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Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて
第十一章:オペレーション・ダイダロス/06
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『こちらはキャスター1‐1、随伴のキャスター1‐2以下十五隻、これより作戦エリアに突入する。海兵隊のゴリラ共を動物園へお連れしている最中だ、しっかりエスコートを頼む』
『キャスター隊、こちらはコスモアイ。了解しました。イーグレット隊、及びファルコンクロウ隊がこれより貴隊に随伴し援護に当たります』
『コスモアイ、了解した。さてと、俺たちの生命は預けたぜ。何しろこちとら殆ど丸腰同然だ、飛びかかられたら抵抗は出来ねえ』
「イーグレット1よりキャスター1‐1、安心なさい。アタシたちが付いてるからには、アンタたちを無事に敵の懐まで送り届けてあげるから」
『イーグレット2。そうだぜ、揚陸艇の旦那がたよ。おたくらにゃ俺たちが付いてんだ。何も心配しなさんな』
『へえ、言うじゃねえか。だったらその言葉、嘘じゃないことを祈ってるぜ』
作戦エリアに侵入してきた十五隻の強襲揚陸艇、キャスター隊とコールサインを名乗った彼らの周囲にイーグレット隊の≪グレイ・ゴースト≫が二機、そしてファルコンクロウ隊の≪ミーティア≫十二機がすぐ傍を並走する形で合流する。この『オペレーション・ダイダロス』の要たる彼らを直接援護するのは、この十四機。後の連中はこの宙域で航空優勢維持の為にお留守番だ。
つまり、作戦の主役の一部を与ったことになる。花形的なポジションだ。敵の懐に直接飛び込んでいく、危険で過酷な役割であることには間違いないが……だからこそ、≪グレイ・ゴースト≫の操縦桿を握るアリサも宗悟も、胸の内で沸々と闘志を燃え滾らせていた。
「…………これが強襲揚陸艇か、思っていたよりも小さいな」
一定の間合いを置いて陣形を組んで飛ぶ強襲揚陸艇に対し、彼らを守るように周囲へと展開する十四機の空間戦闘機。その中に当然混ざっているアリサ機の後席から彼ら揚陸艇を眺める翔一は、ボソリと意外そうな声で独り言を呟いていた。
というのも、彼が想像していたよりも揚陸艇がずっと小さい物だったからだ。
てっきり、C‐130輸送機のように大きな奴を思い浮かべていたのだが。しかし今まさに目の前にあるものは、何というか……大きめの箱が宇宙空間を飛んでいるといった感じの、想像よりずっと小さな物だった。
そう、箱だ。箱にプラズマジェットエンジンと着陸用の脚、後は前方に操縦用のコクピットが付いている感じの、簡素なシルエット。それが十五隻、隊列を組んで宇宙空間を飛んでいる。
本当に拍子抜けする感じの小ぢんまりとした揚陸艇だったが……しかし、キャリアー・タイプに直接乗り込むという今回の任務用途を考えれば、寧ろこれぐらい小さい方が却って都合が良いのかも知れない。幾ら完全武装でパワードスーツに身を包んでいるといえ、中に詰め込まれているのは所詮、人間の兵士だ。兵員だけの輸送と強襲を目的とするなら、寧ろあれぐらいの大きさの方が使い勝手が良いのだろう。
表世界の兵器で喩えるのなら、兵員輸送車だ。合衆国のM113のように、装甲で中の兵士たちを守りつつ、目的の場所まで送り届ける役目。それが空を飛んでいるようなものと思えば、あらゆる意味で納得が出来る。
他に喩えれば、上陸用舟艇か。洋上の揚陸艦から発進し、海岸に着岸して兵士を下ろすアレ。映画『プライベート・ライアン』の冒頭を思い浮かべれば想像しやすいだろう。目的としてはアレと兵員輸送車を足して二で割った感じ、それを宇宙空間でも飛べるようにしただけといった感じか。
何にせよ、翔一が想像していたよりもずっと小さな舟……と表現して良いのだろうか。とにかくそんな強襲揚陸艇が十五隻、隊列を組んで飛んでいる。その周りを翔一たち護衛の空間戦闘機が囲む形で、この広い宇宙空間を飛んでいた。
『さて、そろそろ仕掛けてくるか……?』
と、そんな陣形を組んで飛ぶこと少し、ミレーヌが独りそう呟いていたのとほぼ同じタイミングだった。レーアからの通信で、戦況がまた変化したことが伝えられたのは。
『――――コスモアイよりイーグレット隊、ファルコンクロウ隊、及びキャスター隊へと報告。敵キャリアー・タイプ、前方のガンマ標的より迎撃機の発進を確認しました。イーグレット、クロウ両隊はこれを迎撃、キャスター隊を援護してください』
『クロウ1、了解。……やるぞ、彼らに後れを取るな』
もう軽く目視できる距離にまで迫った、煎餅のような形をした大きな敵の空母型、キャリアー・タイプ。その……上下で何段かに分かれた飛行甲板と思しきところから、次々とモスキート・タイプが発進し始めている。
加えて、キャリアー自らからの対空砲火も始まっていた。こちらとの近接戦闘を想定し、温存しておいた残りのモスキートを迎撃に当たらせた……といったところか。
それに対し、ファルコンクロウ隊は即座にキャスター隊の傍を離れ散開。護衛の為に一部の機を残し、残りは先攻して応戦に向かって行く。
それに倣うかのように、アリサたちイーグレット隊の二機も加速。迎撃に上がって来た敵モスキート・タイプの群れへと、そして巨大なキャリアー・タイプの懐へと果敢に飛び込んでいった。
『キャスター隊、こちらはコスモアイ。了解しました。イーグレット隊、及びファルコンクロウ隊がこれより貴隊に随伴し援護に当たります』
『コスモアイ、了解した。さてと、俺たちの生命は預けたぜ。何しろこちとら殆ど丸腰同然だ、飛びかかられたら抵抗は出来ねえ』
「イーグレット1よりキャスター1‐1、安心なさい。アタシたちが付いてるからには、アンタたちを無事に敵の懐まで送り届けてあげるから」
『イーグレット2。そうだぜ、揚陸艇の旦那がたよ。おたくらにゃ俺たちが付いてんだ。何も心配しなさんな』
『へえ、言うじゃねえか。だったらその言葉、嘘じゃないことを祈ってるぜ』
作戦エリアに侵入してきた十五隻の強襲揚陸艇、キャスター隊とコールサインを名乗った彼らの周囲にイーグレット隊の≪グレイ・ゴースト≫が二機、そしてファルコンクロウ隊の≪ミーティア≫十二機がすぐ傍を並走する形で合流する。この『オペレーション・ダイダロス』の要たる彼らを直接援護するのは、この十四機。後の連中はこの宙域で航空優勢維持の為にお留守番だ。
つまり、作戦の主役の一部を与ったことになる。花形的なポジションだ。敵の懐に直接飛び込んでいく、危険で過酷な役割であることには間違いないが……だからこそ、≪グレイ・ゴースト≫の操縦桿を握るアリサも宗悟も、胸の内で沸々と闘志を燃え滾らせていた。
「…………これが強襲揚陸艇か、思っていたよりも小さいな」
一定の間合いを置いて陣形を組んで飛ぶ強襲揚陸艇に対し、彼らを守るように周囲へと展開する十四機の空間戦闘機。その中に当然混ざっているアリサ機の後席から彼ら揚陸艇を眺める翔一は、ボソリと意外そうな声で独り言を呟いていた。
というのも、彼が想像していたよりも揚陸艇がずっと小さい物だったからだ。
てっきり、C‐130輸送機のように大きな奴を思い浮かべていたのだが。しかし今まさに目の前にあるものは、何というか……大きめの箱が宇宙空間を飛んでいるといった感じの、想像よりずっと小さな物だった。
そう、箱だ。箱にプラズマジェットエンジンと着陸用の脚、後は前方に操縦用のコクピットが付いている感じの、簡素なシルエット。それが十五隻、隊列を組んで宇宙空間を飛んでいる。
本当に拍子抜けする感じの小ぢんまりとした揚陸艇だったが……しかし、キャリアー・タイプに直接乗り込むという今回の任務用途を考えれば、寧ろこれぐらい小さい方が却って都合が良いのかも知れない。幾ら完全武装でパワードスーツに身を包んでいるといえ、中に詰め込まれているのは所詮、人間の兵士だ。兵員だけの輸送と強襲を目的とするなら、寧ろあれぐらいの大きさの方が使い勝手が良いのだろう。
表世界の兵器で喩えるのなら、兵員輸送車だ。合衆国のM113のように、装甲で中の兵士たちを守りつつ、目的の場所まで送り届ける役目。それが空を飛んでいるようなものと思えば、あらゆる意味で納得が出来る。
他に喩えれば、上陸用舟艇か。洋上の揚陸艦から発進し、海岸に着岸して兵士を下ろすアレ。映画『プライベート・ライアン』の冒頭を思い浮かべれば想像しやすいだろう。目的としてはアレと兵員輸送車を足して二で割った感じ、それを宇宙空間でも飛べるようにしただけといった感じか。
何にせよ、翔一が想像していたよりもずっと小さな舟……と表現して良いのだろうか。とにかくそんな強襲揚陸艇が十五隻、隊列を組んで飛んでいる。その周りを翔一たち護衛の空間戦闘機が囲む形で、この広い宇宙空間を飛んでいた。
『さて、そろそろ仕掛けてくるか……?』
と、そんな陣形を組んで飛ぶこと少し、ミレーヌが独りそう呟いていたのとほぼ同じタイミングだった。レーアからの通信で、戦況がまた変化したことが伝えられたのは。
『――――コスモアイよりイーグレット隊、ファルコンクロウ隊、及びキャスター隊へと報告。敵キャリアー・タイプ、前方のガンマ標的より迎撃機の発進を確認しました。イーグレット、クロウ両隊はこれを迎撃、キャスター隊を援護してください』
『クロウ1、了解。……やるぞ、彼らに後れを取るな』
もう軽く目視できる距離にまで迫った、煎餅のような形をした大きな敵の空母型、キャリアー・タイプ。その……上下で何段かに分かれた飛行甲板と思しきところから、次々とモスキート・タイプが発進し始めている。
加えて、キャリアー自らからの対空砲火も始まっていた。こちらとの近接戦闘を想定し、温存しておいた残りのモスキートを迎撃に当たらせた……といったところか。
それに対し、ファルコンクロウ隊は即座にキャスター隊の傍を離れ散開。護衛の為に一部の機を残し、残りは先攻して応戦に向かって行く。
それに倣うかのように、アリサたちイーグレット隊の二機も加速。迎撃に上がって来た敵モスキート・タイプの群れへと、そして巨大なキャリアー・タイプの懐へと果敢に飛び込んでいった。
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