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XLVIII 皆の「力」①

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 純生が笑顔で拍手するが、ノリノリで拍手を返す者はいなかった。いや、博也や幽子は楽しげに返していた。
「つまり、これから作戦を立てるために今回参加するメンバーたちの魔法情報を共有しておこう、ということっスか?」
「そゆこと~ん。野次路チャンは理解が早くて助かるよぉ。」
 純生はわざとらしい考え込む仕草をして、凛泉を指差した。それに反応するように凛泉は中指を立て返す。
「じゃあまずは赫田チャンからお願いできるん?」
「はぁ!?なんで私!?」
「だってメンバー内でもすぐ魔法のことバラすからみんな知ってるでしょん?」
凛泉が部屋にいた他の魔法使いメンバーを見渡す。大体が小さくうなづいていた。
「えぇ…めんどくさ…。まぁ、空ちゃんの助けにもなるだろうし別にいいけどよ…。」
「え?私の?」
 そう言った空の頬を凛泉は指でつっつく。
「そりゃそうでしょ。空ちゃんの魔法は他の魔法への理解度が必要不可欠。私の魔法は単純そうに見えて複雑な部分もあんだから、ちゃんと話聞いとけよー?」
「わ、わかったらつっつかないでよ~。」
 純生に手招きされ、不服そうな顔で凛泉はホワイトボードの前に立つ。教壇のようなものに肘をついてダリーめんどくせーと声を漏らしていた。
「え、も、もしかして前に立って発表ですか…!?」
 なぜか真っ先に前に立った凛泉よりも暁子が震えていた。
「んま、みんなと共有できるところは共有しときたいからね~ん。」
「いいから始めっぞコラ。」
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赫田かくた 凛泉りの
魔法名[血液操作]
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「んま、シンプルに私の魔法は血を操る魔法。段階的には出血した血を操作する『操血そうけつ』、凝固させて武器や装備を作る『凝血ぎょうけつ』をメインとした使い方をしてんな。凝血を体に纏ってる戦闘形態が『凝血外殻がいかく』ってヤツね。」
「まあ私は普段フィーリングでやってるけど。あ、あと『造血ぞうけつ』って呼んでるんだけど、消費した血の四分の一を体内で生成できる。」
「ただ、造血は血を造り続けるでとんでもなく体力を消費すっから同時に消費し続けたら私は速攻で死ぬ。私から言える説明はこんなもん。これで良いんだろ?」
 凛泉は気だるそうに純生を見る。純生は満足そうな笑顔で微笑んで親指を立て、凛泉はまた中指を立て返した。
「んじゃ、次は碧射やれよ。どうせなら空ちゃんと絡んだことあるヤツ先に説明させて、後半は面識ないヤツの方が後から交流しやすくて楽だろーよ。逆に空ちゃんは新人だし最後の方でいいべ。」

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野次路のつみち 碧射あおい
魔法名[弾道制御]
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「まあそうは言っても、俺の[弾道制御]については、もう説明不要だと思うが…わかったよ、やるからその顔をやめろ、空…。」
「やるとは言ったが能力は至ってシンプルだ。し『自分の飛び道具を自在に操る』、これに尽きる。銃弾は勿論、手投げの爆弾なども含まれる。」
「シンプルとは言いますけど、碧射さんの驚異的な視力も含めて強い能力ですよね…。」
「これも魔法の副作用みたいなものなんだ。元から目は良い方だったが、今は2kmくらい先までなら見える限り確実に当てられる。狙った対象以外でも何かに当たれば効果は消える。ルナの魔法と違って初速を超えることはないから魔人相手には火力不足が問題となることもあったが…。」
 碧射はイプシロンがそばに置いていたIW-17α[Allegro]の入ったケースを見る。
「今回は新しい武装を託された。これなら俺の欠点である火力不足を補うのに充分すぎる力を発揮してくれるだろう。」
「キュイィーッ!」
「おっと…そうだな。ジュラの魔法についても説明しておこう。ジュラの魔法は[能鷹隠爪のうよういんそう]、純粋な肉体のパワーアップ能力で、俺にとっては頼りになる可愛い相棒だ。」
「キュィーッ」
「凛泉、可愛い相棒って言葉でそのゴミを見るような目をしてるんだろうがやめてくれ。素直に傷つく。」

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標木しるしき まなぶ
魔法名[情強改竄じょうきょうかいざん
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「え、次オレ?アイちゃんじゃーねーの?あー…あの子はナビ担だから北海道こっちにいねーんだったかー…。おーけー、じゃ、オレの魔法な。」
「オレのは[情強改竄]な。結論で言えば能力上昇のテレパシーなんだが、性質はどーも単純じゃねー。」
「人には、感情がある。強い想いは人に『バフ』を発生させんだ。勇敢に立ち向かえば攻撃は強くなるし、怯えてしまえばソレはもちろん鈍る。オレはその心を弄らせてもらって、身体の強化を発生させンだ。」
「ところがそのテレパシーってのも声じゃねー。ただがんばれーって声すんじゃねー…『文字』さ。心を揺さぶる感動の文学作品を、頭ン中に直接ブチ込むんだよ。『現代人では理解できない、圧縮言語』でな。」
「人の本能はそんな謎言語も受容するらしいが…ンなわけで、感情豊かな人間には効きやすい。そうでなくてもオレが相手を理解してればそれほど効きやすいってこったな。」
「ほんじゃ終わり…っと。あと補足。テレパシーみたいなもんだから、ドーム状に効果範囲が決まってる。『着信拒否』みたいなことも相手側からできちまう…そんな欠点がある。魔法コレについちゃ数年研究し続けてきたが、結局は身体能力の向上は「思い込み」なんだよなー…とまぁ、本当にコレくらいだな。」
「てか、オレ元々暴力少女だったんだぜ?何でオレくらいしかまともにサポート系いないの?」

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代々木よよぎ 息吹いぶき
魔法名[煙々羅えんえんら
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「タバコの煙を操る魔法。…うるさいぞー凛泉、ヤジを飛ばすんじゃない。これ以上も以下もないんだよ私の魔法は。肺活量やベーだろって?それは自前だバーカ。」

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たまき はじめ
魔法名[テレポート]
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 はじめの魔法についての話だというのに、そこには変わらず息吹が立っていた。
「はじめはだらけて部屋で寝てるので息吹さんが代わりに説明しましょー。」
「あの子の魔法は[テレポート]、人差し指で触れた場所…両手で2箇所ずつ登録してそこにテレポートする。テレポート時に触れてる人がいた場合は一緒に移動できるみたいだよ。…幽子、足も含めたら4箇所じゃんとか言わない。足の人差し指は反映されないよ。…私は知らんが。」

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御剣みつるぎ 志真しま
魔法名[剣の舞]
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「次、私なの?あぁ、執事くんやティナちゃんはいないものね…。[剣の舞]は4本の剣を無から形成して、浮かせたり飛ばしたり自由に操れる魔法よ。まあ説明できることはこれくらいだけど…あとは、スピードはあるけれどパワーはあまりない、てことくらいかしら?」

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 蓮実はすみ 一華いちか
魔法名[血失けっしつ強化]
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「私の魔法は出血量が多ければ多いほど身体能力が上がる魔法です。前に確かめたら、50mLくらい失った時点でコンクリートを素手で壊せるくらいは…幽子ちゃん今「出血大サービスゴリラ」って言ったでしょ。聞こえてるよ。」
「凛泉ちゃんの魔法と同じ扱いされがちだけど、私は造血なんてできないから輸血パックが入っててスイッチ一つで輸血できるカバンを作ってもらって背負ってます、致死量出たら普通に死ぬので…。そういう意味でも、私は一番長期戦に向かないんですよね…。」

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かすみ 幽子ゆうこ
魔法名[ゴーストスイッチ]
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「みんなやっほー!次はボクの魔法だね!ボクの魔法は~…ほいっ!この通り、霊体と実体を自由に切り替える魔法だよ!基本全身だけど、最近は一部だけやったりできないかなーって練習中!!」
「実質無敵じゃんって思う人もいるかもだけど、これ調整めっちゃ難しいんだよねー。霊体化中は物理的に触れないから、腰に携帯してても銃は撃てないし、そのおかげで攻撃し返す時は絶対実体化しないといけないわけ。地面とかすり抜けて下に降りれたりするけど、やっぱ部分発動ができれば便利だと思うんですだよね。他の欠点?あー、半透明になるから何回も発動してたら能力がバレることかな?て、そりゃみんな同じことかー。」
「ちなみに初めて使った頃はホントーに調整が大変でさー…使っただけで服とかもぜーんぶ落っこちちゃって、すぐ裸になっちゃってて…あ!男子今やらしいこと考えたろ~!」
「え?考えてない?誰も?それはそれで失礼じゃない?」

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影森かげもり 紫音しおん
魔法名[シャドウメイカー]
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「影森紫音と申します…あ、自己紹介は不要でしたね、すいません。」
「私の魔法は[シャドウメイカー]。影を実体化させ、そこから武器を生成したり、生物の形を作り出して使役する…といった使い方ができます。」
「私の普段使用している刀の『冥月めいげつ』も自分の影から生成します。自分以外の影でも触れていれば使えますが、でしか行えません。よって、真っ暗闇では何もできませんし、月の光があまり届かない暗い場所では使えないんです。周りの闇は闇であって、影ではないので。」
「凛泉さん、別に私は右目に闇を宿したりしてません、この前髪は偶然です。こうしてると楽なだけで…あ、すいません。脱線してしまいました…。」
「一応、北海道のような雪に覆われた場所でも関係なく雪の上から使役した影生物を作り出すことはできますので、足を引っ張ることはないと思います。私からは以上です。」

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有栖川ありすがわ 杏奈あんな
魔法名[自己圧縮ミクロ
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「ワタシの魔法は先天性の魔法で、自分を圧縮して小さくなる魔法なの。圧縮すればするほどパワーも圧縮されて力が強くなる。
「誰かに伝えるためなら声だけは元の声量にしたり、意外と自由度は低くないわ。細かいところを言うと圧縮中は骨密度なども『小さくなっている』のではなく『圧縮されている』だから、体はかなり頑丈よ。」
「ワタシの説明はコレで終わりだけど…空、別に好きな物とかは今聞かなくても…。」

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喜多見きたみ らん
魔法名[環境適応]
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「は~い、次はワタシの番ねぇ。」
「私の魔法は[環境適応]。私を含めて触れた人や物をその場の環境にさせることができるの。」
「水中で適応すれば、数中に含まれる酸素だけで呼吸できるようになるし、水の抵抗を無視して動けたり、こ~んな寒い北海道でも適応を使えば、寒さを感じず適温と感じながら活動ができるわ!」
「適応した人が他の人に触れることで伝播させることも可能だけど物、無機物と無機物は伝播しない。人と無機物も同様にね。」
「研究員さんたちは「この魔法は正確には環境に適応した状態の保存だから、解除後はに適応するように戻さないといけないって言われたわ。」
「実際、水中に適応した後水の中から出ると地上では酸素過多で体に毒だったり、極端に寒い環境に適応させたままだと太陽の熱だけで皮膚が焼け焦げるほど暑さに弱くなったり…とにかく、適度な調整が大事なのよね。」
「これらを踏まえて、この戦場では私も力一杯みんなをサポートできると思うから、よろしくね~。」

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 蘭まで説明が進んだところで、純生が両手をうち合わせて鳴らした。
「は~い、ちょっとトイレ休憩挟みまっしょね~!」
 その言葉を聞き、凛泉は椅子から立ち上がってわざわざ机の上に座り込み背筋を伸ばし始めた。
「あ゛~座りすぎて疲れたぁ、マジだりぃ。」
「机の上に座るな。」
 凛泉は注意してきた碧射に向けてべーと舌を出した後、暖房暑いから整ってくる~と部屋を出た。
「人多いから長めにとるけど、20分くらい経ったら戻ってきてねぇ~ん。」
 そんな凛泉に対して純生のかけた言葉は、なんとも気の抜ける声だった。
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