしてる冒険者の人たちが守ってくれるわね」
「そういう人ってどこにでもいるんですね、すいません。嫌な話をさせてしまったみたいで。色々教えてくれてありがとうございました。ついでにというのは変かもしれませんが、食事のおいしい駆け出し冒険者でも泊りやすい宿って知りませんか?」
「ううん、気にしないでいいのよ。こんなに純粋な好意は初めてだから嬉しいわ。そうね、少し高くてもいいなら、ギルドを出て左手に進んで3つ目の宿の満腹亭がおすすめよ。そこが高かったらもう1つ先の森の露っていう宿がいいかな」
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