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ゲーム本編
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「レーヴェ様!これからは同じ学舎なので手紙をメイドにこっそり運ばせなくて済むのですね。あっ、そうだ。新しい腹下しの毒が手に入りましたの!今度一緒に誰かに盛ってみませんか?」
中庭の隅でレーヴェと密会したエリーザベトは、会うなり捲し立てた。ずっと話しかけられなかった友人を前に頬を染める姿は、毒を手にしながらでなければ可愛らしい。
(エリーザベトちゃん、原作通り腹黒になっちまったよ……。というか、腹黒同士物凄く話が合うんだよね……ヤバ……。ゲームで散々ヒロインを虐めていた腹黒のエリーザベトは、腹黒のレーヴェと相性バッチリだよね)
正直に言うと、レーヴェに後悔はそこまでない。エリーザベトはこれからシナリオ通りにゲームの主人公を虐めるかもしれない。そうなったらエリーザベトは破滅の一途を辿る。
友人としてそれを止めたいのなら、もっと積極的に腹黒になっていくエリーザベトを止める必要があったのやもしれない。
でも、歩み寄りもしないランベルトにくっついて健気に泣きそうな顔を隠して生きるよりも、吹っ切れて腹黒になりランベルトの婚約者の座を掴むエリーザベトであって欲しかった。ランベルトとエリーザベトの仲が微妙なことを聞きつけてランベルトに取り入ろうとする令嬢を締め上げて、その座を守るエリーザベトは強か。
それに、話がめちゃくちゃ合う。あとエリーザベトの父親は国王派の重鎮でもあるからエリーザベトと接触するメリットがありありなのだった。
反国王派を率いていた外務卿はこの八年の間に病に臥せっている。トップが活動的になれない以上、一派は落ち着いている。この時期がレーヴェにとってチャンスでもある。傀儡として祭り上げられないように内部からじわじわと勢力図を塗り替えていくのだ。
(裏でハンスには随分苦労をかけてしまった。学園生活が救いとなるといいのだが)
なので、これまでの八年間の情勢は変わりない。変わらないように努力していたというべきか。
これまではレーヴェの実力を示し、トップに据えるに相応しいと示し続けた
学園は貴族の子息子女だけではなく、国内の天才達が揃っている。ここで結果を出せば、勢力の旗印として掲げられた王子が実質のトップに立つ絶好のチャンスでもある。
「エリーザベト嬢、これから学園で毎日会えることを楽しみに待っています。あと毒は休講にしたい時学園の教師に盛りましょうね」
「ふふふ、どうやって教師に盛るのかしら?」
「さて、エリーザベト嬢ならどうやって?」
「そうやって手の内を探ろうとしても無駄よ。ふふ」
「最初に聞いてきたのはエリーザベト嬢でしょう?」
「あら、そうだったかしら?」
「まったくお茶目な人ですね」
「レーヴェ様との会話は楽しいですわ!ランベルト様ったら相変わらず訓練がどうとか……おっと、あまり口にしてよろしいことではありませんわね」
「兄上は相変わらず、ですか」
レーヴェの目が細まり、エリーザベトは申し訳なさそうな顔をした。
今でこそ友人という枠だが、それ以前にエリーザベトはランベルトの婚約者であり、ランベルトに恋をしている人間なのだ。
「いつかランベルト様と分かり合える日が来ますわ……悪い人ではないもの。きっと……」
沈んだエリーザベトの声が、レーヴェの耳を通り過ぎていった。
中庭の隅でレーヴェと密会したエリーザベトは、会うなり捲し立てた。ずっと話しかけられなかった友人を前に頬を染める姿は、毒を手にしながらでなければ可愛らしい。
(エリーザベトちゃん、原作通り腹黒になっちまったよ……。というか、腹黒同士物凄く話が合うんだよね……ヤバ……。ゲームで散々ヒロインを虐めていた腹黒のエリーザベトは、腹黒のレーヴェと相性バッチリだよね)
正直に言うと、レーヴェに後悔はそこまでない。エリーザベトはこれからシナリオ通りにゲームの主人公を虐めるかもしれない。そうなったらエリーザベトは破滅の一途を辿る。
友人としてそれを止めたいのなら、もっと積極的に腹黒になっていくエリーザベトを止める必要があったのやもしれない。
でも、歩み寄りもしないランベルトにくっついて健気に泣きそうな顔を隠して生きるよりも、吹っ切れて腹黒になりランベルトの婚約者の座を掴むエリーザベトであって欲しかった。ランベルトとエリーザベトの仲が微妙なことを聞きつけてランベルトに取り入ろうとする令嬢を締め上げて、その座を守るエリーザベトは強か。
それに、話がめちゃくちゃ合う。あとエリーザベトの父親は国王派の重鎮でもあるからエリーザベトと接触するメリットがありありなのだった。
反国王派を率いていた外務卿はこの八年の間に病に臥せっている。トップが活動的になれない以上、一派は落ち着いている。この時期がレーヴェにとってチャンスでもある。傀儡として祭り上げられないように内部からじわじわと勢力図を塗り替えていくのだ。
(裏でハンスには随分苦労をかけてしまった。学園生活が救いとなるといいのだが)
なので、これまでの八年間の情勢は変わりない。変わらないように努力していたというべきか。
これまではレーヴェの実力を示し、トップに据えるに相応しいと示し続けた
学園は貴族の子息子女だけではなく、国内の天才達が揃っている。ここで結果を出せば、勢力の旗印として掲げられた王子が実質のトップに立つ絶好のチャンスでもある。
「エリーザベト嬢、これから学園で毎日会えることを楽しみに待っています。あと毒は休講にしたい時学園の教師に盛りましょうね」
「ふふふ、どうやって教師に盛るのかしら?」
「さて、エリーザベト嬢ならどうやって?」
「そうやって手の内を探ろうとしても無駄よ。ふふ」
「最初に聞いてきたのはエリーザベト嬢でしょう?」
「あら、そうだったかしら?」
「まったくお茶目な人ですね」
「レーヴェ様との会話は楽しいですわ!ランベルト様ったら相変わらず訓練がどうとか……おっと、あまり口にしてよろしいことではありませんわね」
「兄上は相変わらず、ですか」
レーヴェの目が細まり、エリーザベトは申し訳なさそうな顔をした。
今でこそ友人という枠だが、それ以前にエリーザベトはランベルトの婚約者であり、ランベルトに恋をしている人間なのだ。
「いつかランベルト様と分かり合える日が来ますわ……悪い人ではないもの。きっと……」
沈んだエリーザベトの声が、レーヴェの耳を通り過ぎていった。
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