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プロローグ
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「はぁ…」
良太は学校生活に飽きていた。
と言うのも、良太の通っている学校は真面目な校風で通っている。
良太は決して真面目とは言えない性格をしているので教師の言う事全てにつまらなさを感じていた。
「朝からため息吐くと良くないぞ。」
「俺はお前とは違うんだよ、成績2位野郎。」
そんな良太の唯一の喋り相手である真太郎は良太と幼稚園からの仲である。
「どうせこの学校に入学した事を後悔してるんだろ?」
「当たり前だろ!こんな学校来るべきじゃなかった…」
「あのなぁ…家から近いって言う理由でこの学校を選んだのは誰だっけ?」
「はいはい俺ですよ。」
けだるそうな感じで返答をしているが、
良太がこの学校を選んだ実際の理由は真太郎が行くからである。
「なぁなぁ、あの噂知ってるか?」
「知ってるよ。人食い廃校だろ?」
良太が机に突っ伏していると、ふと周りから聞こえてきた。約1ヶ月前から校内で広まっている。
実際に廃校が人を食べるという非科学的な物ではない。
正確には「近くの山奥にある廃校に人を食べる男がいる」という噂だ。
あの会話を盗み聞きしていると良太は暇つぶしがてらその廃校に行こうと考えた。
それ程暇だったのだ。
「嫌だ。」
「なんでだよ!行こうぜ!」
一人では流石につまらないと考え、真太郎を誘ったのだが断られてしまった。
「お前、学校からの話聞いたろ?あそこは他人の土地だから入るなって言ってたろ?っていうかそろそろ腕時計はずせよ。校則違反だぞ。」
良太がつけている腕時計は真太郎があげた誕生日プレゼントだ。
あげてから日がかなり経過している上に、
学校にまでつけてくるので真太郎も疑問に思っている。
「話を逸らすな。お前も分かるだろ?この学校は暇すぎる。最近は特に酷い。」
「だからってお前なぁ…」
「最後まで聞け。」
「お前も気になるだろ?あの廃校。だから俺達で確かめてあの学校の教師共に一泡吹かせてやろぜ!」
「……やっぱり俺は行かない。帰ってきたら武勇伝でも聞かせろよ。」
良太が珍しく説得力のある事を言ったからか、真太郎は少し考える素振りをしたがやはり断った。
「なんだよ!お前なら来てくれると思ってたのに…」
「止めないだけマシだと思えよ。先生には黙っとくから。」
真太郎は良太の誘いは大体断らないので、
まさか断られると思っていなかった良太は久しぶりに幼馴染に腹が立った。
「……帰ってきたら後悔させてやるぞ!行けば良かったなんて言っても知らないぞ!」
実際一人だと話す相手がいないので行かないでおこうと考えていたがムキになり、
こんな事を言ったせいで行くしかなくなってしまった。
「はいはい、頑張れよ。」
「なんだよ。入れないじゃん。」
目的の廃校に来たのは良いものの、廃校は大きい鉄網で囲われていた。
(10メートルくらいか?これは厳しいな。)
なんとか入れないかと模索していると、ふと入れそうな隙間があった。
明らかに不自然な形で、人が何回も出入りしているような跡だった。
普通なら怪しいと疑うのだが、真太郎との会話を根に持ち続けていた良太は特に気にしなかった。
(よし…入るぞ…!)
門は錆びていて半開きのまま開かなかった。
門の隙間から敷地内へと入る。
廃校の敷地は、横20メートル位の小さな運動場があり、草が生い茂っている。
(思ったより雰囲気があるな…)
昇降口を抜けた時だ。
良太は目の前のトイレから異変を感じた。
クッチャ バキッ! ゴリッ!
男子トイレから謎の音が聞こてくるのだ。
(なんだ…?この音?)
(明らかにあそこだけ雰囲気が違う…!)
良太の生存本能が声を出していけないと警報を発している。
今すぐ帰れば良かったのだが、どうしても気になってしまう。
(確認してすぐ帰ろう…。)
良太はトイレのドアを少し開け、隙間を覗くと、
見たことない金髪の男があぐらをかいて何かを食べていた。
男は前を向いているので何を食べているのか分からない。
(なんだあの人…?何してるんだ?)
気になるなら聞けば良いのだが、男は異様なオーラを放っている。
すると男がキョロキョロ首を振り始めた。
(!!?)
その首振りの動作で男が何を食べているのかハッキリと分かった。
(あれは…手…?)
男は人の手を食べていた。5本の指が男の口からはみ出てぷらんぷらんと揺れている。
良太はこの光景を見た途端震えが止まらなくなってしまった。
(ヤバイ…!ここは想像してたよりヤバイ…!)
その時、後ろからカンッ!と物音が聞こえた。
その瞬間良太の体がビクっと跳ねる。
後ろを振り返るが、誰もいない。
そのかわり、さっきまで無かった石が転がっていた。
誰かが良太目掛けて投げたに違いない。
人を食う男は二人いる。
良太は瞬時に思考を巡らせた。
(そうだ、もう一人……!)
気づいた時にはもう遅かった。
さっきまで手を食べていた男はこちらを発見し、ドアのすぐそばまで迫っていた。
男の顔には返り血が付いていて良太の恐怖をより誘った。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
良太は喉が張り裂けんばかりの大声をあげ、
昇降口目掛け全力で走った。
「いったいなんだよっ!コイツはっ!」
昇降口を抜け、運動場までやってきた良太は全力で鉄網を目指し、全力疾走。
良太は高校生で、ある程度は走れるのだが、1メートル前後以上の距離は空かない。
「早く逃げないと!」
運動場を抜け鉄網までやってきた良太は隙間目掛けてヘッドスライディングを決め通り抜ける。
起き上がり尻もちをつき振り返ると、男が血で真っ赤に染まった歯を見せ、悔しそうな表情を浮かべている。
しかし、鉄網より先に行こうとはしない。
「助かったのか…?」
良太に少しだけ安堵の表情が浮き出る。
そして、良太の目には助かった事に対する嬉し涙が流れていた。
涙で前が見えなくなるほどに。
侵入してから逃げるまで5分もかかっていないのだが、良太からすると1時間の出来事のように思えた。
「うわっ!?」
良太は余裕を見せていた。
普通なら早く逃げればいいのに、尻もちをついたその場で嬉し涙を流していた。
良太は涙を流すのに夢中で鉄網の隙間から男に足を掴まれたのに気付かなかった。
男は良太を嘲笑うような眼差しで見ていた。
「クソっ!離せよ!!」
良太は全力で抵抗するが、男の力はとても強く、離れない。
良太は食べられる、死にたくない、と苛烈な勢いで男の手を蹴ったり、暴れ回ったりするが、抵抗虚しくずるずると引きづられていく。
「なんで!どうして俺が…!」
ついに頭が鉄網の隙間を抜け全身戻ってきてしまった。
男の後ろに人影が見える。
(多分さっき石を投げてきた奴だろうな……)
別に良太に余裕はない。
余裕と言うよりは半ば諦めていると言った方が正しい。
男が拳を大きく振りかぶる。
「嫌だ…!死にたくない!死に─」
ここで良太の意識は途絶えた。
プロローグ 完
良太は学校生活に飽きていた。
と言うのも、良太の通っている学校は真面目な校風で通っている。
良太は決して真面目とは言えない性格をしているので教師の言う事全てにつまらなさを感じていた。
「朝からため息吐くと良くないぞ。」
「俺はお前とは違うんだよ、成績2位野郎。」
そんな良太の唯一の喋り相手である真太郎は良太と幼稚園からの仲である。
「どうせこの学校に入学した事を後悔してるんだろ?」
「当たり前だろ!こんな学校来るべきじゃなかった…」
「あのなぁ…家から近いって言う理由でこの学校を選んだのは誰だっけ?」
「はいはい俺ですよ。」
けだるそうな感じで返答をしているが、
良太がこの学校を選んだ実際の理由は真太郎が行くからである。
「なぁなぁ、あの噂知ってるか?」
「知ってるよ。人食い廃校だろ?」
良太が机に突っ伏していると、ふと周りから聞こえてきた。約1ヶ月前から校内で広まっている。
実際に廃校が人を食べるという非科学的な物ではない。
正確には「近くの山奥にある廃校に人を食べる男がいる」という噂だ。
あの会話を盗み聞きしていると良太は暇つぶしがてらその廃校に行こうと考えた。
それ程暇だったのだ。
「嫌だ。」
「なんでだよ!行こうぜ!」
一人では流石につまらないと考え、真太郎を誘ったのだが断られてしまった。
「お前、学校からの話聞いたろ?あそこは他人の土地だから入るなって言ってたろ?っていうかそろそろ腕時計はずせよ。校則違反だぞ。」
良太がつけている腕時計は真太郎があげた誕生日プレゼントだ。
あげてから日がかなり経過している上に、
学校にまでつけてくるので真太郎も疑問に思っている。
「話を逸らすな。お前も分かるだろ?この学校は暇すぎる。最近は特に酷い。」
「だからってお前なぁ…」
「最後まで聞け。」
「お前も気になるだろ?あの廃校。だから俺達で確かめてあの学校の教師共に一泡吹かせてやろぜ!」
「……やっぱり俺は行かない。帰ってきたら武勇伝でも聞かせろよ。」
良太が珍しく説得力のある事を言ったからか、真太郎は少し考える素振りをしたがやはり断った。
「なんだよ!お前なら来てくれると思ってたのに…」
「止めないだけマシだと思えよ。先生には黙っとくから。」
真太郎は良太の誘いは大体断らないので、
まさか断られると思っていなかった良太は久しぶりに幼馴染に腹が立った。
「……帰ってきたら後悔させてやるぞ!行けば良かったなんて言っても知らないぞ!」
実際一人だと話す相手がいないので行かないでおこうと考えていたがムキになり、
こんな事を言ったせいで行くしかなくなってしまった。
「はいはい、頑張れよ。」
「なんだよ。入れないじゃん。」
目的の廃校に来たのは良いものの、廃校は大きい鉄網で囲われていた。
(10メートルくらいか?これは厳しいな。)
なんとか入れないかと模索していると、ふと入れそうな隙間があった。
明らかに不自然な形で、人が何回も出入りしているような跡だった。
普通なら怪しいと疑うのだが、真太郎との会話を根に持ち続けていた良太は特に気にしなかった。
(よし…入るぞ…!)
門は錆びていて半開きのまま開かなかった。
門の隙間から敷地内へと入る。
廃校の敷地は、横20メートル位の小さな運動場があり、草が生い茂っている。
(思ったより雰囲気があるな…)
昇降口を抜けた時だ。
良太は目の前のトイレから異変を感じた。
クッチャ バキッ! ゴリッ!
男子トイレから謎の音が聞こてくるのだ。
(なんだ…?この音?)
(明らかにあそこだけ雰囲気が違う…!)
良太の生存本能が声を出していけないと警報を発している。
今すぐ帰れば良かったのだが、どうしても気になってしまう。
(確認してすぐ帰ろう…。)
良太はトイレのドアを少し開け、隙間を覗くと、
見たことない金髪の男があぐらをかいて何かを食べていた。
男は前を向いているので何を食べているのか分からない。
(なんだあの人…?何してるんだ?)
気になるなら聞けば良いのだが、男は異様なオーラを放っている。
すると男がキョロキョロ首を振り始めた。
(!!?)
その首振りの動作で男が何を食べているのかハッキリと分かった。
(あれは…手…?)
男は人の手を食べていた。5本の指が男の口からはみ出てぷらんぷらんと揺れている。
良太はこの光景を見た途端震えが止まらなくなってしまった。
(ヤバイ…!ここは想像してたよりヤバイ…!)
その時、後ろからカンッ!と物音が聞こえた。
その瞬間良太の体がビクっと跳ねる。
後ろを振り返るが、誰もいない。
そのかわり、さっきまで無かった石が転がっていた。
誰かが良太目掛けて投げたに違いない。
人を食う男は二人いる。
良太は瞬時に思考を巡らせた。
(そうだ、もう一人……!)
気づいた時にはもう遅かった。
さっきまで手を食べていた男はこちらを発見し、ドアのすぐそばまで迫っていた。
男の顔には返り血が付いていて良太の恐怖をより誘った。
「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
良太は喉が張り裂けんばかりの大声をあげ、
昇降口目掛け全力で走った。
「いったいなんだよっ!コイツはっ!」
昇降口を抜け、運動場までやってきた良太は全力で鉄網を目指し、全力疾走。
良太は高校生で、ある程度は走れるのだが、1メートル前後以上の距離は空かない。
「早く逃げないと!」
運動場を抜け鉄網までやってきた良太は隙間目掛けてヘッドスライディングを決め通り抜ける。
起き上がり尻もちをつき振り返ると、男が血で真っ赤に染まった歯を見せ、悔しそうな表情を浮かべている。
しかし、鉄網より先に行こうとはしない。
「助かったのか…?」
良太に少しだけ安堵の表情が浮き出る。
そして、良太の目には助かった事に対する嬉し涙が流れていた。
涙で前が見えなくなるほどに。
侵入してから逃げるまで5分もかかっていないのだが、良太からすると1時間の出来事のように思えた。
「うわっ!?」
良太は余裕を見せていた。
普通なら早く逃げればいいのに、尻もちをついたその場で嬉し涙を流していた。
良太は涙を流すのに夢中で鉄網の隙間から男に足を掴まれたのに気付かなかった。
男は良太を嘲笑うような眼差しで見ていた。
「クソっ!離せよ!!」
良太は全力で抵抗するが、男の力はとても強く、離れない。
良太は食べられる、死にたくない、と苛烈な勢いで男の手を蹴ったり、暴れ回ったりするが、抵抗虚しくずるずると引きづられていく。
「なんで!どうして俺が…!」
ついに頭が鉄網の隙間を抜け全身戻ってきてしまった。
男の後ろに人影が見える。
(多分さっき石を投げてきた奴だろうな……)
別に良太に余裕はない。
余裕と言うよりは半ば諦めていると言った方が正しい。
男が拳を大きく振りかぶる。
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