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Sortie-02:騎士たちは西欧より来たりて
第七章:背中合わせのエレメント/04
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そうして話が纏まった後、暫くぐだぐだしてから解散し。翔一たちと別れた後、宗悟はミレーヌとともに基地の廊下を、二人横並びになって歩いていた。
「……なあミレーヌ、あの二人のことどう思うよ」
二人で基地の廊下を、ミレーヌの小さな歩幅に合わせる形で歩きながら。宗悟がふと何気なく、隣の彼女にそんな言葉を投げ掛ける。
「ん?」
「だから、翔一とアリサちゃんの二人だって」
「ああ……うん、お似合いの二人だね」
「そういうことじゃあねえんだが……ま、その通りかもな」
「宗悟はどう思っているんだい? 彼らのこと」
ミレーヌに問い返され、宗悟はんーと視線を上にやりながら唸り、少しだけ思い悩んだ後。フッと小さくはにかんでこう言った。
「イイ奴だよ、二人とも」
「へえ……? 宗悟が誰かのことをそこまで言うなんて、珍しいじゃあないか」
「そうか?」
「そうだよ」
「うーん、何て言うのかしらん……。まあ、確かにパイロットとしての腕前はスゲえよ。俺たちがあそこまで苦戦したぐらいだからな。流石にアリサちゃんはエースって感じだし、翔一の野郎も……えーと、誰だっけあのオペレータの可愛い嬢ちゃん」
「レーア、レーア・エーデルシュタイン少尉のことかい?」
「そうそう、レーアちゃんが言ってた通り、経験不足な感じはどーしてもあるけどさ。んでも素養はスゲえよ。アレでまだ何ヶ月って感じなんだろ? ヤベえよな、お世辞抜きでミレーヌ並みの逸材だぜアイツは。そりゃあアリサちゃんのリアシートに収まれるワケだわって感じだ」
「……それで? パイロットとしてのあれこれは抜きにして、宗悟は彼らのことをどう思っているんだい?」
「そうさなあ……人間的にも、アイツらはスゲえイイ奴らだよ。少なくとも、俺やミレーヌにとってはな」
にしし、と笑う彼の横顔をチラリと横目で一瞬見上げて、それから自分もフッと透かした笑みを浮かべると。ミレーヌは隣の彼に「そうだね……」と細く、透き通る声音で同意の言葉を返していた。
「ところで、ミレーヌの方はどうなんだ?」
「どうって……何がだい?」
「学院で、だよ。ミレーヌだけ三年だっただろ? 色々とどうなのかなあって思ってさ」
「……うん、悪くないよ。周りの皆も優しいしね。宗悟と一緒じゃなかったのは寂しいところだけれど、でも悪くない」
柔らかな笑みを浮かべてそう言った後で、ミレーヌは急にその表情を皮肉げというか、自虐的な感じに変えると……哀しげな笑みを微かに浮かべた彼女は、続けてこんなことを隣を歩く彼に対して口走っていた。
「…………おかしいよね、僕らがこんな……こんな、幸せな日々を送っているだなんて」
そんな彼女に対し、宗悟は「良いんじゃねーの?」と、あくまでいつもの調子で。何処かお気楽な風にも見える表情と語気で言う。
「俺たち二人はさ、今まで散々苦しんで、辛いことばっかり経験してきたんだ。だから、コイツはその分のツケ……って言い方はちょっと変かもな。ともかく、俺もミレーヌもこれで良いんだよ。別にバチなんざ当たりゃしない。今まで俺たちが知らなかった分の幸せって奴を、俺たち二人で味わっていけばいい…………違うか?」
彼の呟いた、そんな言葉に。ミレーヌは小さくそっと微笑むと、彼の方を横目で小さく見上げながら、彼に対してこんなことを呟いていた。
「やっぱり、君は優しいね」
「そうでもねえよ」
照れ隠しのようにうそぶく宗悟に、ミレーヌはふふっとおかしそうに薄い笑みを浮かべ。そうして、彼女は彼にこんな言葉を投げ掛ける。
「やっぱり、僕には君が必要なんだ。他の誰でもない、君じゃないと駄目なんだ、僕は……………」
「…………そっか」
そんなミレーヌに、宗悟はただ小さく頷き返すだけで、それ以上は何も言わず。ただ黙ったまま、彼女と横並びになって歩いて行く。ミレーヌとともに、彼もまた――――どちらが欠けても成り立たない、二人でひとつの双翼として。
(第七章『背中合わせのエレメント』了)
「……なあミレーヌ、あの二人のことどう思うよ」
二人で基地の廊下を、ミレーヌの小さな歩幅に合わせる形で歩きながら。宗悟がふと何気なく、隣の彼女にそんな言葉を投げ掛ける。
「ん?」
「だから、翔一とアリサちゃんの二人だって」
「ああ……うん、お似合いの二人だね」
「そういうことじゃあねえんだが……ま、その通りかもな」
「宗悟はどう思っているんだい? 彼らのこと」
ミレーヌに問い返され、宗悟はんーと視線を上にやりながら唸り、少しだけ思い悩んだ後。フッと小さくはにかんでこう言った。
「イイ奴だよ、二人とも」
「へえ……? 宗悟が誰かのことをそこまで言うなんて、珍しいじゃあないか」
「そうか?」
「そうだよ」
「うーん、何て言うのかしらん……。まあ、確かにパイロットとしての腕前はスゲえよ。俺たちがあそこまで苦戦したぐらいだからな。流石にアリサちゃんはエースって感じだし、翔一の野郎も……えーと、誰だっけあのオペレータの可愛い嬢ちゃん」
「レーア、レーア・エーデルシュタイン少尉のことかい?」
「そうそう、レーアちゃんが言ってた通り、経験不足な感じはどーしてもあるけどさ。んでも素養はスゲえよ。アレでまだ何ヶ月って感じなんだろ? ヤベえよな、お世辞抜きでミレーヌ並みの逸材だぜアイツは。そりゃあアリサちゃんのリアシートに収まれるワケだわって感じだ」
「……それで? パイロットとしてのあれこれは抜きにして、宗悟は彼らのことをどう思っているんだい?」
「そうさなあ……人間的にも、アイツらはスゲえイイ奴らだよ。少なくとも、俺やミレーヌにとってはな」
にしし、と笑う彼の横顔をチラリと横目で一瞬見上げて、それから自分もフッと透かした笑みを浮かべると。ミレーヌは隣の彼に「そうだね……」と細く、透き通る声音で同意の言葉を返していた。
「ところで、ミレーヌの方はどうなんだ?」
「どうって……何がだい?」
「学院で、だよ。ミレーヌだけ三年だっただろ? 色々とどうなのかなあって思ってさ」
「……うん、悪くないよ。周りの皆も優しいしね。宗悟と一緒じゃなかったのは寂しいところだけれど、でも悪くない」
柔らかな笑みを浮かべてそう言った後で、ミレーヌは急にその表情を皮肉げというか、自虐的な感じに変えると……哀しげな笑みを微かに浮かべた彼女は、続けてこんなことを隣を歩く彼に対して口走っていた。
「…………おかしいよね、僕らがこんな……こんな、幸せな日々を送っているだなんて」
そんな彼女に対し、宗悟は「良いんじゃねーの?」と、あくまでいつもの調子で。何処かお気楽な風にも見える表情と語気で言う。
「俺たち二人はさ、今まで散々苦しんで、辛いことばっかり経験してきたんだ。だから、コイツはその分のツケ……って言い方はちょっと変かもな。ともかく、俺もミレーヌもこれで良いんだよ。別にバチなんざ当たりゃしない。今まで俺たちが知らなかった分の幸せって奴を、俺たち二人で味わっていけばいい…………違うか?」
彼の呟いた、そんな言葉に。ミレーヌは小さくそっと微笑むと、彼の方を横目で小さく見上げながら、彼に対してこんなことを呟いていた。
「やっぱり、君は優しいね」
「そうでもねえよ」
照れ隠しのようにうそぶく宗悟に、ミレーヌはふふっとおかしそうに薄い笑みを浮かべ。そうして、彼女は彼にこんな言葉を投げ掛ける。
「やっぱり、僕には君が必要なんだ。他の誰でもない、君じゃないと駄目なんだ、僕は……………」
「…………そっか」
そんなミレーヌに、宗悟はただ小さく頷き返すだけで、それ以上は何も言わず。ただ黙ったまま、彼女と横並びになって歩いて行く。ミレーヌとともに、彼もまた――――どちらが欠けても成り立たない、二人でひとつの双翼として。
(第七章『背中合わせのエレメント』了)
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