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14、クッキーチケット
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もうすぐクリスマス。イブのこの日、幼い姉弟は、近所のお姉さんからクリスマスツリーの形をしたクッキーをもらいました。
「このクッキーはね、クリスマスの魔法がかかったお菓子だから、食べるとクリスマスの世界に行けちゃうチケットなのよ」
「ほんとう?」
「いついけるの?」
「どんなところ?」
「ツリーがいっぱいある?」
八歳の姉と五歳の弟は、目を輝かせて彼女に詰め寄ります。
「どうかしらね。クリスマスの世界って広いから、どのコーナーで遊ぶかはわからないわ」
「どうやって行けるの?」
「クッキーを食べた日の夜、夢の中で電車に乗るの。そうしたら行けるわ」
その日の夜、二人は夕飯のあとにクッキーを食べ、それぞれのベッドで眠りにつきました。
翌朝、起きるなり二人の子供が母親のところに突進してきました。
「お母さん、ぼく電車に乗ったよ」
「お母さん聞いて、私も電車に乗れたのよ」
「二人とも朝から何の話?」
「昨日話したでしょ。近所のお姉さんからもらったクッキーの話」
娘はぴょんぴょん跳ねながら言いました。
「ああ、そうだったわね。夢の中の電車に乗るんだったかしら」
「そうだよ。それでぼくもちゃんと乗ったんだ。お姉ちゃんも乗れたの?」
「乗れたわ。それでどの駅で降りればいいか最初わからなくて」
弟も姉のまねをしてぴょんぴょん跳ねています。
母親は興奮冷めやらぬ二人の子供を落ち着かせ、まずは顔を洗ってきなさいと背中を押しました。
「それでね、ぼくが行ったところは電車のおもちゃがいっぱいあってね。飛行機にも乗れてね。自分で操縦もできるんだよ」
「私のところはいっぱいお人形さんがいたの。お人形さんと同じ服を着たりね。お話も出来たのよ」
ご飯を食べている間も子供たちの話は止まらず、二人はずっと夢の話を続けました。
「ぼくはそのあと、また違う電車に乗って、違うところで降りたんだ」
「私もよ。それでまた違うところへ行ったの」
食後は姉弟が二人で盛り上がってくれたので、母親は食後の片付けが楽に出来ました。
「いろんな坂を歩く練習もしたんだよ」
「私もよ。あれは屋根から落ちないようにするための練習なのよね。サンタさんが言ってたわ」
掃除機をかけている間、二人は揃ってきいてきいてとずっと話かけてきたので、母親は、まあそうなの、と相づちをうちながら軽く聞き流していました。
「つるつるすべる坂は上った? 緑色で雪が積もってるところ」
「上ったわ。途中で何度も落ちちゃったけど」
「ぼくも何度も落っこちちゃったよ。でも痛くないんだよね」
「下まで落ちるとぽーんって飛ばされるのよね」
「うん、あれ楽しかった」
また二人で話し始めたので、母親は洗濯に取りかかります。
「ぼくはね、トナカイにも乗ったんだ」
「私もよ。そりにも乗ったし、サンタさんとも話したわ」
「ぼくもだよ。サンタさんと木登り競争もしたんだ」
「サンタさんが木に登るの?」
「そうだよ。すごく速いんだ。登るの得意なんだって」
「わたしはサンタさんとケーキ作ったわ。妖精さんが一緒に手伝ってくれてね。みんなで一緒に食べたのよ」
二人は本当にずっと話していました。子供の想像力は尽きないなと思いながら、母親はのんびりテレビを見ていました。
そろそろ夕食の時間です。母親は子供たち二人を連れて、買い物に出かけます。
「今日はチキンにしようか」
「ポテトもね」
「私はウィンナーがいいわ」
「わかったわ。じゃあポテトとウインナーとチキンね」
買い物をして帰ってくると、クッキーをくれたお姉さんと会いました。
「昨日はどうも。あなたからもらったクッキーのおかげで、子供たちはもう大騒ぎしちゃって」
「楽しんでくれたなら良かったわ」
「すっごく楽しかったよ。ぼくね、何回も電車に乗ってね、何回も違う駅で降りたんだよ」
「私もよ。いっぱい違う駅で降りたのよ。それでまた違う電車に乗り換えたの。すごいでしょ」
「本当? すごいわね」
喜ぶ子供たちの笑顔に、近所のお姉さんも頬が緩んでいます。
「二人とも朝から大興奮で、ずっと話してるのよ」
「そうよね。懐かしいわ。最後にクッキーチケット食べたのいつだったかしら。あなたは覚えてる?」
当然のように聞いてくるご近所さんに、母親は言葉に詰まります。
「ええっと、覚えてないわ。食べたことないのかも」
「そんなわけないじゃない。あなたの話を思い出したから、私もこの子たちにあげようって思ったんだもの」
母親は驚きました。そんな記憶はないからです。
「そんなこと言ったかしら」
「言ってたわよ。あなたも電車に乗ったんでしょう」
「そうなの? お母さんも乗ったの?」
「お母さんもサンタさんと話したの?」
子供たちが会話を聞いて瞳を輝かせています。母親は困ってしまいました。
「全然覚えてないわ」
「まあ私も詳しくは覚えてないけどね。子供の頃の話だし。クッキーをもらったことは覚えてるんだけど」
「ちょっと待って。そのクッキーは誰からもらったの?」
「近所のお姉さんよ」
「もらったクッキーを子供たちにあげたの?」
「ああ、もらったのは私が子供の頃の話。その子たちにあげたのはデパートで買ったクッキーよ」
「デパートでクッキーチケット売ってるの?」
聞いていた姉が尋ねました。
「売ってるのは普通のクッキーよ。缶に入ったやつね。でもその中に、クッキーチケットが紛れてることがあるでしょ。手に入れた人は子供にあげなきゃいけないの。で、私の場合、子供はいないから、近所のあなたたちにあげればいいのねってわかったの」
初耳の情報に母親は唖然としてしまいました。そんな話は聞いたことがありません。
「そんなの、どうやってクッキーチケットだってわかるの?」
「見ればわかるじゃない。見た瞬間映像が飛び込んでくるっていうか、瞬間的にわかるのよ。私も実物見るまでは思い出しもしなかったけど、いつだったか誰かに聞いたことを思い出したのよね突然」
母親はぽかんとしたまま立ち尽くしていました。近所のお姉さんはその間に子供たちに手を振って、自宅へ帰って行きました。
「お母さん、入らないの?」
子供の声に我に返った母親は、ええそうねと言って家に入りました。リビングの椅子に腰かけて記憶を辿ってみます。クッキーチケットという言葉も聞いたことがなければ、彼女とそんな話をした記憶もありません。彼女の言うように忘れているだけなのでしょうか。母親は戸惑いました。
「ねえねえお母さん。お母さんはどこで遊んだの」
「え? 何が?」
「クッキーチケットでサンタさんのとこに行ったんでしょう」
「ぼくたちみたいに坂登ったり、電車乗ったりしたんでしょう」
「ああ、ええ、そうね、たぶん。そんなことがあったようななかったような」
やはりそんな記憶はないような。
「ねえねえ、あそこは行った? 青いトンネルと赤いトンネルの間にある白いツリーのとこの、オレンジと黄色のバラがある湖のお菓子の家」
「ちょっと待って、情報が多いわ」
娘の言葉に母親は止めに入ります。
「ええ? そんなとこあった? 青いトンネルはあったけど、その隣は緑のトンネルだったよ。ツリーが赤だった」
「そんなはずないわ。ちゃんと覚えてるもの。白いツリーが珍しいからはっきり覚えてるの」
「白いツリーなんてなかったよ」
「私の行ったとこにはあったわ。アンタは別のとこに行ったんじゃない?」
「そうかも。お菓子の家はチョコのクッキーあった?」
「屋根のとこにね」
「ぼくは椅子だった。屋根はパンだったもん」
「じゃあやっぱり違う場所なのね」
「そうだね」
「お母さんはお菓子の家行った?」
次々出てくる情報に母親は混乱しました。
「行ってない、と思うけど」
「じゃああのお人形のお洋服は着た? ピンクのレースのワンピースで、あのくるくる回るとこで踊ると雪が降るの」
「行った! 行ったわ! そこ私も知ってる!」
母親は叫んでいました。自分でもびっくりするほどの声量で。はっとして口を押さえましたが、脳裏に浮かんできた遠い記憶に、興奮の波が押し寄せてきます。
「そうよ、そうだわ。私も昔クッキーチケットもらったわ。確か近所のお姉さんに」
「やっぱりお母さんも行ってたのね」
「ぼくたちと一緒だね」
母親の頭に次々と懐かしい記憶がよみがえります。
「ぬいぐるみがいっぱいいたのよ。それで……確かツリーの飾りつけをみんなでしたの」
「そのぬいぐるみさんってくまさん?」
「そうね、くまさんだったわ。茶色で耳がチェック柄で」
「それって『ベアマイミー』?」
娘の発言に母親は目を見開きました。
「どうしてその名前を知ってるの」
「サンタさんが言ってたの。君のお母さんは、くまのぬいぐるみをすごく気に入って、ずっと抱きしめてたって。『ベアマイミー』って名前つけてたって」
「その名前ならぼくも知ってる。一緒に飛行機乗ったくまのぬいぐるみが『ベアマイミー』って名前だった」
母親の口許がほころびます。頬が緩み、満面の笑みがこぼれました。遠い昔の記憶が、普段は忘れていたはずの思い出が、今鮮やかに蘇ります。
「お父さんも行ったことあるかな」
「あるわよきっと。帰ってきたら聞いてみよう」
「そうね。あるわよ絶対。もし忘れていても私みたいに、話していくうちに思い出すわよ」
父親が帰ってくると、今度は三人でクッキーチケットの話をしました。最初は母親と同じように聞き流していた彼も、途中から記憶が蘇ってきたらしく、「俺も行ったことあるぞ」と興奮気味に話し出しました。
「このクッキーはね、クリスマスの魔法がかかったお菓子だから、食べるとクリスマスの世界に行けちゃうチケットなのよ」
「ほんとう?」
「いついけるの?」
「どんなところ?」
「ツリーがいっぱいある?」
八歳の姉と五歳の弟は、目を輝かせて彼女に詰め寄ります。
「どうかしらね。クリスマスの世界って広いから、どのコーナーで遊ぶかはわからないわ」
「どうやって行けるの?」
「クッキーを食べた日の夜、夢の中で電車に乗るの。そうしたら行けるわ」
その日の夜、二人は夕飯のあとにクッキーを食べ、それぞれのベッドで眠りにつきました。
翌朝、起きるなり二人の子供が母親のところに突進してきました。
「お母さん、ぼく電車に乗ったよ」
「お母さん聞いて、私も電車に乗れたのよ」
「二人とも朝から何の話?」
「昨日話したでしょ。近所のお姉さんからもらったクッキーの話」
娘はぴょんぴょん跳ねながら言いました。
「ああ、そうだったわね。夢の中の電車に乗るんだったかしら」
「そうだよ。それでぼくもちゃんと乗ったんだ。お姉ちゃんも乗れたの?」
「乗れたわ。それでどの駅で降りればいいか最初わからなくて」
弟も姉のまねをしてぴょんぴょん跳ねています。
母親は興奮冷めやらぬ二人の子供を落ち着かせ、まずは顔を洗ってきなさいと背中を押しました。
「それでね、ぼくが行ったところは電車のおもちゃがいっぱいあってね。飛行機にも乗れてね。自分で操縦もできるんだよ」
「私のところはいっぱいお人形さんがいたの。お人形さんと同じ服を着たりね。お話も出来たのよ」
ご飯を食べている間も子供たちの話は止まらず、二人はずっと夢の話を続けました。
「ぼくはそのあと、また違う電車に乗って、違うところで降りたんだ」
「私もよ。それでまた違うところへ行ったの」
食後は姉弟が二人で盛り上がってくれたので、母親は食後の片付けが楽に出来ました。
「いろんな坂を歩く練習もしたんだよ」
「私もよ。あれは屋根から落ちないようにするための練習なのよね。サンタさんが言ってたわ」
掃除機をかけている間、二人は揃ってきいてきいてとずっと話かけてきたので、母親は、まあそうなの、と相づちをうちながら軽く聞き流していました。
「つるつるすべる坂は上った? 緑色で雪が積もってるところ」
「上ったわ。途中で何度も落ちちゃったけど」
「ぼくも何度も落っこちちゃったよ。でも痛くないんだよね」
「下まで落ちるとぽーんって飛ばされるのよね」
「うん、あれ楽しかった」
また二人で話し始めたので、母親は洗濯に取りかかります。
「ぼくはね、トナカイにも乗ったんだ」
「私もよ。そりにも乗ったし、サンタさんとも話したわ」
「ぼくもだよ。サンタさんと木登り競争もしたんだ」
「サンタさんが木に登るの?」
「そうだよ。すごく速いんだ。登るの得意なんだって」
「わたしはサンタさんとケーキ作ったわ。妖精さんが一緒に手伝ってくれてね。みんなで一緒に食べたのよ」
二人は本当にずっと話していました。子供の想像力は尽きないなと思いながら、母親はのんびりテレビを見ていました。
そろそろ夕食の時間です。母親は子供たち二人を連れて、買い物に出かけます。
「今日はチキンにしようか」
「ポテトもね」
「私はウィンナーがいいわ」
「わかったわ。じゃあポテトとウインナーとチキンね」
買い物をして帰ってくると、クッキーをくれたお姉さんと会いました。
「昨日はどうも。あなたからもらったクッキーのおかげで、子供たちはもう大騒ぎしちゃって」
「楽しんでくれたなら良かったわ」
「すっごく楽しかったよ。ぼくね、何回も電車に乗ってね、何回も違う駅で降りたんだよ」
「私もよ。いっぱい違う駅で降りたのよ。それでまた違う電車に乗り換えたの。すごいでしょ」
「本当? すごいわね」
喜ぶ子供たちの笑顔に、近所のお姉さんも頬が緩んでいます。
「二人とも朝から大興奮で、ずっと話してるのよ」
「そうよね。懐かしいわ。最後にクッキーチケット食べたのいつだったかしら。あなたは覚えてる?」
当然のように聞いてくるご近所さんに、母親は言葉に詰まります。
「ええっと、覚えてないわ。食べたことないのかも」
「そんなわけないじゃない。あなたの話を思い出したから、私もこの子たちにあげようって思ったんだもの」
母親は驚きました。そんな記憶はないからです。
「そんなこと言ったかしら」
「言ってたわよ。あなたも電車に乗ったんでしょう」
「そうなの? お母さんも乗ったの?」
「お母さんもサンタさんと話したの?」
子供たちが会話を聞いて瞳を輝かせています。母親は困ってしまいました。
「全然覚えてないわ」
「まあ私も詳しくは覚えてないけどね。子供の頃の話だし。クッキーをもらったことは覚えてるんだけど」
「ちょっと待って。そのクッキーは誰からもらったの?」
「近所のお姉さんよ」
「もらったクッキーを子供たちにあげたの?」
「ああ、もらったのは私が子供の頃の話。その子たちにあげたのはデパートで買ったクッキーよ」
「デパートでクッキーチケット売ってるの?」
聞いていた姉が尋ねました。
「売ってるのは普通のクッキーよ。缶に入ったやつね。でもその中に、クッキーチケットが紛れてることがあるでしょ。手に入れた人は子供にあげなきゃいけないの。で、私の場合、子供はいないから、近所のあなたたちにあげればいいのねってわかったの」
初耳の情報に母親は唖然としてしまいました。そんな話は聞いたことがありません。
「そんなの、どうやってクッキーチケットだってわかるの?」
「見ればわかるじゃない。見た瞬間映像が飛び込んでくるっていうか、瞬間的にわかるのよ。私も実物見るまでは思い出しもしなかったけど、いつだったか誰かに聞いたことを思い出したのよね突然」
母親はぽかんとしたまま立ち尽くしていました。近所のお姉さんはその間に子供たちに手を振って、自宅へ帰って行きました。
「お母さん、入らないの?」
子供の声に我に返った母親は、ええそうねと言って家に入りました。リビングの椅子に腰かけて記憶を辿ってみます。クッキーチケットという言葉も聞いたことがなければ、彼女とそんな話をした記憶もありません。彼女の言うように忘れているだけなのでしょうか。母親は戸惑いました。
「ねえねえお母さん。お母さんはどこで遊んだの」
「え? 何が?」
「クッキーチケットでサンタさんのとこに行ったんでしょう」
「ぼくたちみたいに坂登ったり、電車乗ったりしたんでしょう」
「ああ、ええ、そうね、たぶん。そんなことがあったようななかったような」
やはりそんな記憶はないような。
「ねえねえ、あそこは行った? 青いトンネルと赤いトンネルの間にある白いツリーのとこの、オレンジと黄色のバラがある湖のお菓子の家」
「ちょっと待って、情報が多いわ」
娘の言葉に母親は止めに入ります。
「ええ? そんなとこあった? 青いトンネルはあったけど、その隣は緑のトンネルだったよ。ツリーが赤だった」
「そんなはずないわ。ちゃんと覚えてるもの。白いツリーが珍しいからはっきり覚えてるの」
「白いツリーなんてなかったよ」
「私の行ったとこにはあったわ。アンタは別のとこに行ったんじゃない?」
「そうかも。お菓子の家はチョコのクッキーあった?」
「屋根のとこにね」
「ぼくは椅子だった。屋根はパンだったもん」
「じゃあやっぱり違う場所なのね」
「そうだね」
「お母さんはお菓子の家行った?」
次々出てくる情報に母親は混乱しました。
「行ってない、と思うけど」
「じゃああのお人形のお洋服は着た? ピンクのレースのワンピースで、あのくるくる回るとこで踊ると雪が降るの」
「行った! 行ったわ! そこ私も知ってる!」
母親は叫んでいました。自分でもびっくりするほどの声量で。はっとして口を押さえましたが、脳裏に浮かんできた遠い記憶に、興奮の波が押し寄せてきます。
「そうよ、そうだわ。私も昔クッキーチケットもらったわ。確か近所のお姉さんに」
「やっぱりお母さんも行ってたのね」
「ぼくたちと一緒だね」
母親の頭に次々と懐かしい記憶がよみがえります。
「ぬいぐるみがいっぱいいたのよ。それで……確かツリーの飾りつけをみんなでしたの」
「そのぬいぐるみさんってくまさん?」
「そうね、くまさんだったわ。茶色で耳がチェック柄で」
「それって『ベアマイミー』?」
娘の発言に母親は目を見開きました。
「どうしてその名前を知ってるの」
「サンタさんが言ってたの。君のお母さんは、くまのぬいぐるみをすごく気に入って、ずっと抱きしめてたって。『ベアマイミー』って名前つけてたって」
「その名前ならぼくも知ってる。一緒に飛行機乗ったくまのぬいぐるみが『ベアマイミー』って名前だった」
母親の口許がほころびます。頬が緩み、満面の笑みがこぼれました。遠い昔の記憶が、普段は忘れていたはずの思い出が、今鮮やかに蘇ります。
「お父さんも行ったことあるかな」
「あるわよきっと。帰ってきたら聞いてみよう」
「そうね。あるわよ絶対。もし忘れていても私みたいに、話していくうちに思い出すわよ」
父親が帰ってくると、今度は三人でクッキーチケットの話をしました。最初は母親と同じように聞き流していた彼も、途中から記憶が蘇ってきたらしく、「俺も行ったことあるぞ」と興奮気味に話し出しました。
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